確定給付企業年金(DB)の受け取り方|一時金・年金の選び方と税金、途中で辞めたときの移換
確定給付企業年金(DB)の老齢給付金は、年金で受け取るのが原則で、会社の規約に定めがあれば一時金も選べます。一時金で受ければ退職所得、年金で受ければ公的年金等の雑所得として課税されます。受け取れる年齢は規約で60歳から70歳の範囲に決まり、途中で辞めたときは脱退一時金を受けるか、企業年金連合会などへ移すかを選びます(他のDBや連合会へ移す申出は、資格を失った日から1年を経過する日まで)。勤続25年・一時金1,500万円の例では、課税退職所得金額は1,750,000円、源泉徴収される所得税等は89,337円です(当サイト試算)。
場面ごとに、受け取り方と税はどう決まるか
確定給付企業年金法第38条は、老齢給付金は年金として支給するとし、規約でその全部または一部を一時金として支給できると定めた場合に限って、一時金にできるとしています。給付の中身(年金の種類・一時金にできる割合・開始年齢)は、会社ごとの規約で決まります。
| 場面 | 受け取り方 | 税 |
|---|---|---|
| 規約が年金だけの会社 | 年金。終身、または5年以上の有期(法第33条) | 公的年金等の雑所得 |
| 規約に一時金の定めがあり、年金に保証期間がある | 請求と同時に、一時金を選べる。全部、または規約で決めた割合 | 一時金の分は退職所得、年金の分は雑所得 |
| 年金を受け始めて5年たった | 保証期間のうちは、残りの保証期間に応じた額を一時金に切り替えられる | 一時金の分は退職所得 |
| 老齢給付金の要件を満たさずに退職した | 脱退一時金(規約で定める要件を満たす場合) | 退職所得 |
| 途中で辞めて、受け取らずに移す | 他のDB・DC・企業年金連合会へ脱退一時金相当額を移換 | 連合会に移すときは課税なし。年金で受けるとき雑所得 |
※出典:確定給付企業年金法第33条・第38条・第41条・第81条の2・第82条の3・第91条の19、施行令第29条、国税庁 No.5231・No.1420・No.1600、企業年金連合会の案内。年金から一時金への切り替えは保証期間が定められた年金の場合で、特別の事情(災害・債務の弁済が困難・重い障害や長期入院など、規約例による)があるときは、開始から5年たつ前でも切り替えられます。
一時金の選択について、施行令第29条は次の3つを基準にしています。一つ目は、年金に保証期間が定められていること。二つ目は、受給権者の選択によることで、会社が強制することはできません。三つ目は、老齢給付金の請求と同時に選ぶか、年金を受け始めて5年たってから選ぶことです。
税は、国税庁の整理(No.5231)で、退職年金として給付されたものは公的年金等に当たる雑所得、退職一時金として給付されたものはみなし退職手当等に当たる退職所得です。退職所得控除の計算は企業型DCの受け取り方と税金に、iDeCoの受け取りはiDeCoの受け取り方にあります。
受け取れるのはいつからか:規約で60〜70歳、50歳以上の退職で早まることも
老齢給付金は、規約で定める要件を満たしたときに支給されます。規約の要件は、法第36条で次の枠に収まる必要があります。
- 支給開始年齢:60歳以上70歳以下の規約で定める年齢に達したときに支給するものであること。厚労省によると、これまで60〜65歳だった設定範囲が、令和2年6月5日の施行で70歳までに広がりました。
- 早めに受け取れる退職:規約に定める場合に限り、50歳以上で、上の支給開始年齢より前の規約で定める年齢に達した日以後に退職したときにも、老齢給付金を支給できます(施行令第28条が政令の年齢を50歳としています)。
- 加入期間の要件:20年を超える加入者期間を、老齢給付金を受けるための要件にすることはできません。
- 繰り下げ:要件を満たしても請求していない人は、規約で定めるところにより、支給の繰下げを申し出ることができます(法第37条)。
何歳から、何年以上の加入で受け取れるかは会社の規約で決まるため、このページでは数字を載せていません。同じDBでも、会社によって開始年齢は変わります。勤務先の年金担当や、手元の規約・年金のしおりで確かめてください。
年金の支給期間は、法第33条で終身、または5年以上にわたり毎年1回以上定期的に支給するものと決まっています。保証期間つきの終身年金なら、保証期間のあいだは本人が亡くなっても遺族に支給されます(施行令第23条の定義)。
一時金と年金で、課税の対象はいくら違うか:1,500万円の例
勤続25年で、DBの老齢給付金を1,500万円の一時金で受け取る例です(規約に一時金の定めがある前提)。退職所得控除額は、800万円+70万円×(25年−20年)=11,500,000円です。年金は、同じ1,500万円を15年に等分したと仮定した年1,000,000円で比べます。実際の年金額は規約と保証期間で決まります。
