年の途中で退職したら確定申告は必要?|再就職した年・しないとどうなる・還付はいくら戻るか・期限は5年・必要書類・国保や国民年金・住民税

年の途中で会社を辞めた方向けに、確定申告が必要かどうかを整理した解説です。結論から言うと、同じ年に再就職して前の会社の源泉徴収票を出せば、新しい会社が年末調整をします。再就職しないまま年末になると年末調整がなく、払い過ぎた所得税を取り戻すには、自分で還付申告をします。期限は翌年1月1日から5年間で、出さなくても罰則のある手続きではありませんが、5年を過ぎると戻る権利は消えます。再就職した方・転職先が決まっている方には、新しい収入での家計の相談先も途中に載せています。

退職した年の3つのパターン

年の途中で辞めたあと、その年にどうなるかで、手続きが分かれます。国税庁のタックスアンサー No.1910 と No.2674 に書かれている整理を、表にしました。

その年の状況年末調整確定申告
再就職して年末まで働き、前の会社の源泉徴収票を新しい会社に出した新しい会社が前の給与を含めて行う原則不要
再就職せず、年末まで無職受けられない払い過ぎがあれば、翌年に還付申告
再就職したが、前の会社の源泉徴収票を出せなかった行えない確定申告で精算

出典:国税庁 No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」・No.2674「中途就職者の年末調整」(令和8年4月1日現在法令等)、2026年10月3日確認。

年の途中で退職した人が年末調整を受けられるのは、国税庁 No.2665 が挙げる5つの場合に限られます(FAQ に書きました)。年末調整の仕組みそのものは年末調整を出さないとどうなるに、転職した年の前職の源泉徴収票の使い方は転職した年の年末調整にまとめています。

申告が必要な人・しなくてもよい人

給与の所得税は、毎月の給与から概算で引かれ、年末調整で精算されます。年の途中で辞めて年末調整がなかった方は、引かれすぎた所得税を戻してもらうために申告します。所得税法第122条は、この還付のための申告書を「提出することができる」と定めています。義務ではなく、戻してもらうための手続きという位置づけです。

義務になるのは、次のような場合です(国税庁 No.1900)。

  • 給与以外の所得がある:給与を1か所から受けている場合に、給与所得・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるとき(所得税法第121条)。退職後に副業や個人事業で収入があった方が当てはまりやすい場合です。
  • 給与の年間収入が2,000万円を超える。

確定申告が必要なケースの全体は確定申告が必要な会社員のケースに載せています。

退職金を受け取った場合は、退職所得の受給に関する申告書を出していれば、所得税の源泉徴収で課税が完結するのが原則です(所得税法第121条第2項)。申告書の扱いは退職所得の受給に関する申告書、年末調整との関係は退職金は年末調整に含まれるかに任せます。

しないとどうなるか

還付のための申告をしなければ、払い過ぎた所得税は戻ってきません。税務署が自動で気づいて返す仕組みではなく、申告書を出すことで還付される手続きです(所得税法第138条は、確定申告書の提出があったときに税務署長が還付すると定めています)。

期限は、国税庁 No.1910・No.2030 によると、その年の翌年1月1日から5年間です。2〜3月の確定申告期間とは関係なく、いつでも出せます。国税通則法第74条も、還付金等の請求権は、請求できる日から5年間行使しないと時効で消滅すると定めています。令和8年に退職した方なら、令和9年1月1日から出せます。

期限を過ぎてから出す手続きは、確定申告の期限を過ぎたらにまとめています。なお、源泉徴収票の「源泉徴収税額」が0円の方は、申告しても還付される所得税はありません(No.2030)。

還付はいくら戻るか(計算例)

戻る額は、すでに源泉徴収された所得税から、1年分の所得で計算した所得税を引いた額です。例として、次の前提で当サイトが試算しました。国税庁の計算例ではありません。

  • 令和8年1月〜6月に勤務し、6月末に退職。7月以降は年末まで無職
  • 月給30万円(賞与なし)。協会けんぽ東京支部・40歳未満の社会保険料等は月44,070円
  • 毎月の源泉徴収は、月額表の甲欄・扶養親族等0人で月6,320円
  • ほかの所得・ほかの控除は無し
項目金額内容
給与収入1,800,000円30万円×6か月
給与所得控除740,000円令和8年分(収入220万円以下)
給与所得1,060,000円収入−給与所得控除
社会保険料控除264,420円44,070円×6か月
基礎控除1,040,000円令和8年分(合計所得489万円以下)
課税所得0円差し引きがマイナス244,420円のため0円
1年分の所得税0円課税所得がないため
源泉徴収された所得税37,920円6,320円×6か月
還付される額の目安37,920円払い過ぎの全額

月額表・社会保険料の額は源泉徴収税額表(月額表)の見方の計算例と同じ。給与所得控除・基礎控除は令和8年分。国民年金保険料を7月〜12月の6か月分払ったとすると月17,920円で107,520円が社会保険料控除に加わりますが、課税所得が0円のままなので還付額は変わりません。

この例では所得が低いので、源泉徴収された額が全額戻る計算になりました。収入が多い年は、1年分の所得税が残るため、戻る額は「源泉徴収された額−1年分の所得税」になります。実際の額は、勤めた月数、賞与、扶養する家族、生命保険料控除などで変わります。この表は戻る額を約束するものではありません。自分の額は、源泉徴収票の金額で確定申告書等作成コーナーに入力すると出ます。

