育休中の年末調整|会社がやってくれる?給与0円の年・育児休業給付金は収入に入れない・配偶者控除を夫側で・保険料控除・戻る税金・確定申告が要る場合
育休中も会社に在籍している会社員の方(配偶者が育休中の方を含む)が、令和8年分の年末調整をどうするかを、国税庁と法令の原文で整理した解説です。育児休業給付金は課税されず、年末調整の収入にも、配偶者控除の所得判定にも入れません。年末調整は会社が「その年最後に給与の支払をする時」に行うもので、その年に給与が支払われたかどうかで、育休中の扱いが分かれます。
場面ごとの表(年末調整をしてもらえるか)
国税庁は、年末調整を「毎月の給与等から源泉徴収した所得税の合計額と、その人が1年間に納めるべき所得税の額との差額を精算するもの」と説明しています(No.2665)。条文は、会社がその年最後に給与等の支払をする場合に行うと定めています(所得税法第190条)。育休中の扱いは、その年に給与が支払われたかどうかで分けると整理できます。
| 場面 | 年末調整 | 注意点 |
|---|---|---|
| 育休に入った年も、12月に給与や賞与が支払われる | 会社が行う。その年に支払われた給与の合計で1年分の税額を計算し、毎月の源泉徴収との差を精算する | 育休前の給与と、育休中に会社から出た給与が対象。育児休業給付金は入れない |
| 年の前半は給与があり、後半は育休で無給。12月の給与はない(在籍中) | 条文は「その年最後に給与等の支払をする場合」。国税庁の資料に、この場合の時期を個別に書いたものは見当たらない(このページの確認範囲) | 会社の人事・総務に、年末調整をいつ行うか確認する。行われなかった年は、確定申告(還付申告)で精算できる |
| その年は給与が1円も支払われない(在籍中) | 年末調整は給与から源泉徴収した所得税との差額を精算するもの。給与も源泉徴収もないので、精算する差額が生じない | 源泉徴収された所得税がなければ、確定申告をしても還付はない(No.2030)。この年の収入は育児休業給付金のみで、非課税 |
| 年の途中で復職し、12月は通常どおり勤務 | 会社が行う。育休で無給だった期間は給与の合計に入らない | 年の途中から収入が減るので、毎月の源泉徴収のほうが年税額より多く、差額が戻る場合がある |
| 育休中、または育休明けに退職する | 年の中途で退職した人は、原則として年末調整の対象外(No.2665) | 例外は、12月に支給される給与を受けた後の退職など。対象外の人は自分で確定申告をする。退職後の確定申告に手順がある |
| 配偶者が育休中で、自分が会社員 | 自分の年末調整で、配偶者控除または配偶者特別控除を受けられる場合がある | 配偶者の合計所得で決まる。次の2つの節に詳しく書いた |
出典:国税庁 タックスアンサー No.2665 年末調整の対象となる人・No.2030 還付申告、所得税法第190条(e-Gov法令検索)。2026年10月3日確認。年の途中から無給になった在籍者の年末調整の時期は、国税庁の資料(No.2665、令和8年分「年末調整のしかた」、年末調整Q&A)に個別の記載がなく、このページでは断定していません。
年末調整の流れと書類の書き方は年末調整の書き方と控除を最大活用する方法にまとめています。
育児休業給付金は収入に入れない
雇用保険法第12条は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として租税を課すことができないと定めています。育児休業給付金は、この第12条の対象です(国税庁 No.1191 Q6)。出生時育児休業給付金と出生後休業支援給付金も、育児休業等給付として第12条が準用されます(雇用保険法第61条の6第2項・第3項・第5項)。年末調整の書類に書く「給与」や、配偶者控除の判定に使う「合計所得金額」に入るかどうかは、次のとおりです。
| 受け取るお金 | 給与の総額・合計所得金額に入るか | 根拠 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 入れない | 雇用保険法第12条、国税庁 No.1191 Q6 |
| 出生時育児休業給付金・出生後休業支援給付金 | 入れない | 雇用保険法第61条の6第5項(第12条を準用) |
| 出産手当金・出産育児一時金 | 入れない | 健康保険法第62条、国税庁 No.1191 Q5 |
| 育休前までの給与・賞与 | 入る(給与所得) | 所得税法第190条 |
| 育休中に会社から支払われた給与・手当 | 入る場合が多い。非課税の規定がない手当は、源泉徴収と年末調整の給与総額に含める | 国税庁 年末調整Q&A 問14(休業手当の例) |
出典:雇用保険法第12条・第61条の6(e-Gov法令検索)、国税庁 No.1191 配偶者控除 Q5・Q6、令和8年分 年末調整Q&A 問14。2026年10月3日確認。会社独自の育休中の手当が課税されるかは、手当の名目と規程によるので、給与明細か人事に確認してください。
給付金の額や条件は育児休業給付金の計算方法・受給条件、産後パパ育休の給付金は産後パパ育休の給付金と給料にまとめています。
配偶者控除を夫側で受けられるか
妻が育休中で、その年の給与が少ない場合は、夫の年末調整で配偶者控除(または配偶者特別控除)を受けられる場合があります。判定に使う妻の収入に、育児休業給付金は入りません。令和8年分の基準は次のとおりです(令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用)。