| 受け取り方 | 課税の対象 | 源泉徴収される所得税等 |
|---|---|---|
| 一時金1,500万円(本人拠出なし) | 課税退職所得金額 1,750,000円 | 89,337円 |
| 一時金1,500万円(本人拠出200万円あり) | 課税退職所得金額 750,000円 | 38,287円 |
| 年金 年1,000,000円(仮定) | 雑所得 400,000円(65歳未満)/0円(65歳以上) | 他の所得と合わせて決まる |
※当サイト試算。他に所得がなく、役員等でも勤続5年以下でもない会社員が、「退職所得の受給に関する申告書」を出した場合。所得税は復興特別所得税2.1%を加えて1円未満を切り捨て、住民税は含みません。年金は、ほかに公的年金等を受けていない場合の国税庁 No.1600 の速算表による雑所得で、ここから所得控除を引いて税額が決まります。
本人拠出があるとき:法第55条第2項は、加入者が掛金の一部を負担できると定めています。一時金のときは、その額から本人が負担した掛金を差し引いた残りが退職所得の収入金額になります(所得税法第31条第3号、国税庁 No.1420)。上の2行目は、本人拠出200万円を引いた1,300万円で計算した例です。掛金を払っている間は、本人負担分が生命保険料控除の対象になります(国税庁 No.5231)。年金で受ける場合の本人拠出分の扱いは、今回確認した国税庁の案内には書かれていないので、このページでは扱っていません。
一時金と年金のどちらが手取りで有利かは、ほかの所得、公的年金の額、年金を何年受けるかで変わります。数字の置き方を変えて試すなら退職金の手取り計算機が使えます。
退職金と同じ年・近い年に受け取るときは
DBの一時金は、会社の退職金と同じ退職所得(みなし退職手当等)です。同じ年に退職金とDBの一時金を受けると、2か所以上からの退職手当等として合算して計算し、申告書にすでに受けた分を書いて源泉徴収票を添えます(国税庁 No.2735、申告書の書き方)。
別の年に受けるときは、勤続期間が重なる分の控除を二重に使えない調整があります。施行令第70条で前年以前9年内・19年内の特例とされているのは、確定拠出年金の老齢給付金として支給される一時金(企業型DC・iDeCo)が関わる場合です(施行令第72条第3項第7号)。DBの一時金は、会社の退職金どうしと同じ前年以前4年内の扱いになると読めます。具体的な年数の数え方は、前に受けた退職手当等の源泉徴収票と照らして税務署か税理士に確認するのが確実です。
途中で辞めたら:脱退一時金か、移換か
老齢給付金の要件(規約で定める)を満たさずに加入者の資格を失った人には、規約で定める要件を満たす場合に脱退一時金が支給されます(法第41条)。脱退一時金を受けるための要件として、3年を超える加入者期間を規約に定めることはできません(同条第3項)。規約に定めている場合は、加入期間など支給開始要件以外の要件を満たして退職したが、まだ支給開始の年齢に達していない人にも脱退一時金が支給されます(同条第2項第2号)。脱退一時金の支給は、規約で定めるところにより、本人が申し出て繰り下げることもできます(同条第4項)。
脱退一時金を受け取らずに、脱退一時金相当額を移す方法もあります。
- 他のDBへ:転職先のDBの規約に、移換を受け入れる旨があらかじめ定められている場合に申し出られます(法第81条の2)。
- DC・iDeCoへ:企業型DCまたはiDeCoの加入者になったときに、DC側の資産管理機関や国民年金基金連合会へ移せます(法第82条の3)。
- 企業年金連合会へ:連合会に移して、将来、通算企業年金として受け取れます(法第91条の19)。
他のDBへの移換と連合会への移換は、申出が資格を失った日から1年を経過する日までに限られます(施行令第50条の2・第65条の17)。天災などでやむを得ない理由があるときは例外があります。期限を過ぎると移換の道がなくなるため、事業主等には、退職時に期限などを説明する義務が定められています(施行令第65条の19)。
企業年金連合会の通算企業年金
企業年金連合会の案内では、通算企業年金は、DBを退職等で資格喪失し、規約で定める脱退一時金を受ける要件を満たした方(中途脱退者)などの年金原資を連合会が預かり、将来年金として支給するものです。特長として次の点が挙げられています。
- 終身年金で、保証期間は受取開始年齢から満80歳までです。
- 受取開始は原則65歳で、生年月日により60歳から段階的に65歳に上がります。本人の選択で60歳以降に早めに受けることもでき、その場合は年金額が減ります。
