個人年金保険料控除の年末調整の書き方|税制適格特約が要る・一般の生命保険料との違い・年金支払開始日・いくら戻るか

会社に勤めていて、個人年金保険に入っている方向けの解説です。個人年金保険の保険料が、保険料控除申告書の「個人年金保険料」の欄に書けるのは、条件をそろえた契約だけです。条件は、年金の受取人が保険料を払う本人か配偶者であること、保険料の払込みが年金支払開始日前10年以上であること、年金が60歳以降に始まる10年以上の定期または終身の年金であること、の3つです(所得税法第76条第8項)。生命保険文化センターの案内では、これらの条件に加えて「個人年金保険料税制適格特約」を付けた契約が対象で、特約のない個人年金保険は一般の生命保険料控除になります。この記事では、条件、控除額、申告書の書き方、年収500万円でいくら戻るかを、国税庁と条文で整理します。

個人年金保険料控除になる条件

所得税法第76条第8項と国税庁のNo.1141が定める、新個人年金保険契約等(平成24年1月1日以後に結んだ契約)の条件です。平成23年12月31日以前に結んだ契約(旧個人年金保険契約等)も、同じ3つの要件の定めがあるものが対象です(第76条第9項)。

見るところ原文の内容証券・証明書で確かめること
年金の受取人保険料の払込みをする者、またはその配偶者。国税庁の年末調整のしかたは、個人年金保険料については親族を除くとしている年金受取人の欄が、本人か配偶者か
保険料の払込み年金支払開始日前10年以上の期間にわたって、定期に払い込む払込期間。生命保険文化センターは一時払は不可としている
年金の支払受取人が60歳に達した日以後の日から、10年以上の定期、または生存している間の年金。重度の障害を原因として始まる10年以上の定期年金・終身年金も対象(No.1141の注)年金支払開始日と、年金の種類(確定年金・有期年金・終身年金)
契約した日平成24年1月1日以後が新個人年金、平成23年12月31日以前が旧個人年金控除証明書の適用制度
保険会社の特約条文と国税庁の資料にはこの名前は出てこない。生命保険文化センターは「個人年金保険料税制適格特約」を付加した契約としている証券・控除証明書に特約名や個人年金保険料の欄があるか

出典:e-Gov 所得税法(昭和40年法律第33号)第76条第8項・第9項、国税庁 No.1141「生命保険料控除の対象となる保険契約等」(令和8年4月1日現在法令等)、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」2-3、生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる『生命保険料控除』」、2026年10月2日確認。

国税庁は、支払った保険料が控除の対象になるか否かは、保険会社などから送られてくる証明書で確認できるとしています(No.1141)。条件に迷う契約でも、まず控除証明書に「個人年金保険料」の金額が載っているかを見るのが確実です。

個人年金保険に傷害特約や疾病特約が付いている場合、その特約部分の保険料は個人年金保険料に含めません(所得税法第76条第3項、年末調整のしかた)。個人年金保険に入るべきかどうかは、個人年金保険は必要?老後の不足額を計算するで確かめられます。

条件に合わない個人年金は、一般の生命保険料控除

「個人年金」という名前の保険でも、控除の区分は契約の中身で決まります。生命保険文化センターの案内で、区分が分かれるものを並べます。

契約控除の区分案内の内容
税制適格特約を付加した個人年金保険個人年金保険料控除年金受取人・払込期間・年金の支払の条件をすべて満たす契約
税制適格特約を付加していない個人年金保険一般の生命保険料控除特約を付加していない場合は一般の生命保険料控除の対象
変額個人年金保険一般の生命保険料控除個人年金保険料控除の対象にならない(死亡給付金が増減するため)

出典:生命保険文化センター「税金の負担が軽くなる『生命保険料控除』」、同「変額個人年金保険の税金の取扱いは?」(生命保険Q&A)、2026年10月2日確認。ほかの会社の商品は、手元の控除証明書で確認してください。

国税庁の年末調整のしかたは、支払った保険料の区分を他の区分に振り替えることはできないとしています。新個人年金保険料を新生命保険料に含めるといった書き方は、控除額の計算の確認項目で誤りとされています。申告書には、控除証明書に書かれた区分のとおりに書きます。

区分によって、使える上限も変わります。一般の生命保険料の新制度には、令和8年分から23歳未満の扶養親族がいる場合の特例(上限6万円)がありますが、この特例は一般の新生命保険料だけで、個人年金保険料は特例のない式で計算します(年末調整のしかた)。一般の生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料の3つの控除額の合計が12万円を超えるときは、12万円が上限です(所得税法第76条第4項)。

