ストックオプションの税金|税制適格と非適格の違い、権利行使と売却にかかる税、確定申告は必要か

ストックオプションの税金は、税制適格か非適格かで課税される時期が変わります。適格なら、権利行使して株を取得したとき所得税はかからず、株を売ったとき譲渡所得として課税されます。非適格なら、権利行使したとき給与所得として課税され、売ったときにも譲渡所得として課税されます。会社に勤めている方が付与されたストックオプションの行使と売却を考えるときの、税の区分・年末調整と確定申告の要否を、国税庁の案内と条文で整理しました。

適格と非適格で、いつ何の税がかかるか

ストックオプションとは、会社が従業員や役員に与える、自社の株を決められた権利行使価格で買える権利(新株予約権)です。国税庁は、その税を「もらったとき」「権利行使したとき」「株を売ったとき」の3つに分けて説明しています。違いが出るのは、権利行使のときです。

場面税制適格の場合税制非適格の場合
もらったとき課税なし課税なし
権利行使して株を取得したとき所得税を課さない給与所得として課税(行使時の株価−権利行使価格)×株数
株を売ったとき譲渡所得(売却価格−権利行使価額)×株数譲渡所得(売却価格−行使時の株価)×株数
売却益の税率20%(所得税15%・住民税5%)20%(所得税15%・住民税5%)

※出典:国税庁 タックスアンサー No.1540・No.1543・No.1463(令和8年4月1日現在法令等)、租税特別措置法第29条の2第1項、所得税法施行令第84条第3項。売却益の税率には、別に復興特別所得税(所得税額の2.1%)が加わります。

適格の場合、権利行使時の利益に課税せず、株を売ったときまで課税を繰り延べる仕組みです。国税庁は、売ったときにその経済的利益とキャピタルゲインを合わせて譲渡所得として申告分離課税の対象にし、株の取得価額(取得費)は権利行使時の時価ではなく権利行使価額になると説明しています。

非適格の場合は、権利行使時の株価と権利行使価格の差が給与所得になり、売ったときの取得費は行使時の株価になります。行使時に課税された分が、売却時に重ねて課税されない形です。権利行使価格より行使時の株価が高いほど、行使時に課税される利益が大きくなります。

行使時の所得区分について、国税庁は、発行会社と権利を与えられた人との関係が雇用契約またはこれに類する関係に基づいて権利が与えられた場合は給与所得としています(No.1543)。持株会で買う株の配当・NISAの説明は持株会のデメリットと税金に任せ、このページでは扱いません。

税制適格になる条件:会社員が確かめる点

租税特別措置法第29条の2は、次の要件が付与契約に定められていることと、行使のときの手続きを、適格の条件にしています。会社員が確かめるのは、付与契約書と会社の案内です。

対象になる人

付与決議をした会社、またはその会社が議決権のある株式の50%を超えて持つ法人の、取締役・執行役・使用人(従業員)が対象です。発行済株式の一定の割合を超えて持つ大口株主(上場株式は10分の1超、それ以外は3分の1超)と、その親族などの特別関係者は除かれます(施行令第19条の3第3項・第4項)。

契約に定められている必要がある要件

  • 新株予約権の発行:金銭の払込みをさせないで発行されたものであること(施行令第19条の3第1項)
  • 行使できる期間:付与決議の日から2年を経過した日から、10年を経過する日まで(設立5年未満などの会社は15年を経過する日まで)
  • 年間の権利行使価額:1年間に行使する権利行使価額の合計が、1,200万円を超えないこと
  • 1株あたりの権利行使価額:契約を結んだ時点の1株の価額以上であること
  • 譲渡の禁止:新株予約権を譲渡してはならないこと
  • 取得した株の管理:取得後すぐに、証券会社(第一種金融商品取引業者)や信託会社の口座で保管・管理されること。譲渡制限株式は、会社が本人別に帳簿で区分して管理する方法もあります

このほか、付与決議の内容に反しないこと、国外転出するときに会社へ通知することなども、契約に定める要件になっています。

1,200万円の数え方

数える対象は、株を買うために払い込む額(権利行使価額)の合計で、株の時価ではありません。付与決議の日に設立から5年未満の会社は権利行使価額を2で割り、設立から5年以上20年未満で財務省令の要件を満たす会社は3で割って計算します。その年に既に行使した他の特定新株予約権の分も合算します。超えることとなる行使分は、非課税になりません(条文のただし書き)。

行使のときに会社へ出す書類

行使のとき、大口株主などに当たらなかったことを誓約する書面と、その年の他の権利行使の有無などを書いた書面を、会社に出します(同条第2項)。会社は適格のストックオプションを付与した年の翌年1月31日までに、付与の調書を税務署に提出します(同条第6項)。

