個人事業主のファクタリングは違法?貸付けとの分かれ目、2社間と3社間の違い、手数料の上限、偽装ファクタリングの見分け方
金融庁は、ファクタリングを「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と案内しています。売掛債権を売ること自体が違法とは書かれていません。問題になるのは、売買の形をとっていても経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引で、その場合は貸金業に該当するおそれがあります。貸付けとの分かれ目、2社間と3社間の違い、手数料の上限、偽装の見分け方を、金融庁と条文の原文で確かめた内容を、問いごとにまとめました。
個人事業主がファクタリングを使うのは違法か
ファクタリングは、金融庁の案内では事業者が持つ売掛債権等を、期日前に一定の手数料を差し引いて買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)で、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。個人事業主が、取引先に出した請求書の代金を受け取る権利(売掛債権)を売る場合も、この説明に当てはまります。
| 取引の実態 | 金融庁の案内での扱い | 見るところ |
|---|---|---|
| 実態も債権の売買 | 法的には債権の売買(債権譲渡)契約 | 買取代金が債権額に比べて著しく低くないか |
| 契約書は売買だが、実態は貸付けと同じ機能 | 貸金業に該当するおそれ。形式だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断 | 集金の委託、買戻し、自己資金での支払い |
| 貸金業の登録なしに、業として貸付けを行う | 無登録営業は刑事罰の対象 | 財務局または都道府県の登録 |
出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」、貸金業法3条1項・11条1項、2026年10月3日確認。
つまり、「ファクタリングは違法か」の答えは、取引の実態で決まるです。売買として行われているなら、金融庁の案内に違法とは書かれていません。貸付けと評価される取引を、登録のない業者が行っている場合が問題になります。
個人事業主の場合は、売る債権があることが前提です。売る対象は、取引先に請求書を出した後の、まだ入金されていない代金です。アクセルファクターのLPには、開業して間もなくても利用できるが、請求書をまだ一度も発行していないなど売掛債権が発生していない場合は、発生後に手続きすると書かれています。
売掛債権の売買と貸付けは、どこで分かれるか
貸金業法は、貸金業の「貸付け」に、金銭の貸付けだけでなく、手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法による金銭の交付も含めています(2条1項)。売買の名前でも、実態が担保付きの金銭の交付なら、貸付けとして扱われる余地があります。
金融庁は、判断の材料として「不払いのリスクを誰が負うか」に関わる点を挙げています。たとえば、譲渡した債権の集金が業者から売主に委託されていて、集金できなかったときに、売主が債権を買い戻す、または売主自身の資金で業者に払うこととされているものは、貸金業に該当するおそれがあるとしています。契約書にノンリコース(売った債権が回収不能になっても返済義務がない)の規定があるかどうかだけでは決まりません。
金融庁のページには、裁判例が挙がっています。裁判所が見た事情を、判断の向きごとに並べます。
| 裁判例 | 判断 | 裁判所が見た事情 |
|---|---|---|
| 東京地裁 令和2年9月18日 | 貸金業法は適用されない | 償還請求権がなく買戻しも予定されない。手数料が担保目的を推認させるほど大幅ではない |
| 東京高裁 令和4年6月15日 | 債権の確定的な売買 | 回収できなかった額を売主が負担しない。手数料が実質的に担保目的と推認されるほど多額ではない |
| 大阪地裁 平成29年3月3日 | 金銭消費貸借契約に準じる | 業者が不払いのリスクをほとんど負わない。債権額面と無関係に金員を授受 |
| 東京高裁 令和3年7月1日 | 貸金業法上の貸付けに当たる | 債務者が弁済しない場合に、売主が債権額以上を支払う旨の公正証書を作成 |
| 名古屋地裁 令和3年7月16日 | 貸金業法上の貸付けに当たる | 売主は債務者の資力を担保しないとあるが、譲渡から支払日までが短く、不履行の可能性が極めて低い |
| 東京地裁 令和4年3月4日 | 金銭消費貸借契約に該当 | ノンリコースの規定はあるが、債務者に不払いの兆候がないことを売主が表明保証する |
出典:金融庁「ファクタリングの利用に関する注意喚起」の「参考」欄、2026年10月3日確認。金融庁が挙げた例の一部で、判決の全文は確かめていません。札幌高裁 令和4年7月7日(買戻しを前提とする取引を、公序良俗に反し無効と判断)の事案も同じ欄にあります。
共通しているのは、契約書の題名ではなく、売主が結局どこまでの責任を負わされているかが見られている点です。自分の契約が貸付けに当たるかは、契約の内容と事情で変わるので、このページでは判断できません。
2社間と3社間で、何が違うか
ファクタリングには、一般に2社間(売主と業者の2者の契約)と3社間(売主・業者・取引先の3者が関わる契約)があります。違いが出るのは、取引先への通知と承諾です。
| 項目 | 2社間 | 3社間 |
|---|---|---|
