10月の給料で社会保険料が上がった理由|4〜6月の残業代で決まる定時決定・9月分から・10月に引かれる・下げられるか

会社に勤めていて、10月の給料明細で健康保険料や厚生年金保険料が上がっていた方向けの解説です。多くの場合の理由は、毎年1回行われる「定時決定」です。4・5・6月に受けた報酬の平均で標準報酬月額が決まり直し、9月から翌年8月までの保険料に使われます。残業手当も報酬に含まれます。保険料は前月分を翌月に支払う給料から引くので、9月に新しくなった金額が、10月の給料に初めて出ます。この記事では、健康保険法・厚生年金保険法・日本年金機構の原文で、決まる仕組み、いくら上がるか、下げられるかを整理します。

なぜ10月に上がるのか

健康保険法第41条は、定時決定を次のように定めています。保険者は、被保険者が毎年7月1日現に使用される事業所において、同日前3月間(その事業所で継続して使用された期間で、報酬支払の基礎となった日数が17日未満の月は除く)に受けた報酬の総額を月数で割った額を報酬月額として、標準報酬月額を決定します。決まった標準報酬月額は、その年の9月から翌年の8月までの各月の標準報酬月額です。厚生年金保険法第21条も同じ内容です。

時期何が起きるか根拠
4・5・6月この3か月に受けた報酬が、決め直しの材料になる健康保険法41条1項
7月10日まで会社が算定基礎届を日本年金機構に出す日本年金機構
9月新しい標準報酬月額の適用が始まる(翌年8月まで)健康保険法41条2項
10月9月分の保険料が、10月に支払う給料から引かれる健康保険法167条1項

出典:e-Gov法令検索 健康保険法(第41条・第167条)・厚生年金保険法(第21条・第84条)、日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」、2026年10月2日確認。

保険料を給料から引く時期は、健康保険法第167条1項と厚生年金保険法第84条1項が、被保険者の負担すべき前月の標準報酬月額に係る保険料を報酬から控除することができる、と定めています。9月が新しい標準報酬月額の最初の月なので、その9月分の保険料を引くのが、10月に支払う給料になります。会社の締め日と支払日によって、給与明細に出る月が前後することもあります。

引かれる金額は、日本年金機構によると、標準報酬月額に保険料率をかけ、2で割った額です(労使で折半)。標準報酬月額の等級表や仕組みの全般は、標準報酬月額の仕組みと社会保険料を正しく把握する方法にまとめています。

残業代は報酬に入る

日本年金機構の「厚生年金保険の保険料」のページは、標準報酬月額の元になる給与を、基本給のほか残業手当や通勤手当などを含めた税引き前の給与としています。報酬の例にも、早出残業手当や家族手当、住宅手当、通勤手当が並んでいます。

  • 4・5・6月に残業が多かった:3か月の平均が高くなり、標準報酬月額が上がることがあります。
  • 4・5・6月の報酬が前より少なかった:平均が低くなり、標準報酬月額が下がって、10月の保険料が減ることもあります。
  • 報酬支払の基礎となった日数が17日未満の月:その月を除いて平均します(健康保険法第41条1項)。
  • 年4回以上支給される賞与:報酬に含まれます(日本年金機構)。賞与の保険料は賞与の社会保険料はどう決まる?にまとめています。

引かれる金額を決めるのは「残業した月」ではなく、「4・5・6月の平均で決まった標準報酬月額」を、9月から翌年8月まで使い続ける形です。そのため、7月以降に残業が減っても、翌年8月までは変わらないのが原則です(健康保険法第41条2項)。

いくら上がるか

基本給25万円の会社員が、4〜6月の月平均で残業代がいくらあったかによって、9月からの標準報酬月額と、毎月引かれる健康保険料+厚生年金保険料(本人負担)がどう変わるかの目安です。

4〜6月の月平均9月からの標準報酬月額毎月の保険料(本人負担)
250,000円(残業代なし)健保 260,000円/厚年 260,000円36,894円
280,000円(残業代30,000円)健保 280,000円/厚年 280,000円39,732円(+2,838円)
300,000円(残業代50,000円)健保 300,000円/厚年 300,000円42,570円(+5,676円)
330,000円(残業代80,000円)健保 340,000円/厚年 340,000円48,246円(+11,352円)

協会けんぽ東京支部・令和8年度の保険料率(子ども・子育て支援金込み)、40歳未満(介護保険料なし)の概算です。健康保険組合は保険料率が違います。雇用保険料と、通勤手当・住宅手当など残業代以外の変動は含めていません。

この前提では、残業代が月平均8万円だった場合、残業代なしのときより毎月11,352円、1年(9月分から翌年8月分までの12か月)で136,224円の違いです。標準報酬月額は、保険料だけでなく、年金額の計算にも使われる金額です(日本年金機構)。

自分の都道府県と月収での社会保険料は、社会保険料 計算機(都道府県別)で確かめられます。40歳から64歳の方は、介護保険料が加わります(40歳から始まる介護保険料)。

定時決定が使われない人・ほかの理由

日本年金機構の「定時決定」のページは、算定基礎届の提出が不要な人を、次の4つとしています。

該当する人この年の扱い根拠
6月1日以降に資格取得した人定時決定は適用されない。資格取得時に決めた金額が翌年8月まで健康保険法41条3項・日本年金機構
6月30日以前に退職した人7月1日に会社に在籍していない日本年金機構
7月改定の月額変更届を出す人7月の随時改定の金額になる日本年金機構
8月か9月に随時改定が予定されていると申し出た人その随時改定の金額になる日本年金機構

