退職をバックレるとどうなる?無断欠勤は懲戒解雇か、損害賠償・離職票・給料・会社の物はどうなるかと、出社せずに辞める方法
会社に連絡せず出社しなくなる「バックレ」は、会社から見れば退職の意思が分からない無断欠勤です。民法627条では、期間の定めのない雇用は退職の意思を伝えてから2週間で終わるので、出社したくなくても、意思は伝えられます。懲戒解雇・損害賠償・離職票・給料・会社の物の返却について、民法・労働基準法・厚生労働省・ハローワークの公開資料で確かめた範囲を、順に整理しました。
バックレと、出社せずに退職を伝えることの違いは?
どちらも「会社に行かない」点は同じですが、法律の上では別です。退職の意思を会社に伝えたかどうかで、扱いが分かれます。
- バックレ(意思を伝えずに出社をやめる):会社から見ると、退職の意思が分からない無断欠勤です
- 出社せずに意思を伝える:民法627条1項により、期間の定めのない雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過すると終了します
出典:e-Gov法令検索 民法627条1項、2026年10月3日確認。条文は、申入れの方法(口頭か書面か)を定めていません。
すでに数日休んでしまった場合も、意思を伝えること自体は今からできます。退職日の決め方や、引き止められたときの断り方は退職の引き止めを断る方法、退職届の書き方は退職届の書き方で書いています。この記事では、連絡せずに休み続けたときに気になる点を、一つずつ確かめます。
無断欠勤は、懲戒解雇になるのか
何日休めば懲戒解雇、という日数の決まりは、確かめた法令にはありませんでした。厚生労働省のQ&Aに、近い話があります。会社が解雇予告をせずに(または予告手当を払わずに)解雇するには、労働基準監督署長の認定が必要です(労働基準法20条)。その認定基準の例のひとつに、「2週間以上正当な理由がなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が挙げられています。
ただし、これは解雇予告を省けるかどうかの基準で、懲戒解雇として有効かどうかは別の話です。厚生労働省のQ&Aは、認定は個々の例示にこだわらず総合的かつ実質的に判断し、就業規則の懲戒解雇事由にも拘束されない、と説明しています。懲戒について、労働契約法15条は、行為の性質や態様などに照らして、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない場合は、権利の濫用として無効としています。
出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「即時解雇OK?解雇予告や予告手当の不要な場合はありますか?」、e-Gov法令検索 労働基準法20条・労働契約法15条・16条、2026年10月3日確認。
会社が実際に懲戒解雇にするかどうかは、就業規則の定めと、会社の判断で決まります。自分の会社で無断欠勤や懲戒解雇がどう定められているかは、就業規則で確かめられます(労働基準法89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に、退職・解雇の事由や、制裁の種類と程度を就業規則に定めて届け出ることを義務づけています)。
バックレると、損害賠償を請求されることはあるのか
法律の上では、会社が損害賠償を請求できる余地はあります(民法415条は、債務の本旨に従った履行をしない債務者に対し、債権者が損害賠償を請求できると定めています)。ただし、「バックレたから必ず請求される」わけではありません。
- 厚生労働省のQ&Aは、期間の定めのある契約の途中退職について、当然に損害賠償をされるのではなく、「使用者に損害が生じているのか、それがあなたが退職したことが原因なのか」を検討して判断される、と説明しています
- 労働基準法16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定する契約を結んだりすることを、使用者に禁じています。「無断で辞めたら○○円」と決めておくことは認められません
出典:厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「長期契約を結んだものの、途中で退職した場合には損害賠償請求されますか?」、e-Gov法令検索 民法415条・労働基準法16条、2026年10月3日確認。