必要書類と出し方

  • 退職した会社の源泉徴収票:所得税法第226条第1項により、年の中途で退職した人には、退職の日以後1か月以内に交付されます。届かないときは、退職した会社に請求します。
  • 社会保険料の支払を証明する書類:国民年金保険料は控除証明書、国民健康保険料は納付額が分かるもの。令和8年分の申告を令和9年1月1日以後に出すときは、国民年金は一定の事項を記載した明細書の添付でも代えられます(国税庁 No.1130)。
  • 確定申告書(還付申告書):提出先は住所地を管轄する税務署です。国税庁の確定申告書等作成コーナーで、画面の案内に沿って入力して作れます。

スマホからの出し方と、還付までの目安はスマホで確定申告(e-Tax)のやり方に任せます。

国保・国民年金の保険料と失業給付

退職して無職の間は、国民健康保険と国民年金の保険料を自分で払うことがあります。これらは社会保険料控除の対象で、控除できる額は、その年に実際に支払った額、または給与から差し引かれた額の全額です(国税庁 No.1130)。前の会社で給与から引かれた健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料は、源泉徴収票の社会保険料等の金額に含まれています。

保険料の控除証明書がいつ届くかは国民年金保険料の年末調整の書き方、国民健康保険料の確かめ方は国民健康保険料の年末調整の書き方に書いています。

失業保険(基本手当)は、雇用保険法第12条により、これを標準として租税その他の公課を課することができないとされています。申告する所得に含める必要はありません。受給日数と退職タイミングは失業給付を最大限受け取るための退職タイミングで確かめられます。

住民税はどうなるか

住民税は前年の所得で決まります。退職したあとの納め方は、退職の時期で変わります。地方税法第321条の5第2項によると、給与から天引きされていた特別徴収の対象者が給与を受けなくなったときは、原則として、その後の月割額を天引きする義務は会社に生じません。ただし、6月1日から12月31日に退職して本人の申出があった場合と、翌年1月1日から4月30日に退職した場合は、5月31日までに支払われる給与や退職手当等で月割額の全額を超えるものがあれば、会社が残りをまとめて徴収します。

どの時期の退職でいくら残るかは、退職時期別の住民税 一括徴収の計算で確かめられます。

地方税法第317条の3は、前年分の所得税の確定申告書を提出した場合に、その提出日に市町村民税の申告書が提出されたものとみなすと定めています(政令で定める場合を除く)。個別の取扱いはお住まいの市区町村で異なることがあるので、納付書や通知書の案内をご覧ください。

よくある質問

Q. 年の途中で退職したら、確定申告をしないといけませんか?

A. 還付を受けるための申告は、義務ではありません。所得税法第122条は、還付を受けるため申告書を「提出することができる」と定めています。ただし、給与以外の所得が20万円を超えるなど、確定申告が義務になる場合があります(国税庁 No.1900)。また、同じ年に再就職して前の会社の源泉徴収票を出せず年末調整されなかったときは、確定申告で精算します(No.2674)。

Q. 同じ年に再就職したら、確定申告は要りませんか?

A. 前の会社の源泉徴収票を新しい会社に出していれば、新しい会社が前の給与を含めて年末調整をします(国税庁 No.1910・No.2674)。そのため、年の途中で転職して年末まで勤めた方は、原則として確定申告は要りません。源泉徴収票を出さなかった、または手元に無いときは、年末調整ができず、確定申告で精算することになります。

Q. 退職した会社が、退職時に年末調整をしてくれることはありますか?

A. 国税庁 No.2665 は、年の中途で行う年末調整の対象を5つに限っています。海外転勤などで非居住者となった人、死亡退職、著しい心身の障害での退職、12月に支給される給与を受けた後の退職、パートで年間の給与総額が136万円以下の退職(退職後その年に他の勤務先から給与を受ける見込みのある人は除く)です。これ以外の方は、年の途中で退職しても年末調整の対象になりません。

Q. 失業保険(基本手当)をもらうと、確定申告に影響しますか?

A. 雇用保険法第12条は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として、租税その他の公課を課することができないと定めています。基本手当は課税の対象になる所得ではないので、申告する所得に含めません。受給のタイミングは、失業給付の受給日数の記事にまとめています。

Q. 申告するのを忘れたまま年が変わりました。まだ戻りますか?

A. 還付申告は、確定申告の期間とは関係なく、翌年1月1日から5年間提出できます(国税庁 No.2030)。国税通則法第74条も、還付金等の請求権は、請求できる日から5年間行使しないと時効で消滅すると定めています。5年のうちであれば、申告で戻る可能性があります。

Q. 源泉徴収票の「源泉徴収税額」が0円でも、申告する意味はありますか?

A. 国税庁 No.2030 は、源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が0の方は、申告しても還付される所得税額はないとしています。還付の元になるのは、すでに引かれた所得税だからです。税額が0円でも、住民税の申告が別に必要になる場合があるので、お住まいの市区町村の案内をご確認ください。

参考・出典

※国税庁と法令の原文に書かれている範囲の整理です。計算例は前提を置いた試算で、還付を約束するものではありません。申告の要否や還付の額は、個別の事情で変わります。税の判断は、税務署または税理士にご確認ください。

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