医療費控除は年末調整でできる?年末調整済みの会社員が確定申告で受ける手順、源泉徴収票の使い方、いつ戻るか

会社に勤めている方が医療費控除を受けるときは、年末調整ではなく確定申告をします。年末調整が済んでいても、源泉徴収票の数字を申告書に写して申告できます。写す欄の対応、申告できる期間、還付の時期、住民税への反映を、国税庁の資料でまとめました。戻る額は、医療費を仮置きした年収別の試算です。

年末調整ではなく確定申告で受ける

年末調整は、勤め先が1年間に源泉徴収した所得税を、納めるべき税額に一致させる手続です。国税庁 No.1900 は、大部分の給与所得者は年末調整によって所得税額が確定し、納税も完了するので、確定申告は必要ないとしています。所得税法190条が年末調整で差し引く控除を列挙しており、医療費控除はその中に入っていません。医療費控除は年末調整では受けられず、自分で確定申告をして受ける控除です。

手続国税庁の説明出どころ
年末調整(勤め先)所得税法190条2号が、年末調整で差し引く控除を列挙している(社会保険料・小規模企業共済等掛金・生命保険料・地震保険料・障害者などの人的控除・配偶者・扶養・特定親族特別・基礎控除)。医療費控除(73条)は含まれていない。No.2662 の年末調整の順序も、扶養控除などの所得控除額と、住宅借入金等特別控除を差し引く説明で、医療費控除は出てこない所得税法190条、No.2662
確定申告(自分で)医療費控除に関する事項などを記載した確定申告書を提出する。給与所得者が医療費控除を受ける場合は、確定申告をすれば税金が還付される場合に挙げられているNo.1120、確定申告の手引き
確定申告の期間還付申告は、その年の翌年1月1日から5年間提出できるNo.2030

出典:所得税法第190条(e-Gov法令検索、2026年10月2日確認)、国税庁 No.2662・No.1120・No.2030(令和8年4月1日現在法令等)、「令和7年分 確定申告の手引き」、2026年10月2日確認。

手引きでは、給与所得者の還付申告の対象として、住宅借入金等特別控除に「年末調整で控除を受けている場合を除く」とだけ但し書きがあり、医療費控除には但し書きがありません。下の表のとおり、手引きには、年末調整で住宅ローン控除を受けた人が確定申告をするときの書き方も載っており、年末調整で受けた控除と医療費控除を同じ申告書に入れる前提で書かれています。

年末調整済みの人がやること:源泉徴収票を写す欄

確定申告をするときは、年末調整を受けた給与所得も含めて申告します(確定申告の手引き)。そのため、会社から受け取った源泉徴収票の数字を、申告書に写す必要があります。国税庁の手引きでは、年末調整で済んだ控除の書き方は次のとおりです。

年末調整で済んだもの申告書での書き方手引きの該当ページ
給与から源泉徴収された所得税第二表「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄に該当事項を記入給与所得
社会保険料(源泉徴収票の「社会保険料等の金額」)社会保険料控除欄の「保険料等の種類」に「源泉徴収分」と記入社会保険料控除
小規模企業共済等掛金「保険料等の種類」の欄に「源泉徴収分」と記入小規模企業共済等掛金控除
生命保険料・地震保険料「支払保険料等の計」欄に「源泉徴収分」と記入生命保険料控除、地震保険料控除
住宅ローン控除源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」欄の額を転記し、「区分2」の□に「1」と記入住宅借入金等特別控除
(これから受ける)医療費控除第一表に、医療費控除の明細書で計算した金額を転記。明細書は確定申告書と一緒に提出医療費控除

出典:国税庁「令和7年分 確定申告の手引き」の各控除のページ、2026年10月2日確認。令和8年分の様式・手引きは、国税庁が公表したものをご確認ください。源泉徴収票に記載されていない支払い分は、手引きでは「うち年末調整等以外」欄に記入します。

国税庁 No.1120 によると、給与所得の源泉徴収票は、確定申告書への添付や提示は不要ですが、申告書を作成するときには必要です。あわせて、医療費の領収書から「医療費控除の明細書」を作成します。領収書は、確定申告期限等から5年を経過する日までの間、提示または提出を求められる場合があります。医療保険者から受けた医療費通知があれば、添付すると明細書の記載を簡略化できます。明細書の書き方は医療費控除の明細書の書き方、スマホで申告する手順はスマホで確定申告(e-Tax)のやり方にあります。

いくら戻るか(医療費を仮置きした試算)

家族の医療費を30万円(仮置き)支払い、保険金などの補てんはなしとしたときの、年収別の試算です。年末調整が済んでいて、源泉徴収された所得税が年間の所得税と一致している前提で、医療費控除の分だけ戻る額を、tools の医療費控除の計算ツールと同じ計算で出しています。医療費は計算のための仮置きで、実際の額とは異なります。

年収還付される所得税翌年度の住民税の減額
300万円約10,200円約20,000円
400万円約10,200円約20,000円
500万円約10,200円約20,000円
600万円約20,400円約20,000円
700万円約39,800円約20,000円
800万円約40,800円約20,000円

試算の前提は、東京都・40歳未満・扶養なし、社会保険料は標準的な金額で概算、その他の所得控除は考慮していません。この年収では足切りは10万円なので、どの行も医療費控除の額は200,000円です。年収が上がるほど所得税の税率の区分が上がるため、還付される所得税は増えます(住民税は一律10%のため同額です)。実際の額は、他の控除や源泉徴収額により変わります。

