市販薬は医療費控除の対象?セルフメディケーション税制との違い、どちらが得か、レシートの条件

国税庁は、治療または療養に必要な医薬品の購入費は、医師の処方がなくても医療費控除の対象としています。これとは別に、対象医薬品の購入費が年12,000円を超えたときは、セルフメディケーション税制(控除額は最大88,000円)も使えます。ただし両方は受けられず、どちらか一方を選びます。一度選ぶと、後から変えられません。この記事は、会社に勤めている方が確定申告で市販薬の購入費を申告するときに、国税庁と厚生労働省の原文で確かめられる範囲をまとめました。薬の効果や選び方は扱いません。

市販薬が医療費控除の対象になる条件

医療費控除は、その年の1月1日から12月31日までに、自分または生計を一にする配偶者その他の親族のために支払った医療費が、10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%)を超えたときに受けられる所得控除です(No.1120)。市販薬の購入費は、次の条件で、この医療費に含められます。

  • 治療または療養に必要な医薬品であること:No.1122 は、風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費になる一方、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費にならないと説明しています
  • 医師の処方や指示は必須ではない:質疑応答事例は、薬局や薬店で市販されている風邪薬は、医師の処方や指示がなくても対象になると回答しています
  • 支出の水準:病状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額が対象です
  • 医薬品であること:医薬品に当たらない漢方薬等の購入費用は対象になりません。漢方薬やビタミン剤は、治療または療養に必要な場合に対象になります(質疑応答事例)

市販薬の購入費だけでは、足切りの10万円に届かないことがあります。通院費や歯科の費用など、他の医療費と合わせて10万円を超えるかが、この方法の分かれ目です。人間ドックなどの健康診断の費用は、治療を伴わないため対象になりません(質疑応答事例)。

セルフメディケーション税制との違い

セルフメディケーション税制は、医療費控除の特例です。国税庁の No.1129 は、通常の医療費控除との選択適用で、特例を受けるときは通常の医療費控除を併せて受けられないと説明しています。違いは次のとおりです。

項目通常の医療費控除セルフメディケーション税制
控除の対象治療・療養のための医療費全般対象医薬品の購入費のみ
差し引く金額10万円(総所得金額等が200万円未満なら5%)12,000円
控除額の上限200万円88,000円
取組の条件なし健康診断・予防接種など「一定の取組」を行っていること
明細書医療費控除の明細書セルフメディケーション税制の明細書

出典:国税庁 タックスアンサー No.1129・No.1131・No.1120(令和8年4月1日現在法令等)、厚生労働省「セルフメディケーション税制について」(令和8年8月7日時点)、2026年10月2日確認。

セルフメディケーション税制を選ぶと、対象医薬品の購入費以外の医療費は計算に入りません。病院や歯科の費用が10万円を超えていても、特例と合わせて受けることはできません(No.1131)。また、どちらかを選んで確定申告書を提出した後は、更正の請求や修正申告でもう一方に変えることはできません(No.1129、No.1131)。

税制の対象になる薬と「一定の取組」

対象になる薬

国税庁の No.1129 と厚生労働省によると、対象は、医師が処方する医療用医薬品から薬局・ドラッグストアで買えるOTC医薬品に転用された医薬品(スイッチOTC医薬品)等の購入費です。厚生労働省の制度概要は、スイッチOTC医薬品以外でも、外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用薬、アレルギー用薬は対象としています。具体的な品目は、厚生労働省の「対象品目一覧」で確認できます。

対象かどうかは、購入時のレシート等に、税制の対象商品である旨が表示されているかで確かめます(No.1129)。一部の商品は、パッケージに共通識別マークがあります。

一定の取組

この税制は、その年に、本人が健康の保持増進および疾病の予防への取組を行っているときに使えます。No.1129 は、次のいずれかが当てはまるとしています。

  • 保険者(健康保険組合、市区町村国保等)が実施する健康診査(人間ドック、各種健(検)診等)
  • 市区町村が健康増進事業として行う健康診査
  • 予防接種(定期予防接種、インフルエンザワクチンの予防接種)
  • 勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)
  • 特定健康診査(いわゆるメタボ健診)、特定保健指導
  • 市区町村が健康増進事業として実施するがん検診

いずれか1つでよく、全てを受ける必要はありません(厚生労働省Q&A)。取組を行う必要があるのは、申告する本人だけです。生計を一にする家族が行う必要はありません。取組に要した費用そのもの(人間ドックなど)は、この税制の対象になりません(No.1129)。

全額自己負担で任意に受けた健診は「一定の取組」に含まれません。ただし、その結果を保険者や事業主に提出して、特定健康診査や定期健康診断の結果とみなされる場合は該当します(厚生労働省Q&A Q19・Q20)。取組を行ったことを示す書類は、確定申告書に添付する必要はありませんが、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、税務署から提示や提出を求められる場合があります(No.1129・No.1134)。

