iDeCoの受け取り方|一時金・年金・併用の違いと、退職金と受け取る年が近いときの税金

iDeCoは、一時金で受け取れば退職所得、年金で受け取れば公的年金等の雑所得として課税され、一時金と年金を組み合わせることもできます。受け取れるのは原則60歳から75歳になるまでで、請求は記録関連運営管理機関に出します。会社員で退職金もある人は、iDeCoの一時金と退職金を受け取る年が近いと、勤続期間が重なる分だけ退職所得控除が減ります。iDeCoが先なら前年以前9年内、退職金が先なら前年以前19年内が対象です。掛金25年・900万円のiDeCoは、単独なら所得税等が0円ですが、2,200万円の退職金(勤続38年)と同じ年に受けると、iDeCo分の所得税等は589,627円になります。

一時金・年金・併用で、税の区分と使える控除はどう違うか

iDeCo公式は、受け取り方として「年金」「一時金」「一時金と年金の組み合わせ」を挙げ、年金で受け取る場合は公的年金等控除、一時金の場合は退職所得控除の対象になるとしています。国税庁のタックスアンサー(No.1420)は、確定拠出年金法の個人型年金規約に基づく老齢給付金の一時金を退職所得とみなすとしています。

受け取り方税の区分使える控除
一時金退職所得退職所得控除。(収入金額−控除額)×1/2が課税の対象
年金公的年金等の雑所得公的年金等控除。年金の収入金額と年齢で額が決まる
併用一時金の分は退職所得、年金の分は雑所得それぞれ上の控除

※出典:iDeCo公式「給付について」、国税庁 No.1420・No.1600、所得税法施行令第82条の2第2項第6号(個人型年金規約に基づく老齢給付金の年金は公的年金等)。併用は、一時金の分と年金の分をそれぞれ上の区分に当てはめた整理です。

  • 年金:iDeCoは有期年金(5年以上20年以下)として扱われます。運営管理機関によっては終身年金で受け取れる場合もあります(iDeCo公式)。
  • 併用:受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達した時点で、一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取れます(iDeCo公式。運営管理機関に確認)。
  • 一時金:受給権が発生してから75歳になるまでの間に、一括で受け取れます(iDeCo公式)。

企業型DCは、一時金を選べるかどうかを会社の規約で決めます。企業型DCの受け取り方と税金は企業型DCの受け取り方と税金にあります。

いつ、どこに請求するか:60歳から75歳までの間に

iDeCoの老齢給付金は、原則60歳から受け取れます。60歳から受け取るには、60歳までの通算加入者等期間が10年以上必要で、10年に満たないと受け取れる年齢が61歳から65歳に繰り下がります。60歳以上で初めてiDeCoに加入した人は、加入から5年を経過した日から受け取れます(iDeCo公式、確定拠出年金法第33条。個人型年金の給付には第73条で準用)。年齢の表は企業型DCの受け取り方と税金にあります。

  • 請求先:記録関連運営管理機関(RK)に裁定の請求を出します。連絡先は、定期的に届く「年金資産の残高の通知」等に載っています(iDeCo公式)。
  • 時期:受給を開始する時期は、75歳になるまでの間で選べます。75歳までに請求しなかった場合は、法務局に供託されます(iDeCo公式)。
  • 一時金のときの申告書:「退職所得の受給に関する申告書」を出した場合は支払者が所得税等を計算して源泉徴収し、出さないと支払金額の20.42%が源泉徴収されて確定申告で精算します(国税庁 No.1420)。書き方は退職所得の受給に関する申告書にあります。

退職金と受け取る年が近いと、iDeCoの退職所得控除はどうなるか

iDeCoの一時金は、会社の退職金と同じ退職所得です。勤続期間が重なる分の退職所得控除を二重に使えないよう、重なる期間の年数で出した控除額が、あとに受け取る側の控除額から引かれます(所得税法施行令第70条、国税庁 No.2732)。

iDeCoの勤続年数にあたるのは、掛金を納めた期間です(施行令第69条第1項第2号。1年未満の端数は1年に切り上げ)。どこまでさかのぼって調整されるかは、受け取る順番で決まっています。

受け取る順番調整の対象対象外になる間隔
iDeCoが先、退職金があと前年以前9年内(令和8年1月1日以後のiDeCo一時金)受け取る年が10年以上離れる
退職金が先、iDeCoがあと前年以前19年内受け取る年が20年以上離れる
同じ年収入を合算し、控除は最も長い勤続期間で1回―

※出典:国税庁 No.2732・No.2735、所得税法施行令第70条。「前年以前9年内」は、あとに受け取る年の前年から数えて9年分のことで、受け取る年の差が9年までなら対象、10年以上なら対象外です(19年内も同じ数え方)。令和8年1月1日前に受けたiDeCoの一時金は、4年内の扱いでした。

調整されるのは、勤続期間が重なっている分だけです。退職金の会社を辞めたあとに掛金を納めた期間など、重ならない期間には影響しません。年金で受け取る場合は退職所得ではないので、この調整の対象になりません。

iDeCoは75歳までに請求する必要があるので、退職金を60歳前後で受けた場合は、あとからiDeCoを20年以上あけて受け取ることはできません。iDeCoを先に受けて退職金をあとにする場合は、10年あけられるかどうかが分かれ目です。

なお、掛金を納めた期間が5年以下だと、一時金は「短期退職手当等」の計算になり、退職所得控除を引いた額のうち300万円を超える部分に2分の1が使えません(国税庁 No.1420)。