出典:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」「厚生年金保険の保険料」、e-Gov法令検索 健康保険法第41条3項、2026年10月2日確認。

10月に保険料が上がった理由が定時決定ではないこともあります。昇給などで年の途中に標準報酬月額が改定される随時改定は、変動月から4か月目の標準報酬月額から改定されます(随時改定(月額変更届)とは)。また、40歳になって介護保険料が加わった、加入している健康保険組合の保険料率が変わった、という場合もあります。給与明細の「健康保険料」「厚生年金保険料」の欄のどちらが変わったかを見て、会社の給与担当に確認してください。

下げられるか

9月に決まった標準報酬月額は、条文では翌年8月までの各月の標準報酬月額です(健康保険法第41条2項)。この間に変わるのは、次の場合です。

方法使える場面根拠
随時改定昇給・降給などで固定的賃金が変わり、3か月の平均で2等級以上の差が出た健康保険法43条・日本年金機構
年間平均で算定(保険者算定)4〜6月の平均が年間平均と2等級以上違い、その差が例年発生する日本年金機構「保険者決定」
従前の標準報酬月額で決定4〜6月に報酬をまったく受けない・3か月とも17日未満日本年金機構「保険者決定」

出典:e-Gov法令検索 健康保険法第43条、日本年金機構「随時改定(月額変更届)」「保険者決定」、2026年10月2日確認。

残業代だけが減っても、随時改定の対象にはなりません。日本年金機構の「随時改定」のページは、要件の1つを「昇給または降給等により固定的賃金に変動があった」こととし、固定的賃金を「支給額や支給率が決まっているもの」としています。残業手当は非固定的賃金として扱われ、残業手当等の増減だけでは、この要件に当たりません。

年間平均で算定する方法は、繁忙期が毎年同じ時期に来る仕事向けです。日本年金機構の「保険者決定」のページは、4〜6月の平均から出した標準報酬月額と、前年7月〜当年6月の平均から出した標準報酬月額に2等級以上の差があり、その差が業務の性質上、例年発生することが見込まれる場合に、後者で決定するとしています。算定基礎届を出すときに、「年間報酬の平均で算定することの申立書」と、被保険者の同意書等を添える手続きです。

算定基礎届の提出期限は7月10日までです。今年分について、期限後に使えるかどうかは、日本年金機構の原文には書かれていません。来年の4〜6月に繁忙期が重なる仕事の方は、7月より前に、会社の給与担当か年金事務所に相談してください。届書を出すのは会社です。

よくある質問

Q. 9月の給料明細では変わっていなかったのに、10月に上がったのはなぜですか?

A. 健康保険法第167条と厚生年金保険法第84条は、事業主が給料から引ける保険料を、被保険者の負担すべき「前月の標準報酬月額に係る保険料」と定めています。9月から新しい標準報酬月額になった場合、9月分の保険料は10月に支払う給料から引くのが原則です。会社の給与の締め日や支払日によって、明細に出る月が前後することはあるので、給与担当の部署に確認してください。

Q. 4〜6月に残業が多かったのは、たまたまでした。それでも上がりますか?

A. 定時決定は、7月1日現在の会社で4・5・6月に受けた報酬の総額を月数で割った額を、報酬月額にします(健康保険法第41条1項)。残業が一時的だったかどうかは、条文には出てきません。ただし日本年金機構は、4〜6月の平均と前年7月〜当年6月の平均に2等級以上の差があり、その差が業務の性質上、例年発生することが見込まれる場合は、年間平均で算定する方法(保険者算定)を案内しています。

Q. 4〜6月に病気で休んで、給料がほとんど出ませんでした。

A. 日本年金機構の「保険者決定」のページは、病気欠勤等で4・5・6月に報酬をまったく受けなかった場合と、3か月とも支払基礎日数が17日未満の場合は、従前の標準報酬月額で決定するとしています。支払基礎日数が17日未満の月が一部だけのときは、その月を除いた月の平均で決まります(健康保険法第41条1項)。

Q. 4〜6月に、さかのぼった昇給の差額が出ました。

A. 日本年金機構の「保険者決定」のページは、さかのぼった昇給の差額を4・5・6月のいずれかの月に受けた場合は、その差額分を差し引いて報酬月額を算定するとしています。

Q. 契約社員やパートでも、定時決定の対象ですか?

A. 社会保険に加入していれば対象です。日本年金機構の「定時決定」のページは、7月1日現在のすべての被保険者を提出対象としています。短時間就労者には別の扱いがあり、4〜6月のうち支払基礎日数が17日以上の月が1か月以上あれば、その月の平均で決まります。3か月とも17日未満のときは、15日以上17日未満の月の平均、3か月とも15日未満のときは従前の標準報酬月額です。特定適用事業所で働く短時間労働者の基準は11日です。

Q. 賞与は、4〜6月の報酬に入りますか?

A. 日本年金機構の「厚生年金保険の保険料」のページは、年4回以上支給される賞与は、標準報酬月額の対象となる報酬に含まれるとしています。賞与の保険料のかかり方は、別のページにまとめています。

参考・出典

※健康保険法・厚生年金保険法・日本年金機構に書かれている範囲の整理です。標準報酬月額の決まり方や届出の扱いは、加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合)や会社によって異なる場合があります。個別の事情は、勤務先の給与担当、年金事務所、加入先の健康保険の窓口でご確認ください。

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