あとから適格に直すことはできない

国税庁の質疑応答事例は、年間の権利行使価額の上限がない契約など、最初の付与契約が適格の要件を満たさない場合、権利行使の前に契約内容を適格の要件に合わせて変更しても、租税特別措置法第29条の2は適用されないとしています。適格かどうかは、最初の付与契約で決まります。

税はいくら違うか:行使益500万円の例

次の前提で、適格と非適格の税を比べます。同じ株数・同じ株価でも、非適格は行使時の利益が給与所得になるため、税のかかり方が変わります。

  • 権利行使価格1,000円・5,000株。行使に払い込む額は500万円で、年間1,200万円の範囲内
  • 権利行使したときの株価2,000円、売ったときの株価3,000円(株価は仮置き。上がることを前提にする趣旨ではありません)
  • 行使する年の給与の年収は600万円、40歳未満・扶養なし。売った株は同じ年に売却し、他の所得はなし
項目税制適格税制非適格
行使時の利益課税なし(500万円は課税対象外)給与所得に500万円
行使時の所得税・住民税0円約144.3万円
売却時の譲渡所得1,000万円500万円
売却時の税(20.315%)約203.2万円約101.6万円
税の合計約203.2万円約245.9万円

※当サイト試算。給与の年収600万円に行使益500万円を給与所得として上乗せし、所得税・住民税(所得割10%・均等割は差し引きで影響なし)の増加分を計算。社会保険料は年収600万円の額で固定し、行使益にはかからない前提(原典で確認できなかったため。詳しくは下の「住民税と社会保険料」)。売却益は所得税15.315%(復興特別所得税込み)と住民税5%の合計20.315%。売却時の手数料・配当は含めていません。行使時の住民税は、翌年度に課されます。

どちらも、行使価格と売却価格の差の合計は同じ1,000万円です。違いは、適格は1,000万円の全額を売却時に一括して20.315%で課税するのに対し、非適格は500万円を行使時に給与と合算した累進税率で課税する点です。この例では、非適格の方が税の合計が約42.7万円多くなりました。年収や行使益の大きさが変わると、この差も変わります。

なお、行使して取得した株は、売るまで株価が変動します。この試算は、行使と売却で税がどう出るかを示すもので、行使や売却の時期を決めるものではありません。

年末調整で済むか、確定申告が要るか

国税庁は、大部分の給与所得者は給与の支払者が行う年末調整で所得税が確定するため確定申告は要らないが、次のいずれかに当たる人は確定申告が必要としています(No.1900)。年末調整の対象は、その年に支払うべきことが確定した給与等が2,000万円以下の人です(所得税法第190条)。

  • 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人
  • 給与を1か所から受け、全部が源泉徴収の対象の場合で、給与所得・退職所得以外の所得金額の合計が20万円を超える人
  • 源泉徴収義務のない者から給与等の支払を受けている人

適格の場合

権利行使のときは所得税が課されないため、行使益は給与に入らず、年末調整への影響はありません。株を売ったときは、適格で取得した株は特定口座もNISAも使えません(No.1540)。売却益(譲渡所得)は、給与所得・退職所得以外の所得金額に入るため、上の「合計が20万円を超える」に当たれば、確定申告が必要です。

非適格の場合

行使益は給与所得です。給与等の支払をする者は、支払の際に所得税を徴収する義務があります(所得税法第183条)。会社が行使益を給与として扱い、源泉徴収と年末調整に含める運用なら、行使益そのものの確定申告は不要になる場合があります。ただし、行使益を含めた給与の年間収入が2,000万円を超えるときは申告が必要です。また、源泉徴収義務のない者(例えば日本で源泉徴収をしない外国の親会社)から付与されて行使した場合は、上の3つ目に当たり、申告が必要です。会社が行使益を給与に含めて源泉徴収するかは、人事・給与担当に確かめてください。

売った株の売却益は、証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で売った場合、確定申告をしないことを選べます(No.1900)。特定口座を使わない売却益は、自分で申告します。最終的な申告要否の判断は、所轄の税務署に確かめてください。

確定申告が必要な会社員の全体のケースは確定申告が必要な会社員のケースにまとめています。

住民税と社会保険料はどうなるか

住民税

市町村民税の所得割は、前年の所得を、所得税に関する法令の規定の例で算定した額が課税標準です(地方税法第313条)。非適格の行使益が給与所得になるなら、その年の所得として翌年度の住民税に含まれます。売却益は、No.1463で所得税15%・住民税5%とされています。適格の行使時に所得税が課されない分の住民税の扱いを名指しした原文は取得できなかったため、具体的な額は、お住まいの市区町村に確かめてください。

