NISAは年末調整に書く?配偶者控除・扶養の所得に入るか、特定口座・一般口座との違い、会社に知られるか、NISA口座の変更の時期
NISA口座の売却益や配当は非課税なので、年末調整で申告するものはなく、配偶者控除・扶養控除の判定に使う合計所得金額にも入りません。国税庁は、法令で非課税とされる所得は、扶養親族や控除対象配偶者の判定の合計所得金額に含めないと説明しています。入るのは、確定申告をした特定口座の分と、一般口座の分です。令和8年分の基準は合計所得金額62万円以下。年末調整の時期に合わせて、場面ごとの扱い、会社に知られるか、NISA口座の金融機関を変える手続の時期を、原文で確かめた範囲でまとめます。
NISAは年末調整に書く?口座の種類ごとの早見表
年末調整は、会社が毎月の給与から引いた所得税と、1年間に納めるべき税額との差を精算する手続です。国税庁の手順では、1年間の給与の合計額から計算を始め、そこから扶養控除などの所得控除を差し引きます(タックスアンサーNo.2662)。株や投資信託の売却益・配当は、この手順に出てきません。
NISAが関わるのは、控除の申告書に書く合計所得金額の見積額です。扶養控除等申告書や、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書などに、あなた自身や配偶者の見積額を書きます。そこにNISAの利益を足すかどうかが、この記事の問いです。
| 口座・場面 | 合計所得金額での扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| NISA口座の売却益・配当 | 入らない(非課税) | 租税特別措置法第9条の8・第37条の14第1項 |
| 特定口座(源泉徴収あり)で申告不要を選んだ分 | 入らない | 国税庁No.1180のQ&A |
| 特定口座で確定申告をした分 | 入る | 国税庁「合計所得金額の計算について」 |
| 一般口座の売却益 | 入る(除く記載がない) | 国税庁「合計所得金額の計算について」 |
| NISA口座の売却損 | 損失として引けない(ないものとみなす) | 租税特別措置法第37条の14第2項 |
※2026年10月3日に、国税庁・e-Gov法令検索・金融庁の原文で確認しました。配当の「申告不要」の扱いも、特定口座の売却益と同じく、確定申告をしないことを選んだ分が対象です。新NISAの確定申告そのものが必要かどうかは、新NISAは確定申告が必要?で説明しています。
租税特別措置法は、非課税口座に設けた口座で受け取る配当等と、売った譲渡による事業所得・譲渡所得・雑所得について、「所得税を課さない」と定めています(第9条の8、第37条の14第1項)。非課税口座は、その年の1月1日で18歳以上の人が、口座開設届出書を出して開く口座です(同条第5項第1号)。
配偶者控除・扶養控除の所得に入るか:令和8年分の基準と例
国税庁のタックスアンサーNo.1180のQ&Aと、年末調整Q&A問4は、同じことを書いています。扶養親族や控除対象配偶者などに該当するかを判定する合計所得金額には、所得税法その他の法令の規定によって非課税とされる所得は含まれません。問4では、遺族年金を例に挙げています。NISA口座内の利益は、租税特別措置法に基づく非課税なので、この「その他の法令」の非課税にあたります。
| 控除 | 合計所得金額 | 給与だけなら収入 |
|---|---|---|
| 扶養控除(16歳以上) | 62万円以下 | 136万円以下 |
| 配偶者控除 | 62万円以下 | 136万円以下 |
| 配偶者特別控除 | 62万円超133万円以下 | ― |
※令和8年分の基準(国税庁No.1180・No.1191・No.1195)。令和8年12月1日に施行され、令和8年分から適用される金額です。令和7年分は58万円以下、給与だけなら123万円以下でした。e-Govで見られる現行条文(2026年10月1日時点)の所得税法第2条第1項第33号・第34号は、施行前の58万円のままです。配偶者控除・配偶者特別控除には、控除を受ける人の合計所得金額の上限もあります。
配偶者のパートの給与収入が130万円のときの例です。給与所得は、給与収入から給与所得控除を引いて求めます。令和8年分の給与所得控除の最低額は74万円なので、給与所得は56万円です(国税庁No.1180のQ&A)。
| 場面 | 合計所得金額 | 62万円以下か |
|---|---|---|
| パートの給与収入130万円だけ | 56万円 | 以下(扶養・配偶者控除の対象) |
| 上に加えて、NISA口座の売却益30万円 | 56万円(NISAの分は足さない) | 以下(扶養・配偶者控除の対象) |
| 上に加えて、特定口座(源泉徴収あり)の売却益10万円を申告不要にした | 56万円(申告不要の分は足さない) | 以下(扶養・配偶者控除の対象) |
| 上に加えて、特定口座(源泉徴収あり)の売却益10万円を確定申告した | 66万円 | 超える(配偶者特別控除の範囲) |
| 上に加えて、一般口座の売却益10万円 | 66万円 | 超える(配偶者特別控除の範囲) |
※当サイトの試算。売却益は費用を引いたあとの金額とみなし、他に所得はない前提です。「超える」の行は、配偶者の合計所得金額が62万円超133万円以下に入るため、配偶者特別控除の範囲になります。控除額は納税者本人の合計所得金額でも変わります。