| 項目 | 令和8年分の基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 配偶者控除の対象になる配偶者 | 合計所得金額62万円以下(給与だけなら給与収入136万円以下) | 所得税法第2条第1項第33号、国税庁 No.1191 |
| 控除を受ける本人(夫) | 合計所得金額1,000万円以下。控除額は900万円以下38万円、950万円以下26万円、1,000万円以下13万円 | 所得税法第83条 |
| 配偶者特別控除の対象になる配偶者 | 合計所得金額62万円超133万円以下(給与だけなら給与収入136万円超207万円以下)。本人は1,000万円以下 | 所得税法第83条の2、国税庁 No.1195 |
| 判定の時期 | その年12月31日の現況 | 所得税法第85条第3項 |
出典:所得税法第2条・第83条・第83条の2・第85条(令和8年12月1日施行版、e-Gov法令検索)、国税庁 No.1191・No.1195、令和8年分「年末調整のしかた」。2026年10月3日確認。令和7年分は58万円以下(給与だけなら123万円以下)です。
計算例を1つ置きます。当サイトが次の前提で試算した1例です。
- 前提:妻は1〜5月に月給25万円(5か月で給与収入125万円)、6月から育休に入り、その年に会社から給与は出ない。育児休業給付金を受け取る
- 給与所得:給与収入125万円から、令和8年分の給与所得控除の最低保障額74万円(収入220万円以下)を引いて51万円。育児休業給付金は入れない
- 判定:合計所得51万円は62万円以下。夫の合計所得が900万円以下なら、配偶者控除38万円
- 別の例:妻の給与収入が160万円なら、給与所得は86万円で62万円を超えるが、配偶者特別控除の対象(62万円超133万円以下)。夫の合計所得が900万円以下で、妻の合計所得が95万円以下なら38万円
夫の所得が高い場合や、妻の所得が95万円を超える場合は控除額が下がります。収入に応じた額は配偶者控除計算機に入れると出ます。夫が育休中で妻が会社員の場合も、控除を受ける側(妻)の合計所得金額が1,000万円以下で、夫の合計所得が上の基準に収まるかで、同じように決まります。書類の書き方は基礎控除申告書・配偶者控除等申告書の書き方です。
育休中に出す書類と、保険料の控除
年末調整の対象になるのは、扶養控除等(異動)申告書を年末調整を行う日までに提出している人です(国税庁 No.2665)。育休に入る前に、年初の申告書を出してあるかを確認します。育休中に会社が書類をどう集めるか(郵送・電子など)は会社によります。
| 書類・控除 | 育休中の注意点 | 詳しいページ |
|---|---|---|
| 令和9年分の扶養控除等申告書 | 期限は毎年最初に給与の支払を受ける日の前日まで(所得税法第194条第1項)。給与が出ない間の出し方は会社に確認する | 扶養控除等申告書の書き方 |
| 保険料控除申告書(生命保険・地震保険など) | 年末調整が行われる年は、育休中に払った保険料も通常どおり対象。育休中に免除された健康保険・厚生年金の保険料は、払っていないので社会保険料控除の対象にならない(その年中に支払った額が対象、所得税法第190条) | 保険料控除申告書の書き方 保険料の免除 |
| 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除) | 年末調整で受ける書類と、1年目に必要な確定申告は、既存のページに分けて書いている | 住宅借入金等特別控除申告書の書き方 住宅ローン控除シミュレーター |
| 住民税 | 給与から天引きされない期間は、納付書で払う方法がある | 住民税の納付書が届かない理由 |
出典:国税庁 No.2665、所得税法第190条・第194条(e-Gov法令検索)。2026年10月3日確認。令和8年分の変更点は令和8年分の年末調整の変更点にあります。
税金が戻るか・確定申告が要る場合
年末調整で戻るのは、毎月の給与から源泉徴収された所得税の合計が、1年分の給与で計算した税額より多かった分です(所得税法第190条)。給与が出ていない月や、給付金だけの期間には源泉徴収された所得税がないので、その分は戻りません。
| 場面 | 確定申告 | 根拠・注意点 |
|---|---|---|
| 年末調整がされず、源泉徴収された所得税が納め過ぎ | 義務ではないが、確定申告(還付申告)で戻る | 期限は翌年1月1日から5年間(国税庁 No.2030) |
| 源泉徴収された所得税がない(源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0) | 申告しても還付はない | 国税庁 No.2030 |
| 医療費控除(出産費用など)を受けたい | 確定申告で受ける。年末調整では受けられない | 出産育児一時金などの扱いは出産の医療費控除 |
| 給与が1か所で、給与・退職以外の所得が年20万円を超える | 確定申告が必要(還付になる人を除く) | 国税庁 No.1900 |
出典:国税庁 No.2030 還付申告・No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人、令和8年分「年末調整のしかた」。2026年10月3日確認。年末調整の対象とならない人は、自分で確定申告をします(同冊子の注意事項)。副業の所得がある人は副業の確定申告も確認してください。
