企業型DCの受け取り方と税金|一時金は退職所得控除・年金は公的年金等控除

企業型DC(企業型確定拠出年金)は、一時金で受け取れば退職所得、年金で受け取れば公的年金等の雑所得として課税されます。受け取れるのは原則60歳からで、60歳時点の通算加入者等期間が10年に満たないと最大65歳まで遅れます。先にDCの一時金を受けてあとで退職金を受ける場合は、令和8年から重複期間の調整の対象が前年以前4年内から9年内に広がっています。掛金20年・1,000万円を一時金で受けると、課税退職所得金額は1,000,000円、源泉徴収される所得税等は51,050円です。

一時金・年金・併用で、課税の区分と控除はどう違うか

厚労省の確定拠出年金制度の概要は、給付時の税制を「年金として受給:公的年金等控除」「一時金として受給:退職所得控除」としています。国税庁のタックスアンサー(No.1420)は、確定拠出年金法に基づく老齢給付金として支給される一時金も退職所得とみなされるとしています。

受け取り方税の区分引ける控除
一時金退職所得退職所得控除。(収入金額−控除額)×1/2が課税の対象
年金公的年金等の雑所得公的年金等控除。年金の収入金額と年齢で額が決まる
併用一時金の分は退職所得、年金の分は雑所得それぞれ上の控除

※出典:厚労省 確定拠出年金制度の概要、国税庁 No.1420・No.1600。併用は、一時金の分と年金の分をそれぞれ上の区分に当てはめた整理です。

退職所得控除額は、勤続年数が20年以下なら40万円×年数(80万円に満たなければ80万円)、20年を超えれば800万円+70万円×(年数−20年)です(No.1420)。厚労省Q&A(№151-1)は、60歳以降の掛金納付期間も、この勤続年数に算入されるとしています。このページの例では、掛金を納めた期間をそのまま勤続年数とします。

年金で受け取る場合の公的年金等控除は、同じ年に受ける公的年金等の収入金額の合計で決まります(No.1600)。老齢厚生年金など、ほかの公的年金等を受けているときは、DCの年金と合算した収入で計算します。

どの受け方が選べるかは制度で違います。厚労省の概要では、iDeCoは「5年以上20年以下の有期年金」「一時金」「一時金と年金の組み合わせ」、企業型DCは「5年以上20年以下の有期、または終身年金(規約の規定により一時金の選択可能)」です。企業型DCは、一時金を選べるかどうかを会社の企業型年金規約で確認します。

受け取れるのはいつからか:60歳、加入期間が短いと最大65歳

厚労省の概要では、老齢給付金は原則60歳に到達した場合に受け取れます。60歳時点の通算加入者等期間が10年に満たないと、受け取れる年齢は段階的に先延ばしになります。

60歳時点の通算加入者等期間受け取れる年齢
10年以上60歳
8年以上10年未満61歳
6年以上8年未満62歳
4年以上6年未満63歳
2年以上4年未満64歳
1か月以上2年未満65歳

※出典:厚労省 確定拠出年金制度の概要。60歳以降に初めて確定拠出年金に加入する場合は、加入した日から5年を経過した日以降に受け取れます。

受け取る時期は、財務省の令和7年度税制改正の解説によると、老齢一時金の受給者が60歳から75歳までの間に受給日を任意に選べます。ただし企業型年金の加入者である間は請求できません(厚労省Q&A №149-2)。企業型とiDeCoに同時に加入していた場合は、それぞれの運営管理機関の記録を合算して請求できるかどうかを判定します(同Q&Aの定年退職者への説明事項)。

掛金20年・1,000万円なら、一時金と年金で課税対象はいくら違うか

掛金を20年納め、受け取る資産が1,000万円の例です。一時金は、20年なので退職所得控除額が40万円×20年=8,000,000円です。年金は、iDeCoシミュレーターと同じく資産を10年で等分して(運用はしない前提)、年1,000,000円ずつ受け取るとします。

