領収書がなくても経費にできるのか

領収書をもらえなかった、なくした、クレジットカードで払って紙が出なかった。そんな支出も、 帳簿に記録し、業務のための支出だと説明できる形で残しておけば経費にできます。 何を残すか、カード払いの仕訳、年末をまたぐ引落しの扱い、インボイスで帳簿だけで済む場合を、国税庁の原文に沿ってまとめました。

先に結論

領収書がないとき、何を残しておくか

国税庁 No.2080 は、帳簿に記載する事項を「取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額、日々の売上げ・仕入れ・経費の金額等」としています。 次の表は、その事項を後から説明できるようにするための記録の例です。

支払い方法残す記録注意
現金(領収書なし)出金伝票・メモ(日付・相手・金額・用途)その日のうちに書く
クレジットカードカード利用明細+用途のメモ明細に用途は出ない
交通系IC利用履歴+行き先・用件のメモ私用の移動を混ぜない
銀行振込通帳・ネットバンキングの明細請求書も一緒に保存

支出の一部が私用を含む場合は、事業で使った分だけが経費です。No.2210 は、家事関連費のうち必要経費になるのは 「取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます」としています。 科目ごとの扱いは個人事業主の経費一覧と家事按分で解説しています。

クレジットカード払いの仕訳と、年末をまたぐ引落し

複式簿記では、カードを使った日に「経費が増え、後で払う義務ができた」と記録し、引落し日に「その義務が消え、口座の預金が減った」と記録します。 この「後で払う義務」の科目が未払金です。事務用品12,000円をカードで買い、翌月10日に引落しされた場合の例です。

日付借方 / 貸方金額
カード利用日消耗品費 / 未払金12,000円
引落し日未払金 / 普通預金12,000円

12月に使って翌年1月に引き落とされる分は、使った年の経費です。No.2210 は、必要経費となる金額を 「その年において債務の確定した金額」とし、「支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります」としています。 債務が確定しているとは、12月31日までに、(1)債務が成立している、(2)具体的な給付をすべき原因となる事実が発生している、(3)金額が合理的に算定できる、の3つを満たす場合です。

確定申告で65万円の青色申告特別控除を受けるには、No.2072 のとおり、 取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していることが要件です。カード払いを未払金で記帳する流れは、そのまま複式簿記の帳簿になります。 必要な書類は青色申告の必要書類にまとめています。

カードの年会費も、事業のために使うカードであれば、No.2210 の「業務上の費用の額」にあたります。 私用と兼用のカードの年会費は家事関連費で、事業で使った分を区分できる範囲に限られます。

事業用カード・口座を分けると何が楽になるか

領収書のない支出は、カード明細や通帳が記録の中心になります。私用の買い物と事業の支出が同じカード・同じ口座に並んでいると、 どれが事業の支出かを一件ずつ仕分けなければならず、No.2210 の言う「明らかに区分できる」状態を保ちにくくなります。

  • 事業専用のカード・口座を1つ決めると、明細がそのまま事業の記録になり、記帳の抜けが減ります。
  • 私用のカードで事業の支出を払った場合は、明細のその行に用途を書き添え、事業分だけを経費にします。
  • 家族名義のカードで払うと、自分の事業の支出として明細に並ばず、説明に手間がかかります。事業の支出は自分名義のカードで払うほうが記録をたどりやすくなります。

インボイスで、領収書なしの帳簿だけでも仕入税額控除ができる場合

消費税の課税事業者が仕入税額控除を受けるときの話で、所得税の経費とは別の仕組みです。登録の有無で変わる点は インボイスに登録しないとどうなるか、消費税の計算は消費税の計算で解説しています。 出典は国税庁のインボイス制度 Q&A(問43・問104・問105・問110・問111)です。

取引帳簿のみでよい条件帳簿に足す記載
電車・バスなど公共交通機関1回の取引の税込価額が3万円未満「3万円未満の鉄道料金」など
自動販売機・ATMなど3万円未満の商品購入等「自販機」「ATM」など
郵便切手類のみの郵便サービス郵便ポストに差し出したもの該当する旨
1万円未満の課税仕入れ(少額特例)基準期間の課税売上高1億円以下など。令和11年9月30日まで特になし(問111)

3万円の判定は、切符1枚ごとや月まとめではなく、1回の取引の税込価額で行います(問43)。 国税庁の例では、新幹線の大人運賃が13,000円で4人分を一度に手配する場合は、4人分の52,000円で判定するため3万円以上になります。 3万円以上の公共交通機関では、適格請求書の保存が仕入税額控除の要件です(問105)。

少額特例は、基準期間(個人事業者はその年の前々年)における課税売上高が1億円以下、または特定期間(その年の前年1月1日から6月30日)における課税売上高が5千万円以下の事業者が対象です。 支払対価の額(税込み)が1万円未満の課税仕入れについて、適格請求書発行事業者以外の者からのものでも対象になります(問111・注)。

表の記載事項は、通常必要な帳簿の記載事項に加えて必要になるものです(問110)。公共交通機関など相手方の住所の記載が不要な取引もあります。

よくある質問

領収書がない支出は、すべて経費にできますか。

できません。経費にできるのは、事業の収入を得るために必要だった支出です。領収書がないことだけで経費から外れるとは国税庁の説明(No.2080・No.2210)に書かれていませんが、帳簿に記載したうえで、業務のための支出だと記録で説明できることが前提です。私用の分は経費になりません。

領収書やレシートは何年保存しますか。

国税庁 No.2080 では、請求書・納品書・送り状・領収書などの書類は5年、収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)は7年の保存です。不動産所得・事業所得・山林所得のある方が対象です。

白色申告でも、領収書のない支出の記帳は必要ですか。

必要です。No.2080 では、事業所得のある方は白色申告でも、収入金額と経費について、取引の年月日・相手方の名称・金額などを帳簿に記載するとされています。一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するなど、簡易な方法でもよいとされています。

12月に使ったカードの引落しが翌年1月でも、その年の経費にできますか。

No.2210 によれば、必要経費は「その年において債務の確定した金額」で、支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります。債務の確定には、12月31日までに債務が成立していること、具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること、金額が合理的に算定できることの3つが必要です。

電車代は領収書がなくても、消費税の仕入税額控除を受けられますか。

国税庁のインボイス Q&A(問104・問105)では、適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送は、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるとされています。3万円以上の場合は適格請求書の保存が要件で、判定は切符1枚ごとや月まとめではなく、1回の取引の税込価額で行います(問43)。消費税の話で、所得税の経費とは別の仕組みです。

出典

※経費や仕入税額控除に当たるかどうかは、業務の内容や取引の実態によって異なります。個別の判断は税務署または税理士等の専門家にご確認ください。