控除額(新制度・旧制度)

個人年金保険料控除の控除額は、年間の支払保険料(剰余金や割戻金を受けたときは差し引いた額)に応じて、次のとおりです。

契約した時期年間の支払保険料控除額(所得税)
新(平成24年1月1日以後)2万円以下全額
新2万円超4万円以下支払保険料×1/2+1万円
新4万円超8万円以下支払保険料×1/4+2万円
新8万円超一律4万円
旧(平成23年12月31日以前)2万5千円以下全額
旧2万5千円超5万円以下支払保険料×1/2+1万2,500円
旧5万円超10万円以下支払保険料×1/4+2万5千円
旧10万円超一律5万円

出典:国税庁 No.1140「生命保険料控除」、「令和8年分 年末調整のしかた」計算式Ⅰ・Ⅲ、所得税法第76条第3項、2026年10月2日確認。所得税の控除額です。

住民税の控除額は、新制度の個人年金保険料で上限28,000円です(生命保険文化センター)。年間の支払保険料が8万円を超えると、所得税の控除額は40,000円で頭打ちになります。

新制度と旧制度の両方に個人年金保険料があるときは、国税庁のNo.1140が次のように書いています。旧個人年金保険料の年間支払保険料等が6万円を超えるなら、旧について計算した金額(最高5万円)。6万円以下なら、新と旧をそれぞれ計算した金額の合計(最高4万円)。ただし、この合計は、一般の生命保険料・介護医療保険料と合わせて12万円が上限です。

いくら戻るか(年収500万円の例)

新制度の個人年金保険料だけを払っていて、ほかの生命保険料控除がない場合の目安です。戻る額は、所得税の還付(年末調整で精算)と、翌年6月からの住民税の軽減(年額)の合計で見ます。

年間の保険料控除額(所得税)戻る額
年2.4万円(月2,000円)22,000円所得税1,123円+住民税1,800円
年4.8万円(月4,000円)32,000円所得税1,633円+住民税2,600円
年9.6万円(月8,000円)40,000円所得税2,042円+住民税2,800円

年収500万円(額面)の場合。東京都・40歳未満・配偶者控除や扶養控除なしの概算で、tools/nenmatsu-kanpu と同じ前提です。新制度の契約で計算しています。

年間の保険料が9.6万円(月8,000円)のとき、年収によって戻る額は次のように変わります。

年収(額面)所得税の還付住民税の軽減(年額)
300万円2,042円2,800円
400万円2,042円2,800円
500万円2,042円2,800円
600万円4,084円2,800円
800万円8,168円2,800円

年間の保険料9.6万円(控除額は所得税40,000円・住民税28,000円)の場合。前提は上の表と同じです。実際の額は、他の所得控除や住んでいる自治体によって変わります。

戻る額を自分の年収と他の控除を含めて確かめるには、年末調整でいくら戻るか 計算ツールが使えます。

申告書の個人年金保険料の欄の書き方

個人年金保険料は、「給与所得者の保険料控除申告書」の「生命保険料控除」の「個人年金保険料」の欄に書きます。国税庁の記載例(令和8年分)で、この欄に並ぶ項目は次のとおりです。保険会社等の名称、保険等の種類などは、生命保険料控除証明書や契約証書を参考に書きます。

欄の項目書くこと記載例
保険会社等の名称証明書や契約証書を見て書く●●生命
保険等の種類同上○○年金
保険期間又は年金支払期間同上30年
保険等の契約者の氏名契約者の氏名山川 太郎
保険金等の受取人の氏名と支払開始日年金の受取人の氏名。その下の「支払開始日」の欄に年金の支払開始日山川 太郎、R23・7・1
新・旧の区分証明書等に記載されている適用制度の新旧区分に○●●生命は「新」、××生命は「旧」
あなたが本年中に支払った保険料等の金額分配を受けた剰余金等を引いた後の金額新30,000円、旧90,000円

出典:国税庁「令和8年分 各種控除について(給与所得者用)」保険料控除申告書の記載例(pdf/307.pdf)「2 生命保険料控除額の記入」の個人年金保険料の行、2026年10月2日に記載例の画像で確認。

記載例は、保険金等の受取人は、あなた又はあなたの配偶者や親族(個人年金保険料については親族を除く)であることが必要としています。ソニー生命の案内では、申告書の受取人欄に書く名前は、契約内容の照会画面の「受取人情報」の欄で確かめられます。