項目一時金で受ける年金で受ける(10年)
使う控除退職所得控除 8,000,000円公的年金等控除(65歳未満は最低60万円、65歳以上は最低110万円)
課税の対象課税退職所得金額 1,000,000円年金の雑所得 年400,000円(65歳未満)/0円(65歳以上)
源泉徴収される所得税等51,050円他の所得と合わせて決まる

※一時金は、課税退職所得金額1,000,000円×5%に復興特別所得税2.1%を加え、1円未満を切り捨てた額です(「退職所得の受給に関する申告書」を出した場合。国税庁 No.2732 の計算例と同じ手順)。年金は、ほかに公的年金等を受けていない場合の、国税庁 No.1600 の速算表による雑所得です。住民税は含みません。

年金の場合は、ここから所得控除を引いて税額が決まります。受け取る年の他の所得(給与・老齢厚生年金など)で変わるため、一時金と年金のどちらが少ないかは、人によって違います。

退職金と同じ年・別の年に受け取ると、退職所得控除はどう調整されるか

退職金とDCの一時金は、どちらも退職所得です。勤続期間が重なる分の退職所得控除を二重に使えないよう、国税庁のタックスアンサー(No.2732・No.2735)が次のように調整します。

同じ年に受け取る場合

支払済みの分と今回の分の収入金額を合計し、勤続期間は「最も長い期間」を基準にします(最も長い期間と重ならない期間があれば加算)。そこから退職所得控除額を引き、2分の1にして課税退職所得金額を出し、すでに源泉徴収された税額を引いた残りが今回の源泉徴収額です(No.2735)。申告書には支払済みの分を書き、源泉徴収票を添付します(申告書の書き方)。

別の年に受け取る場合:前年以前○年内の分が調整の対象

前に受けた退職手当等の勤続期間が今回の勤続期間と重なるとき、今回の退職所得控除額は、今回の勤続年数で出した控除額から、重なる年数で出した控除額を引いた額になります。どこまでさかのぼるかは、受け取る順番で決まっています。

受け取る順番令和8年1月1日以後改正前
先に退職手当等、あとでDCの一時金前年以前19年内前年以前19年内(変更なし)
先にDCの一時金、あとで退職金前年以前9年内(令和8年1月1日以後に受けた一時金が対象)前年以前4年内
上記以外(退職金どうしなど)前年以前4年内前年以前4年内

※出典:国税庁 No.2732・No.2735、財務省 令和7年度税制改正の解説 p.119〜120。9年内の対象は、令和8年1月1日以後に支払を受けた老齢一時金です。令和8年1月1日前に受けた退職手当等は、4年内のものが対象です(No.2732)。

財務省の解説には、改正前の例として「60歳で老齢一時金を受け、65歳で老齢一時金以外の退職手当等を受けた場合は、重複の調整はされない」と書かれています。間隔が5年あくと4年内に入らなかったためです。令和8年以後に受けた老齢一時金は、9年内なので調整の対象になります。

例:DC一時金1,000万円(掛金20年)と、退職金2,000万円(勤続38年)

DCの掛金を納めた20年は、勤続38年の期間にすべて含まれる前提です。退職金は、勤続38年なら退職所得控除額が800万円+70万円×18年=20,600,000円です。

受け取り方課税退職所得金額源泉徴収される所得税等
DCの一時金だけ1,000,000円51,050円
退職金とDCを同じ年に4,700,000円523,262円
DCを60歳、退職金を65歳(令和8年以後のDC)DC 1,000,000円/退職金 3,700,000円合計 370,112円
同じ間隔で、改正前の規定(4年内)のときDC 1,000,000円/退職金 0円合計 51,050円

※別の年のDCの行は、退職金の退職所得控除額20,600,000円から、重複20年分の8,000,000円を引いた12,600,000円で計算した額です(No.2732)。同じ年の行は、収入金額の合計30,000,000円から、最も長い勤続38年の控除額20,600,000円を引いて2分の1にしています。DCの一時金の収入金額が控除額に満たない場合などは、重複期間の計算が変わります。