NISA口座の売却益が30万円あっても、合計所得金額は変わりません。変わるのは、特定口座の分を確定申告したときや、一般口座の売却益があるときです。19歳以上23歳未満の子の特定親族特別控除は、別の基準があります(特定親族特別控除・大学生の扶養)。62万円の改正は扶養・配偶者の所得要件が62万円にで説明しています。
ここまでは所得税の扶養の話です。健康保険の被扶養者の判定は別の制度で、基準も加入先ごとに決まっています。パートの年収の目安は扶養範囲内で働くパート・配偶者の年収管理術をご覧ください。
特定口座・一般口座だと入るのはどんなとき
上場株式等の取引には、一般口座・特定口座・非課税口座(NISA)があります。扶養の判定に入るかどうかは、口座の名前ではなく、その所得を確定申告したかで分かれます。
- 特定口座(源泉徴収あり)の売却益:確定申告をしないことを選んだ分は、合計所得金額から除かれます(国税庁No.1180のQ&A)。申告不要を選んだ口座の利益は、扶養の判定に使う所得に足しません。
- 上場株式等の配当:同じく、確定申告をしないことを選んだ配当等は、合計所得金額に含まれません(国税庁「合計所得金額の計算について(令和8年分)」)。
- 確定申告をした分:特定口座の損失を翌年以後に繰り越すために申告した場合などは、申告した所得が合計所得金額に入ります。上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除を受けている場合も、合計所得金額は繰越控除を適用する前の金額で見ます。
- 一般口座の売却益:国税庁の説明で除くと書かれているのは、確定申告をしないことを選択した特定口座の分などで、一般口座の分を除く記載はありません。申告分離課税の一般株式等に係る譲渡所得等として、合計所得金額に入ります。なお、給与所得者の「給与以外の所得が20万円以下なら申告不要」(確定申告が必要な会社員のケース)は所得税の申告の要否の話で、国税庁の合計所得金額の説明に、これを除く記載は見当たりません。
つまり、NISA口座の利益は、いくらあっても扶養の判定に使う合計所得金額に足されません。他に所得がなければ、給与などの所得だけで決まります。特定口座や一般口座も使っている場合は、その口座の分を申告するかどうかで変わります。どの口座の分を申告するかの目安は株の確定申告は必要?必要な人・不要な人をご覧ください。
あなた自身の合計所得金額の見積額(基礎控除申告書に書く額)は、国税庁の注意事項で、給与以外の所得がある場合はそれらを合計して書くよう案内されています。NISA以外の口座で、申告する株の所得があるときは、その分を足して書きます。書き方は基礎控除申告書・配偶者控除等申告書の書き方でご確認ください。
NISAをしていると会社に知られるか
年末調整で会社に出す書類は、扶養控除等(異動)申告書、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書など、保険料控除申告書などです。国税庁の令和8年分の年末調整の資料(給与所得者用・源泉徴収義務者用のPDF 18本)の文字として読み取れる部分を全文で調べると、「NISA」という語は1回も出てきません。年末調整の手順や申告書に、NISA口座の有無や利益を書く欄は見当たりませんでした。
NISA口座の配当・売却益は申告するものがないので、確定申告書にも載りません。なお、確定申告で申告した株の配当や売却益が、住民税の通知(会社が給与から引く住民税の通知を含む)にどう反映されるかは、この記事では確かめていません。申告した場合は、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。
NISAで売って損が出たとき
非課税の裏側として、損失の扱いにも決まりがあります。租税特別措置法第37条の14第2項は、非課税口座内の上場株式等を売った収入が取得費などに満たないときの不足額を、所得税に関する法令の適用上「ないものとみなす」と定めています。国税庁のタックスアンサーNo.1474にも、NISA口座内の譲渡損失は損益通算も繰越控除もできないと書かれています。
年末調整は給与の精算なので、損失を申告する場でもありません。NISA口座の損失は、確定申告をしても他の利益から引けないため、申告のための手続は必要ありません。
NISA口座内の売却益には所得税がかかりません。また、金融庁の案内では、非課税保有限度額は買付残高(簿価残高)で管理され、売却するとその簿価分の非課税枠を翌年以降に再利用できます。
NISA口座の金融機関を変える手続の時期
NISA口座を開く金融機関は、年単位で変えられます。国税庁と金融庁の案内に沿って整理します。
- 届出の期間:変えたい年(その年分のNISA口座を設けたい年)の前年10月1日から、その年の9月30日までに、いまの金融機関へ「金融商品取引業者等変更届出書」を出します。令和9年分から変えるなら、2026年10月1日〜2027年9月30日です。
- 先に買付をしていると変えられない:届出を出す日以前に、変更前の金融機関のNISA口座で、その年分の「つみたて投資枠」または「成長投資枠」に上場株式等を受け入れていると、その年分は変更できません。
