年末調整の電子化は義務?令和9年の義務化は本当か・従業員は紙で出せる・電子で出す方法・会社が対応していないとき

会社に勤めていて、年末調整の電子化が義務になるのか気になっている方向けの解説です。所得税法は、従業員が申告書の提出に代えてデータで提供することができると定めており、国税庁のFAQは書面で提出しても差し支えないとしています。「令和9年から義務化」という記載は、確認した国税庁・財務省・e-Govの原文には見当たりませんでした。この記事では、その原文を示したうえで、従業員が紙で出せるか、電子で出す方法、会社が対応していないときの扱いを整理します。

電子化は義務?令和9年の義務化は本当か

年末調整の電子化について、確認した原文は次のとおりでした。いずれも、電子化を義務とする定めは書かれていません。

確認した原文書かれている内容出典
所得税法の条文従業員は、会社が一定の要件を満たしている場合に、申告書の提出に代えて、記載事項をデータで提供することが「できる」所得税法198条2項
国税庁のFAQ必ずしもデータにより提供しなければならないわけではなく、書面で提出しても差し支えないFAQ 問1-8(令和8年10月改訂版)
令和8年度税制改正の大綱年末調整の電子化に関する項目は見当たらない財務省(令和7年12月26日閣議決定)
年末調整のしかた(令和8年分)「令和9年から変わる事項」は、源泉徴収税額表の改正や防衛特別所得税の創設等。電子化を義務とする記載は見当たらない国税庁

出典:e-Gov法令検索 所得税法第198条2項、国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」令和8年10月改訂版、財務省「令和8年度税制改正の大綱」、国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」、2026年10月2日確認。

第198条の本文は、e-Govで取得できる施行前の版(2030年6月19日施行分まで)でも、現行と同じ内容でした。つまり、e-Govに載っている改正のなかに、第198条の「できる」を義務に変えるものは見当たりません。

「令和9年に義務化」という話は、確認した原文では確かめられませんでした。噂の出どころは、今回確認した範囲ではわかりません。今後の改正の予定も、確認した原文には書かれていないので、予想はここでは書きません。最新の扱いは、国税庁の「年末調整手続の電子化に向けた取組について」のページと、勤務先の給与担当でご確認ください。

従業員は紙で出せるか

所得税法第198条2項は、書面での提出に代えて、データで提供することができるという書き方です。国税庁の「年末調整のしかた(令和8年分)」も、扶養控除等(異動)申告書について「一定の要件の下で、書面による提出に代えて電磁的方法による提供を受けることができます」と書いています。国税庁のFAQ(問1-8)は、年末調整関係書類を従前どおり書面で提出しても差し支えないとしています。

状況原文に書かれている内容根拠
書面で出したい必ずしもデータで提供しなければならないわけではなく、書面で提出しても差し支えない国税庁FAQ 問1-8
会社が電子で出すよう指示している従業員が拒めるかどうかは、確認した原文に書かれていない。なお、会社がデータで提供させるにあたり、従業員から事前に承諾を受ける必要はないとされている国税庁FAQ 問2-13、「電子化へ向けた準備」
控除証明書はデータで受け取ったが、会社は書面を求めている控除証明書等をデータで提供できるのは申告書もデータで提供できる場合に限られる。書面で出すときは、QRコード付控除証明書を作って書面で出力し、提出または提示する国税庁FAQ 問3-15

出典:国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」令和8年10月改訂版、「年末調整手続の電子化へ向けた準備」、2026年10月2日確認。

会社が電子で出すよう指示しているときに、従業員が書面での提出を求められるかどうかは、今回確認した国税庁の原文には従業員向けには書かれていません。書面で出したい事情があるときは、会社の給与担当に、どちらの方法で受け付けているかを先に聞いておくと安心です。

電子で出す方法

電子で出すときは、国税庁が無償で提供している「年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)」を使う方法があります(FAQ 問5-4)。ただし、どのソフトウェアを使うか、どんな方法で会社に提供するかは、会社が決めます。国税庁のFAQ(問5-3・問3-7)は、年調ソフトを使うかどうかを含め、具体的な実施方法は勤務先に問い合わせるよう案内しています。

  1. 会社に、データで出せるか、どのソフトウェアで作るか、いつから受け付けるかを確認します。
  2. 会社の指示に合わせて、年調ソフトなどを入手します。
  3. 保険料控除証明書などのデータを、保険会社等のサイトやマイナポータル連携で取得します。
  4. ソフトで申告書データを作り、会社が定めた方法(メール等)で提供します。
項目原文に書かれている内容根拠
費用年調ソフトは国税庁が無償で提供する。ダウンロードや連携時の通信料は利用者負担国税庁FAQ 問5-4
令和8年分の対応令和8年12月1日以後に行われる令和8年分の年末調整に対応。正式版は令和8年10月1日公開国税庁「年末調整手続の電子化に向けた取組について」
対応OSWindows 11、macOS 15以降、Android 13以降、iOS 18.0以降国税庁FAQ 問5-5
入手先Windows版はMicrosoft Store、Mac版・iOS版はApp Store、Android版はGoogle Play Store。ストアから入手できないパソコンは国税庁のページから国税庁FAQ 問5-6
パソコンが無いときスマートフォン版があり、スマートフォンがあればデータで提供できる国税庁FAQ 問3-4
会社に提供する方法メール等で送信、USBメモリ等に保存して提供、社内LANの領域に保存、社内LANにログインして送信のいずれか。メール等やUSBメモリで出すときは、電子署名を付けるかパスワードを設定する。具体的な方法は勤務先に確認国税庁FAQ 問5-14
年調ソフトの使用が必須か必須ではない。電子化に対応した民間のソフトウェアでも電子化できる国税庁FAQ 問5-11
書面で出したいとき年調ソフトは、作成した申告書を書面で出力することもできる国税庁FAQ 問5-16

