iDeCoは転職したらどうなる?手続きが必要な場面と届出先、掛金の上限、企業型DCの自動移換
iDeCoは転職しても、加入できる条件を満たしていれば続けられます。手続きが必要になるのは、国民年金の被保険者の種別か、勤務先の企業年金制度等の加入状況が変わったときです(iDeCo公式)。届書は運営管理機関に出し、転職先の企業型DCへ資産を移すときだけ転職先の担当部署が窓口になります。自動移換が起きるのは、iDeCoではなく、企業型DCに入っていた人が資格を失って6か月以内に移換しなかったときです。掛金の上限は加入区分で決まり、会社員で企業年金がなければ月2万3,000円、企業型DCなどに入っていれば月2万円です。
iDeCoに入っている人が転職・退職したときの届書と届出先
iDeCo公式は、国民年金の被保険者種別か、勤務先での企業年金制度等の加入状況が変わったときに手続きが必要だとしています。届書は利用している運営管理機関に連絡して入手し、そこへ提出します。
| 転職・退職のあと | やること(届書) | 届出先 |
|---|---|---|
| 会社員のまま転職し、企業年金等の加入状況が変わる | 加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)K-032 | 運営管理機関 |
| 自営業・無職から会社員になる(厚生年金保険の適用事業所に就職) | 加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)K-032 | 運営管理機関 |
| 転職先で、掛金を会社経由(事業主払込)にしたい | 事業主払込に関する証明書 K-109A(共済組合員は K-109B) | 運営管理機関 |
| 転職先の企業型DCへ、iDeCoの資産を移す | 加入者資格喪失届 K-015(移換は転職先の手続き) | K-015は運営管理機関、移換は転職先の担当部署 |
| 転職先の企業型DCに入り、iDeCoも続ける | 加入者登録情報変更届 K-032 | 運営管理機関 |
| 公務員になる | 加入者登録情報変更届 K-032(公務員共済を含む加入状況の変更) | 運営管理機関 |
| 退職して自営業・無職(第1号被保険者)になる | 加入者被保険者種別変更届(第1号被保険者用)K-010A | 運営管理機関 |
| 退職して配偶者の扶養に入る(第3号被保険者) | 加入者被保険者種別変更届(第3号被保険者用)K-010C | 運営管理機関 |
※出典:iDeCo公式「転職・退職された方へ」「各種変更届について」「よくあるご質問」。無職で国民年金を自分で納める人が第1号被保険者になるのは、国民年金法第7条第1項第1号が、国内に住所のある20歳以上60歳未満で第2号・第3号に当たらない人を第1号被保険者としているためです。公務員共済の組合員は取り扱いが異なる場合があり、運営管理機関に確認するよう公式に書かれています。
- 企業型DCとiDeCoを同時に続けられる条件:厚生労働省は、企業年金加入者がiDeCoに入れる条件として、iDeCoの掛金が企業型DCの事業主掛金や他制度の掛金相当額と合わせて各月の拠出限度額を超えないこと、掛金が各月拠出であること、企業型DCの加入者掛金(マッチング拠出)を拠出していないことを挙げています。公式FAQは、事業主掛金が年単位拠出のときやマッチング拠出を選ぶときは併用できないとしています。
- 転職先に確定給付企業年金(DB)がある:DBの規約でiDeCoの資産の受け入れが定められている場合に限り、DBへ移換できます(確定拠出年金法第74条の4、iDeCo公式)。移換できるかは転職先の担当部署に確認します。
- 国民年金の保険料の免除を受ける:保険料免除者は個人型年金加入者の対象から外れます(同法第62条第1項第1号・第4項第4号)。国民年金保険料の免除・納付猶予を申請する前に、iDeCoの扱いを運営管理機関に確認してください。
退職から次の会社までに社会保険の空白ができる場合は、転職で社会保険に空白ができたらにあります。
転職で、iDeCoの掛金の上限は変わるか
上限は加入区分で決まるので、転職や退職で区分が変わると上限も変わります。厚生労働省が示している月額の拠出限度額は次のとおりです。掛金は月5,000円以上1,000円単位で、この範囲内で設定します(iDeCo公式)。
| 加入区分 | 月額の上限 | 補足 |
|---|---|---|
| 会社員(企業型DCも確定給付型の年金もない。公務員を除く) | 2万3,000円 | 第2号被保険者 |
| 会社員(企業型DC・確定給付型の年金のみ加入。公務員を含む) | 2万円 | 企業型DCの事業主掛金と他制度の掛金相当額の合計が5万5,000円の範囲内 |
| 自営業者等(第1号被保険者) | 6万8,000円 | 国民年金基金の掛金や付加保険料を納めている場合は、その額を引いた額 |