よくある質問
Q. 育休中でも、会社は年末調整をしてくれますか?
A. その年に会社から給与や賞与が支払われていれば、通常は会社が年末調整をします。年末調整は、毎月の給与から源泉徴収した所得税の合計と、1年分の給与で計算した税額との差を精算するものです(国税庁 No.2665)。条文は、扶養控除等申告書を出している人に対し、会社が「その年最後に給与等の支払をする場合」に行うと定めています(所得税法第190条)。育休に入って年の途中から給与が出なくなった人の扱いを個別に書いた国税庁の資料は、確かめた範囲では見つかりませんでした。勤務先の人事・総務に、いつ年末調整をするか確認してください。
Q. 育児休業給付金は、年末調整の書類に収入として書きますか?
A. 書きません。育児休業給付金は雇用保険法第12条により課税されず(国税庁 No.1191 Q6)、年末調整の対象になる給与の総額にも、配偶者控除の判定に使う合計所得金額にも含まれません。出生時育児休業給付金と出生後休業支援給付金も、育児休業等給付として第12条が準用されます(雇用保険法第61条の6第5項)。
Q. 妻が育休中です。夫の年末調整で配偶者控除は受けられますか?
A. 妻のその年の合計所得金額が62万円以下(給与だけなら給与収入136万円以下)で、夫の合計所得金額が1,000万円以下なら、配偶者控除を受けられます(令和8年分)。育児休業給付金は妻の所得に含めません。妻の合計所得が62万円を超えても133万円以下(給与だけなら給与収入207万円以下)なら、配偶者特別控除の対象になる場合があります。額は夫の所得でも変わるので、配偶者控除の計算機で確かめられます。
Q. 出産手当金や出産育児一時金も、配偶者の所得に入れますか?
A. 入れません。国税庁は、出産育児一時金と出産手当金は健康保険法第62条により課税されないので、控除対象配偶者に当たるかどうかを判定する合計所得金額には含まれないと説明しています(国税庁 No.1191 Q5)。
Q. 年末調整をしてもらえなかった年の税金は、戻りますか?
A. 毎月の給与から源泉徴収された所得税が納め過ぎなら、確定申告(還付申告)で戻ります。還付申告はその年の翌年1月1日から5年間出せます。ただし、源泉徴収された所得税がない人(源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0の人)は、申告しても還付される税額はありません(国税庁 No.2030)。
Q. 令和9年分の扶養控除等申告書は、育休中でも出しますか?
A. 期限は、毎年最初に給与の支払を受ける日の前日までです(所得税法第194条第1項)。令和9年も育休が続いて給与が出ない間は、最初に給与が出る日がまだ来ていないことになります。用紙をいつ、どの方法で出すかは会社によるので、会社の案内に従ってください。
Q. 育休中の住民税は、どうなりますか?
A. 給与から天引きされない期間の払い方は、住民税の納付書が届かない理由の解説にまとめています。
参考・出典
- 国税庁 No.2665 年末調整の対象となる人
- 国税庁 No.1191 配偶者控除(Q&A)・No.1195 配偶者特別控除
- 国税庁 No.2030 還付申告・No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人
- 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた・年末調整Q&A
- e-Gov法令検索 所得税法(第2条・第83条・第83条の2・第85条・第190条・第194条)・雇用保険法(第12条・第61条の6)
※国税庁の案内と法令に書かれている範囲の整理です。年末調整の実際の時期と書類は、勤務先によって異なります。個別の判断は、勤務先の担当者か税務署に確認してください。