記載例には、新と旧の両方がある場合の計算も載っています。新30,000円と旧90,000円の例です。

欄計算金額
⑥(新)30,000円×1/2+10,000円(計算式Ⅰ)25,000円
⑦(旧)90,000円×1/4+25,000円(計算式Ⅲ)47,500円
⑧25,000円+47,500円。最高40,000円40,000円
㋩(控除額)⑦と⑧のいずれか大きい金額47,500円

出典:同記載例の「❹個人年金保険料」の計算例、2026年10月2日に画像で確認。旧の年間支払保険料が6万円を超えているので、旧について計算した金額が控除額になります。

控除証明書の扱い

国税庁の年末調整のしかたは、旧生命保険料以外の保険料は、金額の多少にかかわらず、すべて証明書類を保険料控除申告書に添付して提出または提示するとしています。9,000円以下なら省ける扱いがあるのは、旧生命保険料です。所得税法第76条第1項は、旧生命保険料から旧個人年金保険料を除いて定義しているので、旧個人年金保険料は金額にかかわらず証明書類が必要になります。

証明書類の交付を請求中などで確認できない場合でも、翌年1月末日までに提出または提示することを条件に、生命保険料の控除をして年末調整を行ってもよいとされています。扱いは勤務先によって異なることがあるので、先に勤務先の担当部署に確認してください。

電子データで出す方法は年末調整のマイナポータル連携とはにまとめています。

よくある質問

Q. 個人年金保険なら、どれでも「個人年金保険料」の欄に書けますか?

A. 書けません。生命保険文化センターは、年金受取人が契約者(保険料負担者)またはその配偶者、保険料払込期間が10年以上などの条件をすべて満たし、「個人年金保険料税制適格特約」を付加した契約の保険料が個人年金保険料控除の対象としています。特約を付加していない個人年金保険は、一般の生命保険料控除の対象になります。どちらの区分かは、保険会社から届く控除証明書に書かれています。

Q. 変額個人年金保険は、個人年金保険料控除になりますか?

A. 生命保険文化センターの案内では、変額個人年金保険の払込保険料は、払い込んだ年の一般の生命保険料控除の対象で、個人年金保険料控除の対象にはなりません。理由は、死亡給付金が増減するためで、個人年金保険料控除の対象になる要件として、保険料の払込みに応じて死亡給付金が逓増する必要があるとされています(所得税施行令第211条)。

Q. 年金の受取人を子や親にしている場合は、どうなりますか?

A. 所得税法第76条第8項は、年金の受取人を、保険料の払込みをする者またはその配偶者(これらの者が生存している場合のいずれか)とすることを要件にしています。国税庁の年末調整のしかたでも、個人年金保険料については、受取人から親族を除くと書かれています。受取人が子や親になっている契約は、個人年金保険料控除の条件に当たらないので、どの区分で控除できるかは控除証明書で確認してください。

Q. 一時払の個人年金保険は対象になりますか?

A. 所得税法第76条第8項第2号は、保険料の払込みを年金支払開始日前10年以上の期間にわたって定期に行うことを要件にしています。生命保険文化センターの案内も、保険料払込期間が10年以上であること(一時払は不可)としています。

Q. 新制度と旧制度の個人年金保険の両方に入っています。控除額は合計できますか?

A. 国税庁のNo.1140は、旧個人年金保険料の年間支払保険料等が6万円以下なら、新・旧それぞれで計算した控除額の合計(最高4万円)、6万円を超えるなら、旧個人年金保険料について計算した金額(最高5万円)が控除額になるとしています。申告書の記載例には、新30,000円と旧90,000円の場合に、旧の47,500円を控除額とする計算が載っています。

Q. 個人年金保険に傷害特約や疾病特約が付いています。その保険料も含めますか?

A. 含めません。国税庁の年末調整のしかたは、個人年金保険契約等に付された傷害特約・疾病特約などの保険料のうち、その特約部分を個人年金保険料に含めて控除額の計算をしていないかどうかを、確認項目に挙げています。

Q. 控除証明書がまだ届いていなくても、年末調整に出せますか?

A. 国税庁の年末調整のしかたは、証明書類の交付を請求中などで確認できない場合でも、翌年1月末日までに提出または提示することを条件に、生命保険料の控除をして年末調整を行ってもよいとしています。実際の締め切りや扱いは勤務先によって異なるので、先に勤務先の担当部署に確認してください。

参考・出典

※国税庁、条文、生命保険文化センター、ソニー生命の公式サイトに書かれている範囲の整理です。「個人年金保険料税制適格特約」の扱いは保険会社の案内によるため、保険の種類や契約時期、会社で変わることがあります。個別の事情や、勤務先の年末調整の扱いは、届いた控除証明書、保険会社、勤務先の担当部署、税務署でご確認ください。

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