| 取引先への通知 | 債権譲渡通知を省略する形。アクセルファクターのLPは「取引先に知られずに」と説明 | 取引先に通知するか、取引先の承諾を得る |
| 民法467条1項 | 通知か承諾がなければ、債務者その他の第三者に対抗できない | 通知か承諾があれば、債務者に対抗できる |
| 第三者への対抗 | 確定日付のある証書による通知・承諾が要る(同条2項) | 同じ |
出典:民法467条(e-Gov法令検索)、アクセルファクター LP のよくある質問、2026年10月3日確認。
民法467条は、債権の譲渡を債務者(取引先)や第三者に主張するための条件を定めたもので、売主と業者の間の売買契約そのものが、通知をしないと無効になるとは書いていません。通知をしない2社間は、取引先に知られない一方、取引先は引き続き売主に払うので、売主が入金を受けて業者に渡す流れになるのが一般的です。この集金の委託と、集金できなかったときの扱いが、前の節で見た分かれ目に関わります。
個人事業主の場合の注意です。通知の代わりに使える債権譲渡登記の条文(動産債権譲渡特例法4条1項)は、「法人が債権…を譲渡した場合」と書き出されています。個人事業主が自分の債権を譲渡するときに、この登記が使えるかは条文からは読み取れません。契約の前に、業者か弁護士に確かめてください。
手数料に、法律で決まった上限はあるか
金融庁のページには、売買としてのファクタリングの手数料に上限を定める記述はありません。上限が問題になるのは、取引が貸付けと評価されたときです。その場合は貸金業法の登録が要り、利息制限法と出資法の上限金利を守る必要があります。
| 貸付けの元本 | 利息制限法1条の上限 |
|---|---|
| 10万円未満 | 年2割 |
| 10万円以上100万円未満 | 年1割8分 |
| 100万円以上 | 年1割5分 |
出典:利息制限法1条(e-Gov法令検索)、2026年10月3日確認。上限を超える部分は無効です。貸付けとして扱われた場合の上限で、売買としてのファクタリングの手数料に、この率がそのまま当てはまるとは書かれていません。
出資法5条2項は、業として金銭の貸付けを行う者が、年20%を超える割合の利息の契約をしたときを刑事罰の対象にしています。さらに金融庁は、年109.5%を超える利息の契約をした場合、消費貸借契約自体が無効になると案内しています。
では、売買の手数料はどう見られるのか。裁判例では、前の節の表のとおり、手数料が担保目的を推認させるほど多額かどうかが、貸付けかどうかの判断材料の1つになっています。何%なら貸付けになる、という線は、金融庁のページにも書かれていません。金融庁は、高額な手数料を払うと、かえって資金繰りが悪化し、多重債務に陥る危険があると注意しています。手数料は、率だけでなく、請求額から引かれて手元に残る額で比べてください。
偽装ファクタリング・給与ファクタリングは、どう見分けるか
金融庁は、中小企業の経営者を狙い、ファクタリングを装って貸金業登録のない業者が、債権を担保とした違法な貸付けを行っている事案が確認されているとしています。疑われる事例は次のとおりです。
| 疑う材料 | 金融庁の記述 | 見るところ |
|---|---|---|
| 買取代金が著しく低い | 債権額に比べて著しく低額、高額な手数料が差し引かれる | 見積書の請求額と買取額 |
| 売買契約の定めがない | 契約書に「売買契約」であることが定められていない | 契約書の題名と条文 |
| 集金の委託と買戻し | 集金を売主に委託し、回収できなかった場合に買戻しや償還請求が行われる | 買戻し・償還・自己資金での支払いの条項 |
出典:金融庁チラシ「その資金調達 大丈夫ですか?」、「ファクタリングの利用に関する注意喚起」、2026年10月3日確認。
給与ファクタリングは、別の手法です。金融庁は、個人(労働者)が使用者に対して持つ賃金債権を業として買い取り、その個人を通じて回収することは貸金業に該当すると案内しています。最高裁令和5年2月20日の決定は、賃金債権の譲渡を使用者に知られないよう通知を留保し、実際は買い戻させるほかなかったという事情から、形式は債権譲渡の対価でも、金銭の交付は貸金業法2条1項と出資法5条3項の「貸付け」に当たると判断しました(金融庁のページに抜粋があります)。
個人事業主が取引先に持つ報酬の請求書は、賃金債権とは別の債権です。それでも、「ファクタリング」という名前だけで問題がないかどうかは決まりません。実態で判断される点は、どちらも同じです。
契約する前に、何を確かめるか
ここまでの金融庁の記述から、契約の前に見る点を並べます。判断が付かないときは、契約をする前に、弁護士か相談窓口に聞いてください。
- 契約書が売買(債権譲渡)契約と書かれているか。償還請求権や買戻しの定めがないかを、条文で確かめます。
- 集金の委託と、集金できなかったときの扱い。売主が買い戻す、または自己資金で払う定めがないかを見ます。
- 見積書の買取額。請求額から手数料を引いた額が、いくら手元に残るかを確かめます。債権額に比べて著しく低くないかも見ます。
- 業者の素性。貸金業の登録を受けた業者かどうかは、金融庁の「登録貸金業者情報検索サービス」で調べられます。
- 他の見積もりと比べる。1社だけで決めず、手数料と受取額、必要書類を並べます。
契約したあとで心配になったときの窓口は、よくある質問に書きました。
ファクタリング以外の手段と、お金の関連ページ
売掛債権を使った資金調達には、売る方法のほかに、担保にして借りる方法があります。全国信用保証協会連合会には、売掛債権や棚卸資産を担保に金融機関から借り入れるときの保証制度(流動資産担保融資保証制度)があります。こちらは借入なので、返済が要ります。条件や取扱いは、お近くの信用保証協会に確かめてください。