- 書類の流れ:いまの金融機関から「勘定廃止通知書」が出ます。新しく開く金融機関に、「非課税口座開設届出書」とその勘定廃止通知書を提出します。
- 同じ年に別々の金融機関は使えない:つみたて投資枠と成長投資枠を、別々の金融機関で使うことはできません。
- 氏名・住所・マイナンバーが変わったとき:NISA口座を開いているすべての金融機関に「非課税口座異動届出書」を出します。
非課税保有限度額は、国税庁が一括で管理しています(金融庁)。年末調整の申告書は会社に出すもので、金融機関の変更の手続とは別のものです。
よくある質問
Q. NISAの利益は、年末調整で申告する必要がありますか?
A. 年末調整は、会社が1年間の給与から源泉徴収した所得税と、その人が納めるべき税額との差額を精算する手続で、国税庁の説明では計算の出発点が1年間の給与の合計額です(タックスアンサーNo.2662)。NISA口座の売却益や配当は、租税特別措置法で所得税を課さないと定められていて(第9条の8・第37条の14第1項)、国税庁の令和8年分の年末調整の資料にNISAを書く欄は見当たりませんでした。
Q. NISAの利益は、配偶者控除や扶養控除の所得に入りますか?
A. 入りません。国税庁は、扶養親族や控除対象配偶者などに該当するかを判定する合計所得金額には、法令の規定によって非課税とされる所得は含まれないと説明しています(年末調整Q&A問4、タックスアンサーNo.1180のQ&A)。NISA口座内の配当・譲渡益は、その非課税とされる所得にあたります。令和8年分の基準は、合計所得金額62万円以下です。
Q. 特定口座(源泉徴収あり)の利益は、扶養の判定に入りますか?
A. 確定申告をしないことを選んだ分は入りません。国税庁は、特定口座の源泉徴収選択口座内の株式等の譲渡による所得や、上場株式等の配当で、確定申告をしないことを選択したものは、扶養控除が受けられるかを判定する合計所得金額から除かれると説明しています(タックスアンサーNo.1180のQ&A)。損失を繰り越したいなどの理由で確定申告をした分は、合計所得金額に入ります。
Q. 一般口座の利益は、扶養の判定に入りますか?
A. 入ります。国税庁の「合計所得金額の計算について(令和8年分)」は、合計所得金額から除くものとして、確定申告をしないことを選択した特定口座(源泉徴収選択口座)の分などを挙げていますが、一般口座の分を除く記載は見当たりません。たとえば給与所得が56万円の配偶者に、一般口座の売却益が10万円あると、合計所得金額は66万円で、令和8年分の62万円を超えます。
Q. NISAをしていることは、会社に知られますか?
A. 国税庁の令和8年分の年末調整の資料(給与所得者用・源泉徴収義務者用のPDF18本)を全文で調べたところ、NISAという語は出てきませんでした。会社に出す年末調整の申告書に、NISA口座の欄は見当たりません。ただし、確定申告で申告した株の配当や売却益が住民税の通知にどう反映されるかは、この記事では確かめていないため、お住まいの市区町村の案内でご確認ください。
Q. NISAで売って損をしたとき、年末調整や確定申告で他の利益と相殺できますか?
A. できません。租税特別措置法第37条の14第2項は、非課税口座内の上場株式等を売った不足額を、所得税に関する法令の適用上「ないものとみなす」と定めています。国税庁のタックスアンサーNo.1474にも、NISA口座内の譲渡損失は損益通算も繰越控除もできないと書かれています。
Q. NISA口座の金融機関を変えたいとき、いつ手続きしますか?
A. 変えたい年の前年10月1日から、その年の9月30日までに、いまの金融機関へ「金融商品取引業者等変更届出書」を出します。令和9年分から変えるなら、2026年10月1日〜2027年9月30日です。いまの金融機関で、その年分にすでに買付をしていると、その年分は変更できません(国税庁・金融庁)。
Q. NISAの利益は、健康保険の扶養にも影響しませんか?
A. この記事で調べたのは、税法上の扶養(所得税)です。健康保険の被扶養者の判定は別の制度で、基準も加入先ごとに定められているため、加入している健康保険組合や協会けんぽの案内でご確認ください。
参考・出典
- 国税庁 タックスアンサー:No.1180 扶養控除(Q&A)・No.1191 配偶者控除・No.1195 配偶者特別控除・No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除・No.2662 年末調整のしかた(2026年10月3日確認)
- 国税庁 令和8年分 年末調整のしかた(合計所得金額の計算について・年末調整Q&A・年末調整を受ける際の注意事項)
- 国税庁 NISA口座の新規開設又は変更に関する手続等について・金融庁 NISA特設ウェブサイト よくある質問
- e-Gov法令検索:租税特別措置法(第9条の8・第37条の14)・所得税法(第2条・第9条)
※2026年10月3日現在に国税庁・金融庁・e-Govで確認した内容で、制度や基準額は変わることがあります。令和8年分の62万円は国税庁の案内に基づきます。個別の事情は、税務署や、お勤め先の年末調整の担当にご確認ください。投資の勧誘や、金融商品・金融機関の推奨ではありません。