マッチング拠出とは|加入者掛金の上限、iDeCoと併用できるか、どちらが得か、デメリットと掛金を変える時期

マッチング拠出とは、企業型DC(企業型確定拠出年金)に入っている会社員が、会社が出す事業主掛金に上乗せして自分でも掛金(加入者掛金)を出す仕組みです。加入者掛金は事業主掛金を超えられないという制限は2026年4月1日に撤廃され、現行は事業主掛金との合計が月5.5万円の拠出限度額に収まれば出せます。ただし、マッチング拠出をしている間はiDeCoに入れません。会社に勤めている方が、マッチング拠出とiDeCoのどちらにするかを考えるときの上限・所得控除・デメリット・掛金を変える時期を、条文と厚生労働省の案内で整理しました。

マッチング拠出の加入者掛金は、いくらまで出せるか

確定拠出年金法第19条第3項は、企業型年金加入者が、政令の基準に従い企業型年金規約の定めるところにより、自ら掛金を拠出できるとしています。第20条は、事業主掛金と加入者掛金の合計が拠出限度額を超えてはならないと定めています。限度額の月額は、施行令第11条が決めています。

加入区分現行(2026年11月まで)2026年12月1日から
企業型DCのみ月5.5万円まで月6.2万円まで
確定給付企業年金(DB)等にも加入月5.5万円から他制度掛金相当額を引いた額まで月6.2万円から他制度掛金相当額を引いた額まで

※出典:確定拠出年金法施行令第11条(e-Gov法令検索)、厚生労働省「確定拠出年金の拠出限度額」「2025年の制度改正」。2026年12月1日からの額は、e-Gov上は未施行(2026年10月3日時点)。額は、事業主掛金と加入者掛金の合計の上限です。

たとえば、会社が事業主掛金を月20,000円出していて、企業型DCだけに入っている人は、現行は月35,000円まで加入者掛金に回せる計算です(55,000円−20,000円)。ただし、実際に選べる額は、会社の規約が決めた複数の額の中から選ぶ形です。厚生労働省の承認基準は、加入者掛金の額を複数の具体的な額から選べるようにするよう求めています。

2026年3月までとの違い

厚生労働省は、マッチング拠出の加入者掛金は事業主掛金の額を超えてはならないという制限があったが、2026年4月1日に撤廃したと説明しています。事業主掛金が月20,000円なら、これまでは加入者掛金も20,000円まででした。いまは、合計が限度額以内なら、事業主掛金より多い加入者掛金も出せます。会社の規約がこの改正に合わせて改定されているかは、人事・総務の担当に確かめてください。

iDeCoの掛金の上限(会社員は月2万円、2万3千円など)の説明は、iDeCoは転職したらどうなるに任せます。

iDeCoと併用できるか:マッチング拠出かiDeCoかの選択

企業型DCに入っている会社員は、マッチング拠出とiDeCoを同時に使えません。確定拠出年金法第62条第1項第2号は、iDeCoに入れる国民年金の第2号被保険者から、「企業型年金加入者掛金を拠出する企業型年金加入者」を除いています。iDeCo公式は、マッチング拠出を行っていない(加入者掛金を拠出していない)場合はiDeCoに加入でき、加入者掛金を拠出するか、iDeCoに加入するかは本人が選べるとしています。

iDeCoに入るには、マッチング拠出をしていないことのほか、企業型DCの事業主掛金が拠出限度額の範囲内の各月拠出であることなどが条件です(施行令第34条の2)。事業主掛金が年単位の拠出になっている会社では、マッチング拠出を選ばなくてもiDeCoに入れない場合があります。

iDeCoに入っている人がマッチング拠出を始めると、同法第62条第4項により、加入者掛金を拠出した月の初日にiDeCoの加入者の資格を失い、iDeCoの掛金は出せなくなります。厚生労働省の承認基準は、掛金を拠出するかiDeCoに加入するかを、加入者が自分の意思で決められるものとするよう求めています。

どちらが得か:所得控除は同じ、違いは上限と手数料と口座

国税庁のタックスアンサーNo.1135は、小規模企業共済等掛金控除の対象に、確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金と個人型年金加入者掛金の両方を挙げ、控除額はその年に支払った掛金の全額としています。つまり、マッチング拠出もiDeCoも所得控除の種類は同じで、同じ額を出すなら節税額は同じです。差が出るのは次の点です。