- 国民健康保険料の納期に、報酬の入金が間に合わないときは、国保料の納期に報酬の入金が間に合わないとき
- 手元に残る金額は、月単価別の手取り早見表
- 経費と確定申告は、青色申告65万円控除の効果
よくある質問
Q. 個人事業主がファクタリングを使うのは、違法ですか?
A. 金融庁は、ファクタリングを「法的には債権の売買(債権譲渡)契約」と案内しています。売掛債権を売ること自体が違法とは書かれていません。問題になるのは、売買の形をとっていても、経済的に貸付けと同様の機能を持つ取引です。その場合は貸金業に該当するおそれがあります。
Q. ファクタリングが貸金業に当たるのは、どんなときですか?
A. 金融庁は、譲渡した債権の集金が売主に委託され、集金できなかったときに売主が買い戻す、または売主自身の資金で業者に支払うこととされているものを、貸金業に該当するおそれがある例に挙げています。契約書にノンリコース(売却した債権が回収不能になっても返済義務がない)の規定があるかどうかだけでは決まらず、経済的な実態で判断されます。
Q. 2社間ファクタリングは、取引先に通知しなくても違法になりませんか?
A. 金融庁のページは、通知をしないこと自体を違法とは書いていません。東京地裁令和2年9月18日判決は、対抗要件の具備は猶予されていたものの、業者の判断で具備できたこと、償還請求権がないこと、手数料が大幅ではないことなどを総合して、貸金業法は適用されないと判断した事案として挙げられています。通知の有無より、不払いのリスクを誰が負うかが見られています。
Q. ファクタリングの手数料に、法律で決まった上限はありますか?
A. 金融庁のページには、売買としてのファクタリングの手数料に上限を定める記述はありません。一方、取引が貸付けと評価されると、貸金業法の登録が要り、利息制限法と出資法の上限金利を守る必要があります。裁判例では、手数料が担保目的を推認させるほど多額かどうかも、貸付けかどうかの判断材料の1つになっています。
Q. 貸金業の登録がないファクタリング業者は、違法ですか?
A. 実態が債権の売買であれば、貸金業にはならないため、登録の有無だけでは売買か貸付けかを見分けられません。ただし、実態が貸付けと評価される取引を登録なしで業として行うと、無登録営業として刑事罰の対象になると、金融庁は案内しています。
Q. 給与ファクタリングは、個人事業主でも関係ありますか?
A. 金融庁は、個人(労働者)が使用者に対して持つ賃金債権を買い取り、その個人を通じて回収する「給与ファクタリング」を貸金業に該当すると案内しています。個人事業主が取引先に対して持つ報酬の請求書は、賃金債権とは別の債権です。ただし、名前が「ファクタリング」でも、実態で判断される点は同じです。
Q. 契約したあとで、偽装ではないかと気づいたら、どこに相談できますか?
A. 金融庁のページは、金融庁の金融サービス利用者相談室、日本貸金業協会の貸金業相談・紛争解決センター、警察(相談専用電話 #9110)、消費者ホットライン(188)を相談窓口に挙げています。少しでも心配な点があれば、弁護士に相談するようにとも案内しています。
参考・出典
- 金融庁 - ファクタリングの利用に関する注意喚起・ファクタリングを装った違法な貸付けにご注意!(チラシ)(2026年10月3日確認)
- e-Gov法令検索 - 貸金業法(2条1項・3条1項・11条1項)・民法(467条)・動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(4条)・利息制限法(1条)・出資法(5条)(2026年10月3日確認)
- 全国信用保証協会連合会 - 保証制度(流動資産担保融資保証制度)(2026年10月3日確認)
- アクセルファクター - ファクタリングサービス(LP)(2026年10月3日確認)
※このページは、金融庁と条文の原文を整理したもので、個別の契約が適法かどうかを判断するものではありません。具体的な契約は、弁護士や金融庁の相談窓口などの専門家にご確認ください。