社会保険料

健康保険法第3条第5項は、報酬を「労働者が、労働の対償として受けるすべてのもの」とし、臨時に受けるものと3か月を超える期間ごとに受けるものを除いています。ただし、日本年金機構の標準報酬月額の定時決定の事例集とそのページには、ストックオプションの権利行使益の扱いは書かれていませんでした。税金で給与所得に当たることと、社会保険料の対象になるかは別の定めです。このページでは、対象になるとも、ならないとも書きません。勤務先の社会保険の担当者か、年金事務所に確かめてください。

有償ストックオプションの扱い

新株予約権を取得するとき、金銭を払い込む形のものを、ここでは有償ストックオプションとします。税制適格の対象は、条文上、金銭の払込みをさせないで発行された新株予約権です(施行令第19条の3第1項)。払い込みが必要な有償ストックオプションは、この点で税制適格の対象になりません。

非適格の新株予約権で、有利な条件で与えられた、または役務の提供の対価として与えられたものは、権利行使のときに「行使日の株価−(新株予約権の取得価額+権利行使価額)」が収入金額になります(所得税法施行令第84条第3項第2号)。払い込んだ額(取得価額)は、行使益から差し引かれます。時価相当額を払い込んで取得した新株予約権が、この規定に当たるかどうかは新株予約権の内容によるため、このページでは判定しません。

会社法上は有償発行の形でも、取締役の報酬債権と相殺して発行する場合があります。国税庁は、この場合も一定の要件を満たせば税制適格の対象になり得るとしています(質疑応答事例・源泉所得税)。報酬債権を現実に支払わず新株予約権の払込金との相殺にだけ使う例では、付与時と相殺時に収入はなく、権利行使時に行使日の株価から権利行使価額を引いた額が給与所得になるとしています(質疑応答事例・所得税)。

よくある質問

Q. ストックオプションは、権利行使すると必ず税金がかかりますか?

A. 税制適格のストックオプションなら、権利行使して株を取得したとき所得税は課されません(租税特別措置法第29条の2第1項)。ただし、契約に要件が定められていること、年間の権利行使価額が1,200万円(会社の設立年数により換算あり)を超えないこと、行使のときに書類を会社へ出すことなどが条件です。非適格のストックオプションは、行使したときに給与所得などとして課税されます。

Q. 自分のストックオプションが税制適格かどうかは、どこで分かりますか?

A. 条文は、新株予約権の付与契約に適格の要件が定められていることを条件にしています。付与契約書や会社の案内に、租税特別措置法第29条の2の要件に沿った定めがあるかを確かめてください。会社は適格のストックオプションを付与した年の翌年1月31日までに付与の調書を税務署へ出す義務があります(同条第6項)ので、人事・総務の担当に聞くのが確実です。

Q. 年間の権利行使価額が1,200万円を超えたら、どうなりますか?

A. 条文のただし書きは、年間の権利行使価額の合計が上限を超えることとなる行使分の株式の取得に係る経済的利益は、非課税にならないとしています。また、契約に年間の上限を定めていない(上限がない)ストックオプション契約は、税制適格の要件を満たさない契約として国税庁の質疑応答事例に出てきます。

Q. 退職したあとに権利行使したら、税金は変わりますか?

A. 非適格の場合、国税庁の通達は、退職後に行使した場合でも、権利付与後に短期間で退職を予定している人に付与され、退職後の長期間にわたる株価の値上がり益に相当するものが主に供与されているなど、主として職務の遂行に関連しない利益が供与されていると認められるときは雑所得とするとしています(所得税基本通達23~35共-6(1)イ)。それ以外は給与所得です。どちらに当たるかは個別の事情で決まるため、税務署に確かめてください。

Q. 持株会の株と、ストックオプションの株は、税金の考え方が同じですか?

A. 同じではありません。持株会は、会社が出す奨励金や、買った株の配当・売却益の税金が論点です。ストックオプションは、権利行使したときの利益が適格なら非課税、非適格なら給与所得になる点が違います。持株会の税金は「持株会のデメリットと税金」のページにあります。

参考・出典

※税額は、他に所得がない一般の会社員の目安です。株価・株数・年収・会社の制度で結果は変わります。投資の勧誘や、行使・売却の時期の推奨ではありません。具体的な取り扱いは、勤務先の人事・給与担当、所轄の税務署、税理士等にご確認ください。

運

会社員の計算帳 運営事務局

本サイトは個人が運営する情報提供サイトです。労働・税金・社会保険について、厚生労働省・国税庁・金融庁などの公開情報をもとに記事を編集・公開しています。お問い合わせは お問い合わせフォーム よりお願いします。