項目マッチング拠出iDeCo(企業型DCと併用)
所得控除小規模企業共済等掛金控除(全額)小規模企業共済等掛金控除(全額)
掛金の上限(現行)事業主掛金との合計が月5.5万円まで月2万円まで(事業主掛金が月3万5千円を超えるときは、超えた額を引く)
掛金の上限(2026年12月から)事業主掛金との合計が月6.2万円まで月6.2万円から事業主掛金を引いた額まで
手数料会社の規約で、事業主と加入者の負担割合を定める国民年金基金連合会に加入時2,829円、掛金納付のつど105円。運営管理機関などの手数料は機関ごとに異なる
口座企業型DCの口座に、事業主掛金と一緒に入る運営管理機関でiDeCoの口座を別に開く
掛金を変える時期原則、12月〜翌年11月の1年に1回1年に1回、いつでも
運用商品会社が提示した商品から選ぶ自分で選んだ運営管理機関の商品から選ぶ

※出典:確定拠出年金法施行令第11条・第36条第3号(現行と2026年12月1日施行版)、国税庁 No.1135、iDeCo公式「よくあるご質問」「各種変更届について」、厚生労働省「企業型年金に係る規約の承認基準等について」。iDeCoの手数料の額は、iDeCo公式が示す国民年金基金連合会分のみです(2026年10月3日確認)。

現行の上限では、事業主掛金が低い会社ほど、マッチング拠出の上限がiDeCoより大きくなります。事業主掛金が月3万5千円以上の会社なら、上限はどちらも同じ額です。2026年12月1日からは、企業型DCのみに入っている人は、マッチング拠出でもiDeCoでも事業主掛金との合計が月6.2万円になるので、上限の差はなくなります。その場合の違いは、手数料・口座の数・運用商品・手続きに移ります。

どちらが自分に向いているかは、会社の規約(手数料の負担、運用商品の数と内容)と、iDeCoの運営管理機関の手数料・商品を並べて決めることになります。掛金を出すことは、そのお金を原則60歳まで引き出せなくする選択でもあります。出す額と時期の判断は、ご自身の家計で行ってください。

節税額はいくら違うか:事業主掛金月2万円の例

次の前提で、現行の上限まで加入者掛金を出した場合の節税額を比べます。上限まで出すことを勧める計算ではなく、上限の違いが節税額にどう出るかを示すものです。

  • 年収600万円の会社員、独身・扶養なし、東京都、40歳未満。企業型DCのみ(確定給付企業年金などはなし)
  • 会社の事業主掛金は月20,000円。マッチング拠出の上限は月35,000円、iDeCoの上限は月20,000円
  • 所得税の限界税率10%(復興特別所得税2.1%込みで計算)、住民税の所得割10%
項目マッチング拠出iDeCo
月の上限(現行)35,000円20,000円
年間の掛金420,000円240,000円
年間の節税額約84,882円約48,504円
2026年12月からの月の上限42,000円42,000円
同じ上限まで出した年間の節税額約101,858円約101,858円

※当サイト試算。節税額=年間の掛金×(所得税の限界税率×1.021+住民税10%)。年収・扶養・社会保険料は他の年収別ページと同じ前提で、掛金で課税所得が下がり税率の区分が変わる場合は、実際の額と異なります。節税額は税が減る額であり、掛金は引き出せないお金です。手数料・運用の損益は含めていません。

現行の上限では、年間の節税額の差は約36,378円になります。ただし、これは「上限まで出す」場合の差で、同じ額(たとえば月20,000円)を出すなら、マッチング拠出でもiDeCoでも節税額は同じです。自分の年収での節税額は、iDeCoの節税額(年収別)で確かめられます。

控除を受ける手続きについて、国税庁は、支払った掛金の証明書などを、確定申告書または年末調整の「給与所得者の保険料控除申告書」に添付するか提示する必要があるとしています。マッチング拠出の掛金を会社がどう年末調整に取り込むかは、会社の案内に従ってください。iDeCoの掛金を年末調整で申告する書き方はiDeCoの年末調整の書き方にあります。