| 専業主婦(夫)等(第3号被保険者) | 2万3,000円 | ― |
| 国民年金の任意加入被保険者 | 6万8,000円 | 国民年金基金の掛金や付加保険料を納めている場合は、その額を引いた額 |
※出典:厚生労働省「iDeCo(個人型確定拠出年金)」の拠出限度額(2026年10月3日確認)。確定給付型の年金とは、確定給付企業年金・厚生年金基金・国家公務員共済組合・地方公務員共済組合・私立学校教職員共済などをいいます。他制度の掛金相当額は、国家公務員共済組合・地方公務員共済組合が8,000円です(同ページ)。
たとえば転職先の企業型DCで事業主掛金が月4万円なら、「iDeCoは2万円以内」と「合計5万5,000円の範囲内」の2つの条件から、iDeCoの上限は月1万5,000円になります(公式の2つの条件を当てはめた計算です。事業主掛金の額は転職先の企業型DC加入者向けサイトで確認します)。
加入区分が変わって上限が変わるときは、加入区分変更の届出とあわせて、掛金額変更の届出が必要になる場合があります(iDeCo公式「各種変更届について」)。掛金額の変更は、拠出限度額の範囲内で1年に1回できます。
企業型DCに入っていた人は、どこへ移すか
企業型DCの加入者が転職・退職して資格を喪失したときの移換先を、iDeCo公式は次のとおり案内しています。移換の手続きをとらないと、次の章の自動移換になります。
| 転職・退職のあと | やること(届書) | 届出先 |
|---|---|---|
| 転職先に企業型DCがある | 資産を転職先の企業型DCへ移換(iDeCoへの同時加入も可) | 転職先の担当部署 |
| 転職先に企業型DCがない会社員 | 個人別管理資産移換依頼書 K-003(掛金も拠出するなら個人型年金加入申出書 K-001も) | 運営管理機関 |
| 公務員・自営業・専業主婦(夫)になる | K-003(掛金も拠出するなら K-001も) | 運営管理機関 |
※出典:iDeCo公式「転職・退職された方へ」「よくあるご質問」。移換の期限は、企業型年金加入者の資格を喪失した日が属する月の翌月から6か月以内です(確定拠出年金法第83条)。
iDeCoで掛金を拠出しない場合でも、個人別管理資産移換依頼書(K-003)を出して、運用だけを行うことができます。移換の手続きは、運営管理機関一覧にある機関で取り扱います。一部の運営管理機関では、加入・移換手続きをオンラインで行えます。
手続きを忘れたらどうなるか:自動移換が起きるのは企業型DCだけ
確定拠出年金法第83条は、企業型年金の企業型年金加入者であった人の個人別管理資産が、資格を喪失した日が属する月の翌月から6か月以内に移換されなかったときに、連合会(国民年金基金連合会)へ移すと定めています。iDeCo公式はこれを「自動移換」と呼び、企業型確定拠出年金に加入していた人についての案内として、次のデメリットを挙げています。
- 資産の運用がされません。
- 管理手数料を負担します。
- 自動移換中の期間は、老齢給付金の受給要件となる通算加入者等期間に算入されないため、受給できる年齢が遅くなることがあります。
手数料は自動移換された資産から引かれます(資産が0円の人の負担はありません)。公式の表は次の金額で、特定運営管理機関と国民年金基金連合会の2つの欄に分かれており、合計額は書かれていません。
| 項目 | 特定運営管理機関 | 国民年金基金連合会 |
|---|---|---|
| 自動移換される際 | 3,300円 | 1,048円 |
| 自動移換中の管理手数料 | 58円/月 | 40円/月 |
| iDeCoへの資産移換 | 550円 | 2,829円 |
※出典:iDeCo公式「転職・退職された方へ」(2026年10月3日確認)。管理手数料は、自動移換された日の属する月の4か月後からの負担で、3月末に当年度分をまとめ、4月に資産から徴収されます。特定運営管理機関は、自動移換された人の記録を管理する機関です。
自動移換になってしまっても、iDeCo公式のFAQによれば、iDeCoに資産を移換して掛金を拠出する(加入者になる)、iDeCoに移換して60歳まで運用のみを行う(運用指図者になる)、脱退一時金の要件を満たすなら脱退一時金として受け取る、企業型DCのある会社に転職したならその企業型DCへ移換する、という選択肢があります。
iDeCoに入っている人の届出忘れは、自動移換とは別の話です。第83条の対象は企業型年金加入者であった人で、iDeCoの加入者が国民年金の被保険者の資格を失うなどして加入者の資格を喪失したときは、第64条第1項により運用指図者になります。ただし届出がないと、iDeCo公式は「掛金の口座振替が一時停止となることもある」とし、登録情報が日本年金機構などの記録と合わないときに送られる案内では、手続きをしないと掛金を拠出できなくなると書いています。