前の受け取りの勤続年数や、重複する期間の数え方は、前に支払を受けた退職手当等の源泉徴収票と照らして確認するのが確実です。勤務先の担当部署や税務署、税理士に確認してください。

iDeCoと企業型DCの両方があるときは

請求できるかどうかの判定は、企業型とiDeCoの記録を合算して行います(厚労省Q&Aの定年退職者への説明事項)。受け取る年齢の表(上)は、両方の通算加入者等期間を合わせて当てはめます。

  • 税の扱いはどちらも同じ:一時金は退職所得、年金は公的年金等の雑所得です(厚労省の概要・国税庁 No.1420)。
  • 別々の年に一時金で受け取る場合:先に受けた分と勤続期間が重なれば、あとの一時金は控除の調整を受けます。あとがDCの一時金なら前年以前19年内、先がDCの一時金であとが退職金なら令和8年以後は9年内です(上の表)。
  • 同じ年に両方を一時金で受け取る場合:2か所以上からの退職手当等として合算され、申告書に先の支払の内容と源泉徴収票を添えます(国税庁 No.2735)。

iDeCoの掛金・運用の計算はiDeCoシミュレーター(老後の計算帳)、退職金の手取りは退職金の手取り計算機で試算できます。

よくある質問

Q. 60歳になったら、すぐ受け取らないといけませんか?

A. 財務省の令和7年度税制改正の解説には、老齢一時金の受給者は60歳から75歳までの間に受給日を任意に選べると書かれています。厚労省のQ&Aでは、定年退職者への説明事項として「自ら裁定請求を行わなかった場合の取扱い(75歳自動裁定)」が挙げられています。中身までは原文で取れていないので、請求しないまま75歳が近づく場合は、運営管理機関に取扱いを確認してください。

Q. 60歳を過ぎて働き続けていると、受け取れませんか?

A. 厚労省のQ&A(№149-2)は、企業型年金の加入者である間は老齢給付金の請求はできないとしています。再雇用などで企業型年金に加入し続けている間は請求できないため、受け取り時期は加入が終わる時期にも左右されます。一方、№151-1では、60歳以降の掛金納付期間も退職所得控除を計算する勤続年数に算入されるとされています。

Q. 一時金と年金を、半分ずつ受け取れますか?

A. iDeCoは、厚労省の概要に給付の種類として「一時金と年金の組み合わせ」が載っています。企業型DCは、同じ概要に「5年以上20年以下の有期、または終身年金(規約の規定により一時金の選択可能)」とあり、組み合わせられるかどうかは書かれていません。加入先の企業型年金規約で確認してください。

Q. 退職金と同じ年にDCの一時金を受け取ると、何が変わりますか?

A. 国税庁のタックスアンサー(No.2735)では、その年中に他の支払者から支払済みの退職手当等がある場合、支払者は他の支払者が支払った分も含めて源泉徴収税額を計算するとされています。「退職所得の受給に関する申告書」に支払済みの退職手当等の情報を書き、その「退職所得の源泉徴収票」を添付して出します。このページの例(退職金2,000万円・勤続38年と、DC一時金1,000万円)では、同じ年に受けた場合の源泉徴収は523,262円です。

Q. 住民税はどうなりますか?

A. このページの例は所得税等だけです。住民税の扱いは、国税庁・厚労省の原文を取っていないので書いていません。退職金を含めた住民税込みの手取りは、退職金の手取り計算機で計算できます。

参考・出典

※税額は、他に所得がなく、役員等でも勤続5年以下でもない一般の会社員の目安です。受け取り方・規約・他の退職手当等の有無で結果は変わります。具体的な取り扱いは、加入先の運営管理機関、勤務先の担当部署、所轄の税務署、税理士等にご確認ください。

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