- 連合会への移換には税金がかからず、年金で受け取るときは公的年金等に係る雑所得です。
脱退一時金として受け取ると、受け取った年の退職所得として課税されます(所得税法第31条第3号)。受け取るか移すかは、その後の勤務先にDBや企業年金があるか、受け取ったお金をいつ使うかで考えます。
請求の手続きと、受け取る前に規約で確かめる点
給付を受ける権利は、受給権者の請求に基づいて事業主等が裁定します(法第30条第1項)。「事業主等」は、基金を設立して実施するDB(基金型)では基金、それ以外(規約型)では事業主です(法第29条第1項)。請求のしかたは、勤務先の年金担当に確かめます。
受け取る前に、規約で次の5点を確かめておくと、一時金か年金かを決めやすくなります。
- 一時金の定めがあるか、あるなら全部か一部か(割合)
- 年金の種類(終身か有期か)と保証期間
- 老齢給付金を受け取れる年齢と、加入期間の要件
- 本人が掛金を負担しているか、その累計額(一時金のとき収入金額から引かれる額)
- 途中で辞めたときの脱退一時金の要件と、移換の受け入れ先の有無
退職金の手取りは退職金の手取り計算機、退職金の相場は退職金の平均で調べられます。
よくある質問
Q. 会社の判断で、一時金に決められてしまうことはありますか?
A. 政令(確定給付企業年金法施行令第29条)は、一時金として支給するのは老齢給付金の受給権者の選択によるものとしています。厚労省のQ&A(№41)も、事業主等の判断によって強制的に一時金として支給することは「不可」としています。
Q. 一時金を選ぶと、年金はなくなりますか?
A. 全部を一時金にすると、老齢給付金の受給権はなくなります(厚労省Q&A №43、法第40条第3号)。規約例では、一時金にする割合を「100パーセント」か規約で決めた割合から選ぶ形になっており、一部だけ一時金にした場合は、残りは年金として支給されます。割合は会社の規約で決まるため、勤務先の年金担当に確認してください。
Q. 60歳前に退職しても、DBは受け取れますか?
A. 法第36条第2項第2号と施行令第28条は、規約で定めた場合に限り、50歳以上で、規約の支給開始年齢(60〜70歳の範囲)より前の規約で定める年齢に達した日以後に退職したときにも、老齢給付金を支給できるとしています。規約にその定めがなければ、規約で定めた支給開始年齢まで老齢給付金は出ません。支給開始年齢の前に退職したときの扱い(脱退一時金が出るか、移換できるか)は、規約と法第41条・第81条の2などで決まります。
Q. 転職先にDBがなくても、企業年金連合会に預けられますか?
A. 企業年金連合会の案内では、DBを退職等で資格喪失し、規約で定める脱退一時金を受ける要件を満たす方(中途脱退者)が、脱退一時金相当額を連合会に移して通算企業年金として受け取れるとされています。転職先の制度の有無は条件に書かれていません。申出は、資格喪失日から1年を経過する日までです(法第91条の19、施行令第65条の17)。
Q. 住民税はどうなりますか?
A. このページの例は所得税等だけです。住民税の扱いは、今回取得した原文に基づいて書いていません。退職金を含めた住民税込みの手取りは、退職金の手取り計算機で計算できます。
参考・出典
- e-Gov法令検索 - 確定給付企業年金法(平成13年法律第50号)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 確定給付企業年金法施行令(平成13年政令第424号)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 所得税法(第31条)・所得税法施行令(第70条・第72条)(2026年10月3日確認)
- 厚生労働省 - 確定給付企業年金制度(規約例・Q&Aを含む。2026年10月3日確認)
- 厚生労働省 - 確定給付企業年金制度の主な改正(令和2年6月5日施行、令和4年5月1日施行)(2026年10月3日確認)
- 企業年金連合会 - 通算企業年金の特長(2026年10月3日確認)
- 企業年金連合会 - 移換の仕組みと企業年金連合会の役割(2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.1600 公的年金等の課税関係(2026年10月3日確認)
- 国税庁 - No.5231 確定給付企業年金等に係る課税関係(2026年10月3日確認)
※税額は、他に所得がなく、役員等でも勤続5年以下でもない一般の会社員の目安です。受け取り方・規約・他の退職手当等の有無で結果は変わります。具体的な取り扱いは、勤務先の年金担当、所轄の税務署、税理士等にご確認ください。