どちらが得か・戻る額の比較

選ぶ基準は、薬以外の医療費がどれだけあるかです。次は、年収500万円の方が、対象医薬品を年間でいくら買ったかによる、2つの方法の戻る額の目安です。他の医療費はなしとし、買った薬は、通常の医療費控除でも治療のための薬として数えると仮定しています(購入額は計算のための仮置きで、実際の支出とは異なります)。

薬の年間購入額セルフメディケーション税制通常の医療費控除
1.5万円控除3,000円
戻る約453円
控除0円
戻る約0円
3万円控除18,000円
戻る約2,719円
控除0円
戻る約0円
5万円控除38,000円
戻る約5,740円
控除0円
戻る約0円
10万円控除88,000円
戻る約13,292円
控除0円
戻る約0円
15万円控除88,000円
戻る約13,292円
控除50,000円
戻る約7,552円

tools の医療費控除計算機と同じ計算です。社会保険料は東京都・40歳未満の標準的な金額で概算し、その他の所得控除は考慮していません。実際の額は、源泉徴収額や他の控除により変わります。

市販薬だけなら、足切りが12,000円のセルフメディケーション税制のほうが先に戻りが出ます。たとえば薬を年に15万円買った場合は、セルフメディケーション税制の控除は上限の8.8万円(戻る額の目安は13,292円)、通常の医療費控除は5万円(同7,552円)です。

次は、対象医薬品を年3万円買い、薬以外の医療費(通院や歯科など。保険金等で補てんされる額を引いたあと)が違うときの目安です。年収は500万円です。

薬以外の医療費セルフメディケーション税制通常の医療費控除
0万円控除18,000円
戻る約2,719円
控除0円
戻る約0円
5万円控除18,000円
戻る約2,719円
控除0円
戻る約0円
10万円控除18,000円
戻る約2,719円
控除30,000円
戻る約4,531円
15万円控除18,000円
戻る約2,719円
控除80,000円
戻る約12,084円
20万円控除18,000円
戻る約2,719円
控除130,000円
戻る約19,636円

通常の医療費控除は、薬以外の医療費に薬の3万円を足した合計から足切り(年収500万円では10万円)を引いて計算しています。セルフメディケーション税制は、薬以外の医療費に関係なく、薬3万円から12,000円を引いた額です。

比べ方

薬以外の医療費が少なく、市販薬の購入が中心なら、セルフメディケーション税制のほうが戻りが出やすくなります。病院や歯科などの医療費が多く、薬と合わせて10万円を大きく超えるときは、通常の医療費控除のほうが戻りが大きくなります。選んだ後は変えられないため、申告前に両方を計算してください。

年収と医療費を入力して通常の医療費控除の戻る額を確かめるときは、医療費控除はいくらから戻る?計算ツールを使えます。明細書の書き方は医療費控除の明細書の書き方にまとめています。

令和9年1月1日以降の変更

国税庁の No.1132(令和8年4月1日現在法令等)は、特定一般用医薬品等購入費の購入期間を、令和4年1月1日から令和8年12月31日までとしています。厚生労働省は、令和9年1月1日施行時点の租税特別措置法第41条の17(所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)による改正を反映)を掲載しており、期間と対象が次のように変わります。

区分令和8年12月31日まで令和9年1月1日以降
スイッチOTC医薬品対象(令和8年1月1日以降は一部の成分が対象外)対象。期間は「平成29年1月1日以後」とされ、終期の記載なし
スイッチOTC以外の一般用医薬品外用鎮痛消炎薬、解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、かぜ薬、鼻炎用薬、アレルギー用薬左に加えて、胃腸薬、浣腸薬、瀉下薬、痔疾用薬などが追加。令和13年12月31日まで
検査キット対象外排卵日予測検査薬、新型コロナウイルス抗原検査キットなどが追加。妊娠検査薬・尿糖検査薬・尿タンパク検査薬は対象外
薬局製造販売医薬品―対象になる上記と同じ有効成分を含むものが追加。令和13年12月31日まで

出典:国税庁 タックスアンサー No.1132(令和8年4月1日現在法令等)、厚生労働省「セルフメディケーション税制Q&A」Q5(令和8年8月7日現在)、同「租税特別措置法 第四十一条の十七(令和9年1月1日施行時点)」、2026年10月2日確認。

令和9年1月1日以降に新たに対象に加わる医薬品は、同日以降に支払ったものが対象です。ただし、対象医薬品であることを示すレシート等が必要で、品目が対象リストに載る前に買ったものは、レシート等がないため申告に含められません(厚生労働省Q&A Q33)。

レシートと明細書

レシートに必要な記載

厚生労働省の事務連絡は、証明書類(レシート等)に次の5つが明記されている必要があるとしています。

  • 商品名
  • 金額
  • その商品がセルフメディケーション税制の対象商品である旨(レシートでは、商品名の前の「★」などのマークと、その説明、または対象商品のみの合計額を分けた記載)
  • 販売店名
  • 購入日