例1:60歳で退職金2,200万円を受けた人が、iDeCo900万円をあとで一時金にすると

前提は、22歳入社・60歳で退職金2,200万円(勤続38年、退職所得控除額2,060万円)、iDeCoは35歳から60歳まで25年間掛金を納め、受け取る資産が900万円(退職所得控除額1,150万円)です。退職金だけの課税退職所得金額は700,000円、所得税等は35,735円です。

iDeCoの受け取り方iDeCoの課税の対象iDeCo分の所得税等
退職金を受けていない場合に一時金課税退職所得金額 0円0円
退職金と同じ年(60歳)に一時金合算の課税退職所得金額 5,200,000円589,627円
退職金の5年後(65歳)に一時金課税退職所得金額 4,100,000円400,742円
65歳から10年間の年金雑所得が年900,000円増える他の所得と合わせて決まる

※一時金は復興特別所得税2.1%込み・1円未満切捨て(「退職所得の受給に関する申告書」を出した場合。国税庁 No.2732 の計算例と同じ手順)。同じ年の行は、収入の合計3,100万円から、最も長い勤続38年の控除額2,060万円を引いて2分の1にし、退職金の分の所得税等35,735円を引いた額です。5年後の行は、iDeCoの控除額1,150万円から重複25年分の1,150万円を引くと0円になるため、下限の80万円で計算しています(所得税法30条6項2号)。年金の行は、資産を10年で等分(運用なし)して年90万円を受け取り、ほかの公的年金等が年200万円ある65歳以上の場合です。住民税は含みません。

退職金を受けていなければ、25年の掛金に対する退職所得控除額1,150万円が資産900万円を上回り、所得税等はかかりません。退職金と受け取る年が近いと、同じ勤続期間の控除を退職金で使い終えているため、iDeCoの控除が下限の80万円まで減ります。年金の行は一時金の行と同じ尺度では比べられません。年金にかかる税額は、ほかの所得と所得控除で変わるためです。

例2:iDeCoを60歳で先に受け、退職金を65歳で受けると

前提は、22歳入社・65歳で退職金2,500万円(勤続43年、退職所得控除額2,410万円)、iDeCoは例1と同じ(掛金25年・資産900万円)を60歳で一時金にしたとします。iDeCoは単独なら所得税等がかかりません。

退職金の受け取り退職金の課税退職所得金額退職金の所得税等
iDeCoを受けていない場合450,000円22,972円
iDeCoを5年前(60歳)に一時金で受けた場合4,800,000円543,682円

※2行目の退職所得控除額は、退職金の2,410万円から、iDeCoの重複期間21年分の870万円を引いた1,540万円です。iDeCoの収入900万円は控除額1,150万円に満たないため、iDeCoの勤続期間は収入から逆算して21年とみなします(施行令第70条第2項、国税庁 No.2732)。いずれも復興特別所得税2.1%込み・1円未満切捨て・申告書を出した場合で、住民税は含みません。

iDeCoのほうが先でも、5年あけただけでは9年内に入るため、退職金の控除額が減ります。受け取る年が10年以上離れれば、この調整の対象になりません。

iDeCoと企業型DCの両方があるときの扱いは企業型DCの受け取り方と税金に、受け取りの試算はiDeCo受取額シミュレーターと退職金の手取り計算機にあります。

よくある質問

Q. 60歳になったら、すぐ受け取らないといけませんか?

A. iDeCo公式の「給付について」には、受給を開始する時期は75歳になるまでの間で選べると書かれています。ただし75歳までに請求する必要があり、請求しなかった場合は法務局に供託されます。請求先は記録関連運営管理機関で、連絡先は定期的に届く「年金資産の残高の通知」等に載っています。

Q. 一時金と年金を、半分ずつ受け取れますか?

A. iDeCo公式は、受給権が発生する年齢(原則60歳)に到達した時点で一部を一時金で受け取り、残りを年金で受け取ることもできるとしています。一方、公式の別のページには「金融機関によっては、年金と一時金を併用することもできます」とあります。加入している運営管理機関で併用できるかを確認してください。

Q. 運用だけしていた期間は、退職所得控除の勤続年数に入りますか?

A. 所得税法施行令第69条第1項第2号は、iDeCoの勤続年数の計算の基礎になる期間を、個人型年金規約に基づいて加入者掛金を納めた個人型年金加入者期間(ほかの制度から移換された期間などを含む)としています。掛金を納めずに運用だけ続けた期間(運用指図者期間)は、この条文には挙げられていません。1年未満の端数は1年に切り上げます(同条第2項)。

Q. 掛金を納めた期間が5年以下だと、どうなりますか?

A. 国税庁のタックスアンサー(No.1420)は、勤続年数が5年以下の人の退職手当等を「短期退職手当等」とし、退職金の額から退職所得控除額を引いた額のうち300万円を超える部分には、2分の1を掛ける計算が使えないとしています。iDeCoの一時金も退職手当等とみなされるため(同No.1420)、掛金を納めた期間が5年以下の方はこの計算の対象になります。

Q. 年金で受け取れば、退職金との調整は関係ありませんか?

A. この調整(施行令第70条)は、退職手当等とみなされる「一時金」を受け取る場合のものです。年金は退職所得ではなく、公的年金等の雑所得として課税されます(国税庁 No.1600)。ただし年金は、ほかの公的年金等と合わせて公的年金等控除を計算するため、老齢年金などの額で課税される額が変わります。

Q. 住民税はどうなりますか?

A. このページの例は所得税等だけです。住民税・社会保険料への影響は、原文を取っていないので書いていません。退職金を含めた住民税込みの手取りは、退職金の手取り計算機で計算できます。

参考・出典

※税額は、他に所得がなく、役員等でもない一般の会社員の目安です。受け取り方・加入している運営管理機関・他の退職手当等の有無で結果は変わります。具体的な取り扱いは、運営管理機関、勤務先の担当部署、所轄の税務署、税理士等にご確認ください。

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