マッチング拠出のデメリット

  • 原則60歳まで引き出せない:老齢給付金は、通算加入者等期間が10年以上あれば60歳から請求できます。期間が短いと請求できる年齢が遅くなります(確定拠出年金法第33条第1項)。原則として、途中で払い戻すことはできません。
  • 運用の結果で元本を下回ることがある:iDeCo公式は、運用商品の中には元本が確保されていないものがあるとしています。企業型DCも、運用商品を自分で選ぶ制度です。
  • iDeCoに入れなくなる:マッチング拠出をしている間は、iDeCoの加入者になれません(法第62条)。会社の運用商品や手数料に納得できなければ、iDeCoにする選択肢があります。
  • 手取りの月収が減る:加入者掛金は、給与から控除して納付できます(法第21条の3)。掛金の分だけ手取りが減り、税が減るのはその一部です。
  • 手数料を加入者が負担することがある:厚生労働省の承認基準は、運営管理機関と資産管理機関の事務費の負担方法を、事業主と加入者の負担割合も含めて規約に書くよう求めています。会社の規約の「事務費の負担」を確かめてください。
  • 掛金の変更は原則年1回:下の「掛金を変えられる時期」を見てください。
  • 退職で続けられない:退職すると企業型DCの加入者の資格を失い、資産の移し先を決める手続きが必要です。企業型DCの自動移換はiDeCoは転職したらどうなるにまとめています。受け取るときの税は企業型DCの受け取り方と税金にあります。

掛金を変えられる時期

施行令第6条第4号は、加入者掛金の額を変更できるのは、企業型掛金拠出単位期間につき1回に限るよう規約で定めることを求めています。企業型掛金拠出単位期間は、12月から翌年11月までの12か月です(施行令第10条の2)。会社が変更できる月を決めている場合は、その月になります。

次の場合は、この1回の制限の例外です(確定拠出年金法施行規則第4条の2)。

  • 事業主掛金の引き上げなどで、事業主掛金との合計が拠出限度額を超えるため、加入者掛金を引き下げるとき
  • 事業主掛金が下がるときに、加入者掛金を引き上げるとき
  • 会社の規約が定める掛金の額の決め方が変わり、これまでの額を出せなくなったとき
  • 加入者掛金を零にするとき(マッチング拠出をやめるとき)と、零から始めるとき
  • 加入者の資格を失うとき

なお、この省令の附則により、2026年11月30日までの間は、加入者掛金を事業主掛金を超えるように初めて引き上げる場合も、この例外に加わります。マッチング拠出をやめてiDeCoに入る手続きに移るときは、先に掛金を零にしたうえで、運営管理機関に手続きを確認してください。iDeCoの掛金の変更・停止はiDeCoは解約できるにあります。

よくある質問

Q. マッチング拠出は、会社員なら誰でもできますか?

A. できません。確定拠出年金法第19条第3項は、企業型年金加入者が自ら掛金を拠出できるのは「政令で定める基準に従い企業型年金規約で定めるところにより」としています。会社の企業型DCの規約に、加入者が掛金を拠出できる定めがあるときだけです。会社に企業型DCがあるか、マッチング拠出を使えるかは、人事・総務の担当に確認してください。

Q. マッチング拠出の掛金は、事業主掛金までと聞きました。今も同じですか?

A. 2026年3月までは、厚生労働省の説明のとおり、加入者掛金は事業主掛金の額を超えられませんでした。この制限は2026年4月1日に撤廃されています。現行は、事業主掛金と加入者掛金の合計が拠出限度額を超えない範囲です。ただし、実際にいくらまで出せるかは、会社の規約が定める掛金の選択肢によります。

Q. マッチング拠出とiDeCoは、両方できますか?

A. できません。確定拠出年金法第62条第1項第2号は、iDeCoに入れる第2号被保険者から「企業型年金加入者掛金を拠出する企業型年金加入者」を除いています。iDeCo公式は、マッチング拠出をしていなければiDeCoに加入でき、加入者掛金を拠出するかiDeCoに加入するかは本人が選べるとしています。

Q. iDeCoに入っている人が、マッチング拠出を始めたらどうなりますか?

A. 同法第62条第4項は、企業型年金加入者掛金を拠出する企業型年金加入者になったときは、加入者掛金を拠出した月の初日に個人型年金加入者の資格を喪失するとしています。iDeCoの掛金は出せなくなります。手続きの詳細は、iDeCoの運営管理機関に確認してください。

Q. マッチング拠出の掛金は、いつでも変えられますか?

A. 原則として、12月から翌年11月までの1年間に1回です(施行令第6条第4号ハ・第10条の2)。ただし、掛金を零にする場合や零から始める場合などは例外で、会社の規約に変更できる月が定められていることもあります。変更の手続きは、会社の人事・総務か企業型DCの運営管理機関に確認してください。

参考・出典

※節税額は、独身・扶養なしの会社員の目安です。年収・家族構成・会社の規約で結果は変わります。掛金の拠出や運用商品の選択を勧めるものではなく、投資の勧誘でもありません。具体的な取り扱いは、勤務先の人事・総務、企業型DCの運営管理機関、税理士等にご確認ください。

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