出典:国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」令和8年10月改訂版、「年末調整手続の電子化に向けた取組について」、2026年10月2日確認。

会社がデータで受け取るには、所得税法施行令第319条の2が定める要件(提供を適正に受けられる措置など)を満たす必要があります。データでの提供の方法と、提供した人の氏名を明らかにする措置(電子署名を付けるか、会社から通知されたIDと暗証符号で送信するか)は、財務省令(所得税法施行規則第76条の2)が定めています。

マイナポータル連携で控除証明書を取る方法は、年末調整のマイナポータル連携のやり方へどうぞ。

会社が対応していないとき

国税庁のFAQ(問1-7)は、従業員が年末調整の書類をデータで提供しようとするときは、データでの提供がいつから可能になるかを勤務先に確認する必要があるとしています。データを使うには、勤務先の給与システムの改修などが必要になるためです。会社が対応していない場合や、書面で出すよう言われた場合は、次のように整理されています。

状況原文に書かれている内容根拠
会社が電子化していない・書面で出すよう言われた必ずしもデータで提供しなければならないわけではなく、書面で提出しても差し支えない国税庁FAQ 問1-8
書面で出すが、控除証明書はデータで受け取ったQRコード付控除証明書を作って書面で出力し、提出または提示する国税庁FAQ 問3-15
保険会社がデータ交付に未対応書面の控除証明書の内容をソフトに手入力して申告書データを作る。書面の控除証明書は、申告書データの提出の際に提出または提示する国税庁FAQ 問3-11

出典:国税庁「年末調整手続の電子化及び年調ソフト等に関するよくある質問(FAQ)」令和8年10月改訂版、2026年10月2日確認。

FAQ(問5-3)は、年末調整の具体的な実施方法については勤務先に問い合わせるよう案内しています。いつから電子で受け付けるのか、書面なら提出の締め切りはいつかは、会社からの案内でご確認ください。

よくある質問

Q. 年末調整の電子化は、令和9年から義務になりますか?

A. 確認した原文には、令和9年から義務にするという記載は見当たりませんでした。所得税法第198条2項は、従業員が申告書の提出に代えてデータで提供「することができる」と定めています。国税庁のFAQ(問1-8)は、年末調整手続は必ずしもデータで提供しなければならないわけではなく、従前どおり書面で提出しても差し支えないとしています。令和8年度税制改正の大綱には年末調整の電子化の項目がなく、国税庁の「年末調整のしかた(令和8年分)」の「令和9年から変わる事項」にも、電子化を義務とする記載はありません。今後の改正の予定は、確認した原文には書かれていません。

Q. 会社が電子化に対応していないのは問題ですか?

A. 確認した原文に、会社が電子化に対応しないことを問題とする記載は見当たりませんでした。国税庁のFAQ(問1-7)は、従業員が年末調整の書類をデータで提供しようとするときは、データでの提供がいつから可能になるかを勤務先に確認する必要があるとしています。データを使うには、勤務先の給与システムの改修などが必要になるためです。

Q. パソコンを持っていなくても、電子で出せますか?

A. 国税庁のFAQ(問3-4)は、年調ソフトにはスマートフォン版(Android・iOS)があるので、スマートフォンがあれば年末調整申告書と控除証明書等をデータで提供できるとしています。マイナポータル連携を使う場合などは、マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンが必要です。

Q. 保険会社が控除証明書のデータ交付に対応していません。

A. 国税庁のFAQ(問3-11)は、書面の保険料控除証明書のみが交付されたときは、書面の内容を年末調整申告書作成用のソフトウェアに手入力して保険料控除申告書データを作り、勤務先に提供するとしています。このとき書面の控除証明書は、申告書データの提出の際に勤務先へ提出するか提示します。

Q. 年調ソフトを使わなければ、電子で出せませんか?

A. 国税庁のFAQ(問5-11)は、年調ソフトは年末調整手続の電子化のためのツールのひとつで、電子化に対応した民間のソフトウェアでも電子化できるとしています。どのソフトウェアを使うかは勤務先の指示によるので、国税庁のFAQ(問5-3・問3-7)は勤務先への確認を案内しています。

Q. 電子で出すと、どんな良さがありますか?

A. 国税庁のFAQ(問3-2)は、控除証明書等データの内容が申告書に自動で転記されること、控除額が自動計算されること、申告書データをメール等で送信できるのでテレワークでも郵送が必要ないこと、翌年以降は前年のデータを使って住所・氏名・生年月日などの入力を省略できることを挙げています。

参考・出典

※所得税法・国税庁・財務省に書かれている範囲の整理です。電子化の時期や提出方法は会社によって異なります。個別の事情は、勤務先の給与担当、税務署、税理士にご確認ください。

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