手書きの領収書でも、これらが書かれていれば構いません。自宅のプリンタ等で出力した領収書は、証明書類の原本として認められません。レシート等を失くした場合や、対象を示すマークが載っていない場合は、購入した薬局等に再発行を相談します(厚生労働省Q&A Q32・Q34)。

金額の数え方と手続き

  • 金額:実際に支払った税込価格です。セールなどの割引があるときは、割引後に支払った金額で数えます(厚生労働省Q&A Q30・Q31)
  • 明細書:領収書から「セルフメディケーション税制の明細書」を作り、確定申告書に添付します。令和3年分以後は、取組を行ったことを示す書類の添付は不要です(No.1120、No.1129)
  • 保管:確定申告期限等から5年を経過する日までの間、税務署から領収書の提示や提出を求められる場合があるため、レシートは保管しておきます(No.1129)

通常の医療費控除を選ぶときの領収書や医療費通知の扱いは、医療費控除の明細書の書き方で説明しています。

よくある質問

Q. 市販薬は医療費控除の対象になりますか?

A. 国税庁の No.1122 は、治療または療養に必要な医薬品の購入の対価を、医療費控除の対象になる医療費として挙げています。風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費になりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費にならないと説明しています。

Q. 医師の処方がなくても、薬局で買った薬は対象になりますか?

A. 国税庁の質疑応答事例は、薬局や薬店などで市販されているかぜ薬について、医師の処方や指示がなくても医療費控除の対象になると回答しています。医薬品の購入費用は、治療や療養に必要なもので、かつ病状に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額であれば対象です。一方で、医師の処方や指示があれば全ての医薬品が対象になるとは限らないことにも注意するよう書かれています。

Q. ビタミン剤や漢方薬は対象になりますか?

A. 国税庁の質疑応答事例は、漢方薬やビタミン剤の購入費用は、治療または療養に必要な場合に医療費控除の対象になると回答しています。医薬品に当たらない漢方薬等の購入費用は対象になりません。No.1122 は、病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費にならないとしています。

Q. セルフメディケーション税制と医療費控除は、両方受けられますか?

A. 受けられません。国税庁の No.1131 は、セルフメディケーション税制は医療費控除の特例で、通常の医療費控除との選択適用になるため、いずれか一方を選ぶと説明しています。セルフメディケーション税制を選ぶと、対象医薬品の購入費以外の医療費が10万円を超えていても、通常の医療費控除を併せて受けることはできません。

Q. 一度選んだあとで、もう一方に変えられますか?

A. 変えられません。国税庁の No.1129 と No.1131 は、どちらかを選んで確定申告書を提出した後は、更正の請求や修正申告でもう一方に変更することはできないと説明しています。選ぶ前に、両方の戻る額を計算して比べておく必要があります。

Q. セルフメディケーション税制を使うには、何が必要ですか?

A. 国税庁の No.1129 によると、その年に、健康の保持増進および疾病の予防への取組として「一定の取組」を行っている必要があります。勤務先で実施する定期健康診断(事業主健診)、特定健康診査、予防接種、市区町村のがん検診などが当てはまります。申告する本人が取組を行っている必要があり、生計を一にする家族が行う必要はありません。

Q. 家族の分の市販薬も合計できますか?

A. 合計できます。国税庁の No.1129 は、自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合を対象にしています。ただし「一定の取組」は、申告する本人が行っている必要があります。

Q. 対象の薬かどうかは、どう見分けますか?

A. 国税庁の No.1129 は、対象となる商品には、購入の際の領収書等にセルフメディケーション税制の対象商品である旨が表示されていると説明しています。一部の対象医薬品は、パッケージに共通識別マークが載っています。厚生労働省は、令和9年1月1日以降の一定期間はパッケージの表示切替が行われるため、必ずレシート等の表示を確認するよう案内しています。

Q. セルフメディケーション税制は、いつまで使えますか?

A. 国税庁の No.1132(令和8年4月1日現在法令等)は、購入期間を令和4年1月1日から令和8年12月31日までとしています。厚生労働省が掲載する令和9年1月1日施行時点の租税特別措置法第41条の17(所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)による改正を反映)では、スイッチOTC医薬品の期間は「平成29年1月1日以後」とされ、終期の記載がありません。それ以外の対象医薬品は令和13年12月31日までです。

Q. 通販で買った薬の領収書を、自宅のプリンタで印刷して使えますか?

A. 使えません。厚生労働省のQ&Aは、自宅のプリンタ等で出力した領収書等は証明書類の原本として認められないため、通信販売等の会社に改めて証明書類の発行を依頼するよう案内しています。レシート等を失くした場合も、購入した薬局等に再発行を相談するよう案内しています。

Q. 税込と税抜のどちらで数えますか?セールで安く買ったときは?

A. 厚生労働省のQ&Aは、実際に支払った税込価格が控除の対象になること、割引後に支払った金額が控除の対象になることを回答しています。

参考・出典

※医療費控除・セルフメディケーション税制の取扱いは個別の事情により異なります。具体的な申告は税務署または税理士にご確認ください。この記事は、薬の効果や選び方など医療についての情報ではありません。

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