年収500万円なら、還付される所得税は約10,200円で、確定申告の後に還付金として受け取ります。これとは別に、翌年度の住民税が約20,000円減ります。所得税の還付は口座に振り込まれ、住民税の分は納める住民税の額が下がる形です。

医療費が増えるほど、控除額は増えます。年収500万円で、医療費を変えたときです。

医療費(仮置き)医療費控除の額戻る額
(所得税+住民税)
10万円0円0円
20万円100,000円約15,100円
30万円200,000円約30,200円
50万円400,000円約60,400円
100万円900,000円約135,900円

医療費が10万円のときは足切りと同額で、医療費控除は0円になり、戻る額も0円です。年収500万円の試算です。年収や家族構成を変えて計算するときは、医療費控除はいくらから|年収別早見表をお使いください。

いつ戻るか・住民税にも反映される

還付の時期:国税庁のQ&A(Q41)では、2月・3月の確定申告期間中は大量の申告書が提出される時期なので、還付金の支払手続にはおおむね1か月から1か月半程度かかるとしています。自宅や税理士事務所などからe-Taxで提出された還付申告は、3週間程度で処理しているとされています。訂正申告など同一人について複数回の申告がある場合や、書類不備、書面による別送書類の提出がある場合は、e-Taxで提出しても3週間程度の対象外です。

申告できる期間:還付申告は、翌年1月1日から5年間です(No.2030)。2026年中に支払った医療費の分なら、2027年1月1日から提出できます。確定申告の期間(原則3月15日まで)が過ぎても、5年以内なら還付申告ができます。

住民税:地方税法34条1項2号には、住民税にも医療費控除があります。前年中に支払った医療費の合計額(保険金などで補てんされた部分を除く)が、総所得金額等の5%(10万円を超える場合は10万円)を超えるとき、その超える金額(最高200万円)が控除されます。国税庁 No.1155 の注では、所得税の確定申告書は個人住民税の申告書も兼ねているとされています。そのため、医療費控除のための確定申告をすれば、住民税の申告を別にする必要はありません。この控除は前年中の医療費が対象なので、2026年の医療費は2027年度の住民税から反映されます。

よくある質問

Q. 医療費控除は、年末調整でできますか?

A. できません。所得税法190条は年末調整のしくみを定めた条文で、2号が年末調整で差し引く控除を列挙しています。社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除などの人的控除、配偶者控除、扶養控除、基礎控除が並び、医療費控除(所得税法73条)は含まれていません。国税庁 No.2662 の年末調整の順序にも医療費控除は出てこず、No.1120 は、医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出するよう案内しています。確定申告の手引きも、給与所得者が医療費控除を受ける場合を、確定申告で税金が還付される場合として挙げています。

Q. 年末調整が済んでいても、確定申告はできますか?

A. できます。国税庁の確定申告の手引きは、大部分の方は年末調整により所得税等が精算されるため申告は不要としたうえで、確定申告をする場合には、年末調整を受けた給与所得も含めて申告が必要としています。医療費控除などを受けるための申告は、還付申告にあたります。

Q. 医療費控除の確定申告は、いつまでにすればよいですか?

A. 国税庁 No.2030 は、還付申告書は確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間提出できるとしています。たとえば2026年に支払った医療費の分は、2027年1月1日から5年間です。ただし、青色申告特別控除を受けるなど、法定申告期限までの提出が要件になっている特例は、還付申告でも期限までに出す必要があります。

Q. 年末調整で受けた生命保険料控除や住宅ローン控除は、確定申告でどう書きますか?

A. 国税庁の確定申告の手引きでは、年末調整で既に受けた生命保険料控除や地震保険料控除は「支払保険料等の計」欄に「源泉徴収分」と記入します。年末調整で受けた住宅借入金等特別控除は、源泉徴収票の「住宅借入金等特別控除の額」欄の額を転記し、「区分2」の□に「1」を記入します。

Q. 源泉徴収票は、確定申告書に添付しますか?

A. 国税庁 No.1120 は、給与所得の源泉徴収票は平成31年4月1日以後、確定申告書への添付または提示が不要になったとしています。ただし、確定申告書を作成する際には引き続き必要なので、税務署などへ行くときは持参するよう案内しています。

Q. 医療費が10万円に届かないときも、確定申告をしたほうがよいですか?

A. 医療費控除は、支払った医療費の合計から保険金などで補てんされる金額と10万円(総所得金額等が200万円未満の人は5%の金額)を引いた額が対象です(No.1120)。引いた結果が0円以下なら、医療費控除の額は0円で、申告しても所得税の還付は増えません。上の表3の10万円の行がこの場合です。

Q. 源泉徴収票の「源泉徴収税額」が0円のときも、還付されますか?

A. 国税庁 No.2030 は、源泉徴収された所得税額がない方(給与の源泉徴収票の「源泉徴収税額」欄が「0」と記載されている方など)は、申告しても還付される所得税額はないとしています。住民税のほうは、別の計算になります。

Q. 住民税の申告は、別にしますか?

A. 国税庁 No.1155 の注は、地方税法上、所得税の確定申告書が提出された日に個人住民税の申告書が提出されたものとみなされると説明しています。所得税の確定申告書は、個人住民税の申告書も兼ねています。

参考・出典

※試算は概算です。実際の還付額や住民税の減額は、他の所得控除や年収確定後の金額、お住まいの市区町村の計算により変わります。具体的な申告は税務署または税理士にご確認ください。

運

会社員の計算帳 運営事務局

本サイトは個人が運営する情報提供サイトです。労働・税金・社会保険について、厚生労働省・国税庁・金融庁などの公開情報をもとに記事を編集・公開しています。お問い合わせは お問い合わせフォーム よりお願いします。