実際に請求の書面が届いたときは、一人で判断せず、相談先を使ってください。厚生労働省のQ&Aは、労働条件や雇用のトラブルの相談先として、労働基準監督署のほか、労働局や労働基準監督署に置かれた総合労働相談コーナーを挙げています。損害賠償の交渉は、辞スルのような民間の退職代行では扱えません。
給料・離職票・源泉徴収票・社会保険・会社の物は、どうなるのか
連絡せずに辞めた場合に、あとで気になる書類やお金を、根拠の条文と一緒に整理しました。
| 気になること | 公式資料に書かれていること | 根拠 |
|---|---|---|
| 給料 | 賃金は全額を支払うのが原則。退職の場合、請求すれば7日以内に支払う(争いがある部分を除く) | 労働基準法23条・24条 |
| 離職票 | 会社が離職証明書を出し、ハローワークが交付する。届かないときは住居地のハローワークに問い合わせ | 雇用保険法施行規則7条・17条、ハローワーク |
| 源泉徴収票 | 年の途中で退職した場合は、退職の日以後1か月以内に交付 | 所得税法226条1項 |
| 退職時の証明書 | 請求すれば遅滞なく交付。離職票では代えられない。交付されないときは労働基準監督署に相談 | 労働基準法22条、厚生労働省Q&A |
| 健康保険・厚生年金 | 会社に使用されなくなった日の翌日に資格を失う。喪失の届出は会社が出す | 健康保険法36条・48条 |
出典:e-Gov法令検索(労働基準法、雇用保険法施行規則、所得税法、健康保険法)、ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」、厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A「自己都合の退職の際、退職勤務証明書を請求できますか?方法は?」、2026年10月3日確認。届くまでの日数は、確かめていません。
離職票は、失業給付の手続きで使う書類です。ハローワークは、離職証明書の離職理由等の記載内容を、離職前に確認するよう案内しています。在職中の確認が案内されているので、連絡を絶つと、確認の機会がなくなることがあります。国民健康保険か任意継続かの選び方は会社を辞める前に:任意継続と国民健康保険、どちらが安いか、有給が残っているときの扱いは退職時の有給消化を拒否されたらに書いています。
会社から借りている物(社員証、制服、パソコンなど)の返却は、就業規則や会社の案内で決まるのが通常で、この記事では法令の条文を確かめていません。連絡せずに辞めた場合、返却の段取りは自分で会社に確かめることになります。辞スルの広告主のページには、会社の物は「退職が確定後に郵送で対応してもらえるよう私たちから伝えます」、引継ぎは「簡単な内容であれば私たちから伝えます」と書かれています。
出社せずに辞める3つの手段
会社に行かずに、退職の意思を伝える方法は主に3つあります。
| 手段 | できること | 注意すること |
|---|---|---|
| 退職届を郵送する | 書面で、退職の意思と希望する退職日を会社へ伝える | 会社とのやり取りは自分で行う。書き方は退職届の記事を参照 |
| 退職代行(辞スル) | 退職の意思を会社へ伝えてもらう。会社の物の返却や簡単な引継ぎも、広告主から会社へ伝える | 弁護士・労働組合ではないので、損害賠償の交渉や未払い賃金の請求は頼めない |
| 弁護士・総合労働相談コーナー | 請求や未払いなど、会社との争いの相談をする | 窓口ごとに、相談だけの所と、調査や助言までする所がある |
出典:民法627条(e-Gov法令検索)、辞スルの広告主のページ(lp.jisuru.com/RTS/、特定商取引法に基づく表記)、厚生労働省「確かめよう労働条件」Q&A、2026年10月3日確認。
辞スルの料金は、広告主のページ(lp.jisuru.com)の特定商取引法に基づく表記では雇用に関わらず一律22,000円、後払い手数料3,000円です。公式サイト(jisuru.com)の表記では、正社員・契約社員22,000円、アルバイト18,000円、後払い手数料1,000円~3,000円と書かれており、表示が分かれています。申し込む前に、自分の場合の金額をLINEの相談で確かめてください。弁護士・労働組合・民間のサービスの違いと費用は退職代行サービスの選び方で比べています。損害賠償や未払い賃金のように、会社と争いになりそうなときは、弁護士や総合労働相談コーナーに相談してください。パワハラが原因で出社できなくなったときはパワハラの法的定義と対処を先に見てください。
