個人事業主は何を経費にできるのか

事業のために使った支出は、必要経費として収入から差し引けます。自宅と兼用の家賃・通信費・車などは、 事業で使った割合の分だけです(家事按分)。経費にできるものの一覧、できないもの、 割合の決め方と計算例、帳簿と領収書の保存期間を、国税庁の原文に沿ってまとめました。

先に結論

経費にできるものの一覧

個人事業主が使うことの多い勘定科目の例です。科目名は自分で分かりやすく決めてかまいません。

科目例注意
通信費スマホ・ネット回線・サーバー代私用と兼用なら按分
水道光熱費自宅兼事務所の電気・ガス・水道按分が必要
地代家賃事務所の家賃・自宅兼事務所の家賃自宅兼用は按分。生計を一にする親族に払う分は不可
消耗品費文具・10万円未満の備品10万円以上は減価償却
旅費交通費打ち合わせの電車・出張の宿泊業務のための移動に限る
接待交際費取引先との飲食・手土産相手と目的を記録
広告宣伝費名刺・Web広告・サイト運営費事業用の分のみ
新聞図書費業務に使う書籍・有料情報私的な読書は不可
支払手数料振込手数料・決済手数料—
租税公課事業税・印紙税・事業用の固定資産税所得税・住民税は不可
車両費ガソリン・車検・自動車税・保険私用と兼用なら按分
外注費デザイナー・ライターへの報酬生計を一にする親族への給与は不可
減価償却費パソコン・機材・家具減価償却費の計算機
利子事業用の借入金の利息業務のための借入に限る

開業前にかかった準備費用(登記・名刺・機材など)の扱いは開業届の出し方で解説しています。

経費にできないもの

国税庁 No.2210「必要経費の知識」(令和8年4月1日現在法令等)の記載から。

  • 所得税や住民税は必要経費になりません。
  • 罰金、科料および過料などは必要経費になりません。
  • 公務員に対する賄賂などは必要経費になりません。
  • 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う地代家賃などは必要経費になりません(逆に、受け取った人も所得としては考えません)。
  • 生計を一にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金(青色事業専従者給与を除く)は必要経費になりません。
  • 家事上の費用は必要経費になりません。

国民健康保険料と国民年金保険料は事業の経費ではなく、社会保険料控除として所得から差し引く別の仕組みです (国税庁 No.1130)。経費の欄に入れず、確定申告書の社会保険料控除に書きます。

家事按分とは何か、割合はどう決めるか

国税庁 No.2210 は、次のように説明しています。

個人の業務においては一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用(家事関連費といいます。)となるものがあります。 (例)店舗併用住宅に係る費用(租税公課、家賃、水道光熱費など) この家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます。

この「区分する」作業が家事按分です。割合に決まった計算式はなく、所得税基本通達45-1は、 業務の内容、経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定するとしています。 次のような客観的な基準で割合を決め、その根拠を残しておくのが一般的です。

支出割合の基準の例残しておく記録
家賃床面積(仕事部屋÷全体)間取り図・面積の計算
電気代面積・使用時間仕事の稼働時間のメモ
スマホ・回線通話・通信の使用実態通話履歴・利用明細
車走行距離(仕事÷全体)走行距離の記録

50%を境にした扱いもあります。 所得税基本通達45-2は、家事関連費のうち「主たる部分」が業務に必要かどうかを、その支出のうち業務に必要な部分が50%を超えるかどうかで判定するとしています。 ただし、必要な部分が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、その部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない、と定めています。 この通達が根拠にしているのが、所得税法施行令第96条(家事関連費)です。

家賃・電気代・スマホ・車の計算例

金額と割合は説明のための例です。割合は自分の使い方の実態で決めてください。

支出計算年の経費
家賃月10万円×12か月=120万円。40㎡のうち仕事部屋8㎡で20%24万円
電気代月6,000円×12か月=7.2万円。仕事での使用が3割2.16万円
スマホ月8,000円×12か月=9.6万円。仕事の通話・通信が半分4.8万円
車年40万円(燃料・保険・税・車検)。走行距離8,000kmのうち仕事2,400kmで30%12万円

4つの合計は約43万円です。所得が43万円下がると、その分だけ所得税・住民税・国保料のもとになる金額が小さくなります。 車は仕事の移動が少ないと割合が小さくなります。通達45-2のとおり、仕事の割合が50%以下でも、区分できる部分はその分を経費に算入できます。

白色申告でも必要な帳簿と領収書の保存

国税庁 No.2080(令和8年4月1日現在法令等)では、不動産所得・事業所得または山林所得のある方は記帳が必要で、 取引の年月日、相手方の名称、金額などを帳簿に記載するとされています。 一つ一つの取引ごとではなく、日々の合計金額のみをまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっています。

保存が必要なもの保存期間
収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿)7年
上記以外の帳簿(任意帳簿)5年
決算に関して作成した棚卸表その他の書類5年
請求書・納品書・領収書などの書類5年

保存場所は住所地や事業所などの所在地です。一定の要件のもとで、電子データによる保存に代えることもできます。 業務に係る雑所得のある方は、前々年分の業務に係る雑所得の収入金額が300万円を超える場合に、現金預金取引等関係書類を5年保存する必要があります。

よくある質問

経費に上限はありますか。

必要経費の金額に、法律上の一律の上限はありません。ただし、業務を行うために必要だった支出であること、そしてその内容を帳簿や領収書などの記録で説明できることが前提です。私用と兼用の支出は、業務で使った部分だけが経費になります。

領収書をなくしてしまった場合は経費にできませんか。

領収書がなければ経費にできないという決まりではなく、帳簿に取引を記録しておくことが前提です。通帳やクレジットカードの明細、出金の記録などで、いつ・誰に・何のために払ったかを説明できるようにしておきます。ただし、帳簿に記載していない取引は経費として認められにくくなります。

副業の雑所得でも経費は引けますか。

国税庁 No.2210 では、必要経費の対象を事業所得・不動産所得・雑所得としています。副業で雑所得になる場合でも、その収入を得るために必要な支出は必要経費に算入できます。ただし、事業所得と雑所得では、青色申告特別控除や赤字の扱いなどの特典が異なります。

家賃を全額経費にすることはできますか。

自宅と事務所を兼ねている場合、家賃のうち経費になるのは、業務で使う部分を明らかに区分できる金額に限られます(国税庁 No.2210)。事務所専用の賃貸物件であれば全額が対象になります。

出典

※経費に当たるかどうかは、業務の内容や支出の実態によって異なります。個別の判断は税務署または税理士等の専門家にご確認ください。