よくある質問
Q. 転職すると、iDeCoは自動的に止まりますか?
A. 転職しただけでは止まりません。確定拠出年金法第62条第4項は、個人型年金加入者の資格を失う場合として、国民年金の被保険者の資格を喪失したとき、保険料免除者となったとき、企業型年金加入者掛金を拠出する企業型年金加入者になったとき(マッチング拠出を選んだ場合)などを挙げています。資格を失った人は、第64条第1項で個人型年金運用指図者になります(個人別管理資産がある場合)。
Q. 転職を機に、掛金の拠出だけやめたいときは?
A. iDeCo公式は、掛金の拠出をやめて運用指図者になるときに「加入者資格喪失届(K-015)」を運営管理機関に出すとしています。運用指図者は、積み立てた資産の運用だけを行う人です。拠出を再開するときは、あらためて加入者になる手続き(個人型年金加入申出書(K-001)の提出など)が必要です。
Q. 退職して無職になり、国民年金の保険料の免除を受けたら、iDeCoはどうなりますか?
A. 確定拠出年金法第62条第1項第1号は、国民年金の第1号被保険者のうち保険料免除者を個人型年金加入者の対象から除いています。免除者になると加入者の資格を失い(同条第4項第4号)、運用指図者になります。一定の要件をすべて満たせば脱退一時金を受け取れる場合があり、iDeCo公式のFAQは、60歳未満であること、通算拠出期間が5年以下か資産が25万円以下であること、最後に資格を喪失した日から2年以内であることなど7つの要件を挙げています。
Q. 転職先に確定給付企業年金(DB)があるときは?
A. iDeCo公式は、勤務先の企業年金制度等の加入状況が変わったときは「加入者登録情報変更届(第2号被保険者用)(K-032)」を運営管理機関に出すとしています。DBの規約でiDeCoの資産の受け入れが定められている場合に限り、iDeCoの資産をDBへ移換することもできます(確定拠出年金法第74条の4)。移換できるかは転職先の担当部署に確認します。
Q. 届出に期限はありますか?
A. 企業型DCの資産には、資格を喪失した月の翌月から6か月という期限があります(確定拠出年金法第83条)。iDeCoの届出について、取得したiDeCo公式の案内には期限の日数が書かれていません。ただし、加入区分の変更の手続きがないと掛金の口座振替が一時停止になることがあるとされているため、転職や退職が決まったら、早めに運営管理機関へ連絡するのが安全です。
Q. 手続きの書式はどこで入手しますか?
A. iDeCo公式は、届書は利用している運営管理機関に連絡して専用の届書を入手し、提出するとしています。一部の運営管理機関では、加入・移換手続きをオンラインで行えます。
参考・出典
- iDeCo公式サイト(国民年金基金連合会) - 転職・退職された方へ(2026年10月3日確認)
- iDeCo公式サイト - 各種変更届について(2026年10月3日確認)
- iDeCo公式サイト - よくあるご質問(2026年10月3日確認)
- 厚生労働省 - iDeCo(個人型確定拠出年金)(拠出限度額・加入できる条件。2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 確定拠出年金法(第62条・第64条・第74条の4・第83条。2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 国民年金法(第7条。2026年10月3日確認)
※届書の種類や必要書類は、加入している運営管理機関や勤務先の制度によって異なる場合があります。具体的な取り扱いは、運営管理機関、転職先の担当部署、年金事務所等にご確認ください。