よくある質問
Q. 退職をバックレたら、何日で懲戒解雇になりますか?
A. 何日休めば懲戒解雇、という決まりは、この記事で確かめた法令には見当たりませんでした。厚生労働省のQ&Aは、解雇予告の除外を労働基準監督署が認定する際の例として「2週間以上正当な理由がなく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」を挙げています。ただし、これは解雇予告の話で、懲戒解雇として有効かどうかは別です。就業規則の定めと個別の事情で決まり、労働契約法は、懲戒や解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でなければ無効としています。
Q. バックレると、必ず損害賠償を請求されますか?
A. 必ずとは言えません。請求できるのは、会社に損害が生じ、それが退職の仕方と結びついている場合です。厚生労働省のQ&Aは、期間の定めのある契約の途中退職について、当然に損害賠償をされるわけではなく、使用者に損害が生じているのか、それが退職したことが原因なのかを検討して判断される、と説明しています。請求が届いたときは、自分で判断せず、総合労働相談コーナーや弁護士に相談してください。
Q. 連絡せずに辞めても、離職票は届きますか?
A. 離職票は、会社がハローワークに離職証明書を出し、ハローワークが交付する仕組みです(事業主を通じて届く場合もあります)。会社から離職票が交付されない場合や事業主が行方不明の場合は、住居地を管轄するハローワークに問い合わせるよう、ハローワークが案内しています。届くまでの日数は、この記事では確かめていません。
Q. 無断で休んだ月の給料は、もらえますか?
A. 働いた分の賃金には、労働基準法24条の全額払いの原則が当てはまります。賃金は全額を支払うのが原則で、差し引けるのは、法令に定めがある場合や労使協定がある場合に限られます。退職した場合は、請求すれば7日以内に賃金を支払うよう、労働基準法23条が定めています。実際にどう支払われるかは、会社の給与の締め日と支払日で変わります。
Q. 契約社員やアルバイト(期間の定めのある契約)でも、同じですか?
A. 違います。民法627条の「2週間」は、雇用の期間を定めなかった場合の話です。期間を定めた契約は、やむを得ない事由があるときに、直ちに契約を解除できると民法628条が定めています。厚生労働省のQ&Aによると、1年を超える労働契約を結んでいる労働者は、契約期間の初日から1年を経過した日以後であれば、会社に申し出ることでいつでも退職できます(労働基準法附則137条)。自分の契約が期間の定めのあるものかは、労働条件通知書や契約書で確かめてください。
Q. 退職代行を使えば、損害賠償を請求されなくなりますか?
A. 退職代行を使うかどうかで、会社が損害賠償を請求できるかどうかが変わるとは、この記事で確かめた公式資料には書かれていません。辞スルは弁護士でも労働組合でもない民間のサービスで、損害賠償の交渉や、未払い賃金の請求には使えません。請求が来たときの相談先は、総合労働相談コーナーや弁護士です。
Q. 会社から、自分や家族に連絡は来ませんか?
A. 会社からの連絡を止める法律上の仕組みは、この記事では確かめていません。辞スルの広告主のページには、「基本的に問題ありません。私たちから連絡しないよう強くお伝えいたします。稀に連絡が来てしまうことがあるようですが、無視して頂いて大丈夫です」と書かれています。
参考・出典
- e-Gov法令検索 - 民法(第415条、第627条、第628条)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 労働基準法(第16条、第20条、第22条〜第24条、第89条)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 労働契約法(第15条、第16条)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 雇用保険法施行規則(第7条、第16条、第17条)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 所得税法(第226条)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 健康保険法(第36条、第48条)(2026年10月3日確認)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件 - 解雇予告や予告手当の不要な場合(2026年10月3日確認)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件 - 途中で退職した場合の損害賠償(2026年10月3日確認)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件 - 退職時の証明書(2026年10月3日確認)
- 厚生労働省 確かめよう労働条件 - 労働トラブルの相談先(2026年10月3日確認)
- ハローワークインターネットサービス - 雇用保険の具体的な手続き(2026年10月3日確認)
- 辞スル 広告主のページ(よくある質問、特定商取引法に基づく表記)(2026年10月3日確認)
※懲戒解雇の有効性、損害賠償の可否、賃金の扱いは、就業規則・契約内容・個別の事情で変わります。この記事は公開資料で確かめた範囲の一般的な説明で、個別の法的助言ではありません。具体的なトラブルは、弁護士や総合労働相談コーナーにご相談ください。